シンプルに強烈な矢を放つインド版「観察映画」。
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「人間機械」70点★★★★
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冒頭、灼熱の炉を火の粉を被りながら、かき混ぜる男が写る。
さらに、長い長い布を延々と、ひたすらたぐる男。
布の山に埋もれて、死んだように眠る少年たち。
ナレーションも音楽もなく
でも、次第にここが、インドの巨大な繊維工場だとわかってくる。
そして彼らの言葉から、
彼らが低賃金で12時間労働を強いられていると知る。
しかもまだ幼い少年たちも、労働力なのだ。
労働組合を作り、団結すれば会社と交渉できるが、
しかし、誰もリーダーになりたがらない。殺されてしまうからだ(マジで)
そして彼らは羊でいることを受け入れ、事態は何も変わらない。
淡々としたカメラが
強者の支配と搾取の構図を浮かび上がらせる。
それは、我々にも突き刺さる。
労働者の問題はどこも同じなのだ!(怒)
殺される、まではいかなくても
声をあげることで
社会的に抹殺されることなど、日本でだってあるある。
羊でいることを受け入れるのか。
人間は機械なのか。
いろんなことを考えさせる。
そういえば、ジャストなことに
発売中の「AERA」(7/23号)の「現代の肖像」で
深田晃司監督を取材させていただいたのですが
監督が中学生のときに感銘を受けたという
マーク・トウェインの『人間とは何か』に
「人間とは機械にすぎない」と書かれている部分があったんだった。
(参考に手に取ったけど、ワシには難しすぎて、読破はできなかった・・・苦笑)
いろいろ考えさせられつつ
もっとも興味深いことが、プレス資料を読んで判明したのでした。
それは
ニューデリー出身のラフール・ジャイン監督が、
実は“強者”の側にいる人間だった、ということ。
彼の祖父は繊維工場を経営していたんだそうな。
何も知らずに観ていたけれど
映画のなかで
「取材が終われば帰るのだろう。それとも君が導いてくれるか。ならば我々はついていくぞ」
監督が対象者に囲まれるシーンがあって
知ると余計にドスンと重く感じられた。
彼らは「救世主」を求めているのだ。
監督のような視点を持った人たちこそが、もしかしたら、こうした手段で
変化をなしていくことができるのかもしれない。
★7/21(土)からユーロスペースほか全国順次公開。