ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ウインド・リバー

2018-07-26 23:39:26 | あ行



自然にも人間にも
全方位緊張が絶えないサスペンス!



「ウインド・リバー」76点★★★★



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アメリカ中西部、ワイオミング州にある
ネイティブアメリカンの保留地「ウィンド・リバー」。

厳しい自然が牙をむくその土地で
白人男性コリー(ジェレミー・レナー)は
野生生物局のハンターとして働いている。

ある日、彼は雪原で
ネイティブアメリカンの少女の死体を発見する。

少女はマイナス30度にもなる夜中に

裸足で雪原を走り、血を吐いて死んだ。


通報を受けてやってきた
FBIの新米女性捜査官のジェーン(エリザベス・オルセン)は
地元に詳しいコリーの助けを借りて捜査を開始する。

だが、ジェーンはまだ

この土地の恐ろしさを知らなかった――。


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冒頭、極寒の雪原を必死に走る少女。
そして続いて
羊の群れを狙うオオカミが映される。

冷え切った空気のなかで、不穏の予感が張り詰める。



寒々しく過酷な環境にある「保留地」で起こる事件は
自然にも人間にも、全方位緊張が絶えない。

 

「ボーダーライン」(15年)の脚本家で

本作が監督デビュー作であるテイラー・シュリダンは

今回も少女が殺される、ひとつの事件だけでなく、

社会派の視点を持って大きな問題を投げかけてくる。

 

それは
先住民をかつてこの荒涼とした土地に追いやった
アメリカという国の「罪」。

 

国家も国民も目をつぶり、そらし続けている問題に焦点をあて

かつエンタテイメントとして極上なハラハラを提供する、その手腕。

深く、うまいと思います。

 

ネイティブ・アメリカンの保留地については

「フローズン・リバー」(09年)にもキーンと冷え冷えと描かれていたけれど

本当に暗い淵なのだ・・・とあらためて。



それに主演二人がベストキャスティング!
経験値は低くも、正義感に溢れるエリザベス・オルセン。
経験と苦しみも深く、苦渋なジェレミー・レナー。
シリーズ化してもいいんでないかというほど

この二人、ものすごい科学反応を起こしてる。


そして、この話は、実際の事件というか

状況に基づいているんですね。

 

実際、先住民の女性が行方不明になる事件は多く、
しかも、その数はしっかり数えられていないという。

映画ができることを探る

監督の想いが、これまた全方位伝わってきました。

 

★7/27(金)から角川シネマ有楽町ほか全国で公開。

「ウインド・リバー」公式サイト

コメント
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