ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

12か月の未来図

2019-04-05 23:54:53 | さ行

フランスの「マジ、大変なんす!」な

教育現場を描いた作品は近年多いけど

本作は「教師側の問題」に踏み込んでるところが、新しい。

 

「12か月の未来図」72点★★★★

 

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フランスの名門高校で国語を教える

ベテラン教師フランソワ・フーコー(ドゥニ・ポダリデス)は

ひょんなことから、校外の“問題校”に派遣されることになる。

 

そこでフランソワが目にしたのは

教師への敬意などゼロ。授業中も大声でしゃべくり倒す生徒たちと

なにより

「問題児は退学させればいい」とする教師たちの意欲のなさだった。

 

そんななか、フランソワは

生徒たちをやる気にさせる一計を案じるのだが―?!

 

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フランスの教育現場の大変さを描いた作品は

ここ数年、本当に増えている。

「パリ20区、僕たちのクラス」(10年)

「小さな哲学者たち」(11年)「バベルの学校」(15年)

そして「奇跡の教室」(16年)

「オーケストラ・クラス」(18年)などなど。

 

観ると「教師ってどんだけ、大変なんだ!」と思いもするけど(笑)

本作は「教師側の事情」に踏み込んだところ、

そしてフィクションなのに「輝く劇的な展開!」と、ならないところに、

また新しいリアルを見る作品でした。

 

ズームの多様など、ドキュメンタリーさが意識されているところも、また味というか。

 

パリ暮らし、エリート一家で育った

教師フランソワ・フーコー(ドゥニ・ポダリデス)が、

ひょんなことから郊外の問題校に赴任することに。

 

しょっぱなからその「特権意識」を隠すこともしない

彼の心象が正直に描かれ、そこにまずドキリ、チクリ、とする。

重厚&歴史的景観のパリ市内を一歩出ると、

移民や外国人が行き交う

高層アパート立ち並ぶ地域になり

彼がまあ~怪訝な顔になったりするわけです(笑)

 

教室の子どもたちもまあ多彩で。

 

いや、しかし、そんななかで

最初こそ戸惑っていたフランソワは

次第に「自分の利益」とかとは関係なく

真剣に、そこにいる子どもたちに向き合っていく。

そして、その姿は

「問題は生徒だけにあるのではないのだ!」という事実を明らかにもしていく。

 

そう、こうした問題校に派遣される若い教師は

疲弊し、

「何をやっても無駄」と、投げやりに、事なかれにもなっているわけですね。

 

そんな状況をフランソワはどうするのか――!?

というお話。

 

フランソワの動機にあるのが、どんな相手であり

あくまでも、「学びとは何か」という原点と

使命感によるものなのだ、と感じられるところがいい。

 

加えて、彼がルックス的には冴えず(すみませーん。笑)

ゆえに、彼自身のぎこちない

恋のさや当てが、映画に盛り込まれているところも、いいかもなーと。

 「先生たちにだって、いろいろあるんです!」ってね。

 

なにより、いわゆる“問題児”に対して

「悪い生徒はいない。生徒を信じれば学力はあがる」とする、指導者の懐深さ。

それが“きれいごと”ではないと感じさせるリアルがあるのは

監督自身が2年間、中学校に通い取材した成果でしょうね。

 

★4/6(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「12か月の未来図」公式サイト

コメント
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