ユペールさまのクールさは最高なんだけど。
「エヴァ」68点★★★☆
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ある老作家を介護していた青年ベルトラン(ギャスパー・ウリエル)は
彼の死後、未発表の戯曲を見つける。
それを盗み、自分のものとして発表した彼は
一躍注目され、イケメン作家として大ブレークする。
当然、2作目を期待されるが
これっぽっちも浮かばない(当然)。
困り果てた彼は、ある出来事から
娼婦エヴァ(イザベル・ユペール)と出会う。
謎めいた彼女に魅了された彼は
彼女を追いかけるようになるが――?
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イザベル・ユペール×美男子ギャスパー・ウリエルってことで
どうしても美しい官能シーンを期待してしまったのですが
あーれれ、直接的なそういう場面は皆無。
意外に慎み深いのでありました(笑)。
人の作品を盗んで発表し、注目されたイケメン作家。
しかし当然、次回作など書けるわけもなく、困り果ててたところ
彼は謎の娼婦エヴァと出会う。
夫もいて、豪華な邸宅に住んでいる彼女は
なぜ、娼婦をするのか?
彼女のことを書けば、なんとかいけるかも……と
彼女を追いかけるんですが
まあそれはつれなくされる。
おそらく、エヴァは青年自身の投影なんでしょうね。
彼女にも、実はそんなに探るような中身はない。のかもしれない。
すがりついてくる美青年を
軽ーくあしらうユペールさまのツンは大変に好みなのだけれど
どうも、この映画全体に、いまひとつ「味がない」。
それもまた
青年の空っぽさそのもののようで、なんだかむなしい。
でも、この「空っぽさ」のリアルは
誰にでも他人事でなく感じるもの、なのかもしれない。
青年は自分がなにをしたいかわからず、
ルックスだけでなんとなく生き延びてきて
介護の仕事も、おそらく「可愛がられて」続いてきたんでしょう。
作家になりたかったわけでもなく、でもそういう「スタイル」に憧れた。
「中身」を作る努力をしないことが
どれだけむなしく、恐ろしいことなのかを
見せつけられて、胃が縮みます。
「マジで書けない」作家の焦燥に
自分自身の姿が投影されるから、より身に沁みるんでしょうかね。
新作をせっつかれて、なんとなく書き始めた文章を、編集者の彼女にチラ見されて
文法すらなってないようなありさまに
「……どうしたの?」みたいにされる、あのシーン、あのリアル……
悪夢だわ。
よりによってブッカー賞作家の遺作をパクるからじゃボケ!
★7/7(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。