ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

希望の灯り

2019-04-02 23:38:51 | か行

タイトルからアキ・カウリスマキ作品を思われた方、正解です!

 

「希望の灯り」79点★★★★

 

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旧東ドイツ、ライプツィヒ郊外にある

巨大なスーパーマーケットに

青年クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)が新人としてやってくる。

 

飲料担当のベテラン職員ブルーノ(ペーター・クルト)は

ちょっとしたことから

無口な彼の誠実な気質を見抜き、

仕事のいろいろを彼に教えてやる。

 

そんなある日、クリスティアンは

隣のお菓子売り場を担当する女性マリオン(ザンドラ・ヒュラー)を見かけ、

彼女に惹かれていく。

 

休憩所でコーヒーを飲みながら

ささやかな時間を過ごすふたりを

職場のみんなもそれとなく応援するのだが

しかし、マリオンには亭主がいた。

それも、ちょっと問題ある夫らしい――。

 

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あ~大好きだ!こういう映画!

 

ドイツのお仕事観察ドキュメンタリーがあったけど

※オーストリアのニコラウス・ゲイハルター監督の

「眠れぬ夜の仕事図鑑」(12年)ね!

あの世界に人間ドラマが入ってる感じ。

 

冒頭、シーンとした深夜の巨大スーパーマーケットを

「美しき青きドナウ」にのって滑るように走るフォークリフト。

圧倒的に絵的なおもしろさのなかで

人の営みが描かれていく。

 

スーパーに配属された無口な新人クリスティアンが出会うのは

「楽な仕事だよ」と

適度に手と気を抜いて働く気のいい先輩。

ちょっと気になる、年上の女性。

 

そこにあるのは仕事終わりの一杯を楽しみに、

仲間と働く市井の人々の暮らし。

 

なんでもない毎日の繰り返しで

大事件は起こらないけど、

みんなそれぞれ、「なにか」を抱えているし

ときにはうまくいかないこともある。

 

そんな市井の人々の生き様の、美しさが

いつまでもいつまでも、心に生き続ける。

ほんとに、素敵で好きだ、と思える映画でした。

 

原作は1977年、東ドイツ生まれの作家

クレメンス・マイヤーの短編小説。

その世界観に共鳴し

「社会の片隅の人々の物語を描きたかった」(※プレス資料より)という

1981年ライプツィヒ生まれ、37歳のトーマス・ステューバー監督は

実際、アキ・カウリスマキ監督が好きなんだそうです。

 

当たりだわ~

 

そして

主人公クリスティアン役のフランツ・ロゴフスキは

「未来を乗り換えた男」(18年)も印象的だった彼。

いま、キテます!

 

★4/5(金)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「希望の灯り」公式サイト

コメント (2)
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