「サウルの息子」(16年)監督の新作です。
「サンセット」70点★★★★
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1913年、ブダペスト。
ある高級帽子店に
イリス(ユリ・ヤカブ)が働きたいとやってくる。
海外で帽子作りを学んだイリスが持参した作品は
なかなかのものだったが
が、実はその帽子店は
イリスが2歳のときに、亡くなった両親が遺したものだった。
自分のルーツを探していたイリスだが
現在のオーナであるブリル(ブラド・イヴァノフ)は
突然現れたイリスに戸惑い、追い返してしまう。
そんなイリスに
両親の時代を知る人々が、謎めいたヒントを与える。
そして、自分に兄がいることを知ったイリスは
過去を知るべく、動き出す。
そこには、帽子店の抱える大きな闇があった――。
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「サウルの息子」ネメシュ・ラースロー監督作品。
1913年、ハンガリーのある帽子店を舞台に、
ヒロインが亡き両親と、自分を探すうちに
忌まわしき出来事を知ってゆく――というお話で
兄の行方、そして両親の死の真相を知るべく
あちこちをさまようヒロインの背中を
「じーっ」と追う手法や、
不安定な世情と、その騒乱のなかに観客をいざない、投じる方法も
「サウルの息子」につながるものがあると感じます。
さまようヒロインの背中は、何を追いかけ、何を探すのか――?
その手法はミステリアスで引き込まれるんですが、
出てくる人々が誰もが謎を含み、
かつ、誰もがハッキリと答えない、という
じれったさが募りに募る。
しかも、142分ありますからね(苦笑)。
おそらく両親の時代からその帽子屋は「負の顔」を持っていて
兄は、その事実にがまんできず、
反旗を翻す立場に身を投じたのでしょう。
そしてイリスが探し求める“兄”は
組織のアイコンとして「存在」はしてるけど
もう死んでるのかもしれない。
ヒロインの後ろ姿についていきながら
そんなもろもろ推測させ、たしかにあった「過去」に思いを巡らせる。
それこそが
監督の意図なのだと思います。
★3/15(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開。