平成の話なのに、なんでしょうこの「昭和の匂い」(笑)!
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「沈没家族 劇場版」70点★★★★
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1995年、シングルマザーの母が始めた
共同保育の試みで育てられた加納土(つち)監督が、
ちょっと変わった自身の「家族」を振り返るドキュメンタリー。
95年といえば
地下鉄サリン事件があったり、前年にはエヴァンゲリオンが放映されたりしてた
バリバリの最近、なんだけど
いやー、なんでしょう、この「昭和」感(笑)。
共同保育の舞台となるのは
都内の古いアパートで
そこに数組の母と子や若者が暮らし、あるいは保育のときだけやって来たりしてた
「場」、というか「たまり場」だったわけですね。
そこに漂うアングラ感が、昭和を想起させるのかしら(笑)
当時はテレビの取材などもけっこう来てたらしい。
で、映画は
「あれはなんだったのか?」を
監督自身が周辺の人たちにインタビューしていくもので、
もともとは大学の卒業制作として作られたものを
再構築したそう。
まあ監督自身の成り立ちからスタートしてるので
当然ではあるけれど、
まだ、ちょっと自分のノスタルジー、“自分”にだけ寄りすぎかなと感じる。
もう少し、状況を俯瞰できるようになれば、
さらに普遍的なものになると思うんだ。
ただ、この年齢で母親や父親と
まともに話す人ってどのくらいいるんだろう?
最近は仲良し親子が増えてるみたいだから
もしかしたら多いのかもしれないけど、
それにしても監督は
かなり親の事情の深部にまで入り込み、ほじくり、
時に機嫌を損ねさせても、けっこう食らいつくのがすごい。
そしてなにより
「監督本人」が、その実験の結果なわけですからね。
いい子に育ったみたいじゃないですか、お母さん!(笑)
自分の生い立ちや自分探し・親探し、家族というネタは
常に創作の泉になる。
なかでも、なかなか体験できないことを経験したことは
創作者にとって大事な持ち札、カードであり、貴重な財産。
本人が一番わかっていると思うけど、
その財産をうまく肥やしていってほしいなと思いました。
て、もう親戚目線になってるし!(笑)
そして
音楽がとてもよかった!
★4/6(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開。