実在の戦場記者を描いた作品。
「プライベート・ウォー」72点★★★★
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アメリカ人ジャーナリスト、メリー・コルヴィン(ロザムンド・パイク)は
英国サンデー・タイムズ紙の特派員として
世界の紛争地帯を飛び回る戦場記者だ。
2001年、スリランカで取材中に被弾し
左目を失うが、
外国人記者賞の授賞式に黒い眼帯をつけて現れ
それが彼女のトレードマークにもなった。
その後も紛争地帯の現実を伝えるべく
過酷な取材を続ける彼女は
やがて猛烈なPTSDに襲われてしまう――。
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「ラッカは静かに虐殺されている」のマシュー・ハイネマン監督が
「バハールの涙」(19年)の女性ジャーナリストのモデルになった
眼帯の戦場記者メリー・コルヴィンを描いた作品です。
まずは演じるロザムンド・パイクの
憑依ぶりがすごい!
最初は作った感じの低い声が気になったんですが、
次第に
彼女の戦場での仕事ぶりに圧倒されていきます。
例えば、紛争地帯のやばい通行所で尋問されたとき
スポーツジムの会員証を見せて
「ヘルスって書いてあるでしょ?私は医師よ!」って、堂々とかます
その肝っ玉・・・!すげえ(笑)。
スリランカの取材中に片目を失い、
それでも「なにくそ」とまた戦地へ出かけていく勇気もすごいけど、
この映画は彼女を「ヒーロー」として描くのではなく
パーソナルな部分と
そこでの想像を絶する苦痛に重点がおかれているんですね。
戦地から戻っても
気付け薬のタバコと酒にまみれ、
生を確認するようにセックスに依存し
それでも悪夢やPTSDに悩まされるすさまじさ。
鏡に映る眼帯姿の自分に涙する瞬間の苦しさ。
しかし人前では、決して弱みを見せない異常なタフさ。
「伝えなければ」の信念と同時に
ジャーナリストの名誉も、しっかりと享受しようとする。
そんな人間臭さを、監督はみっちり描いている。
“戦場ジャンキー”ともいえる無謀な行動に
うーむ、と微妙な思いすら抱くのですが
たぶん、本人が生きていても
「このとおりだけど? いいんじゃない?」って言いそうで(笑)
そんなところが、いいなあと。
「戦争とは、限界を超えて耐える民間人の“静かな戦い”のことだ」――
そう書いた彼女自身の闘いを思い、
改めて、メリー・コルヴィンに、合掌。
★9/13(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。