たまんないな。この監督、好きだな。
「WEEKEND ウィークエンド」76点★★★★
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金曜の夜。
ラッセル(トム・カレン)はクラブで
グレン(クリス・ヒュー)に出会い
一夜を共にする。
土曜の朝。
アーティスト志望で皮肉屋のグレンと、マジメなタイプのラッセルは
互いの違いをおもしろがるように、会話を重ね、互いを知っていく。
土曜の午後も二人は出会い、
話をし、愛を交わす。
始まったばかりの恋人たちだったが、
土曜の夕方、グレンはラッセルにある告白をする――。
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番長の2016年ベスト2位の「さざなみ」(16年)
そして今年もベスト入り確実な
「荒野にて」(19年)のアンドリュー・ヘイ監督が
2011年に発表した作品。
ワシ、やっぱこの監督、好きだわ。
この人の持つ情感、質感、色味、空気感がすごく好きだわ
と、改めて思いました。
その情感は、重すぎず、どちらかといえばクールでもありながら、
しかしたっぷりと溢れ出していく。
深く切なく、しかもどこか残酷さを内包していて
それが真理をついているんですねえ。
この作品を知るまで
ご本人がゲイだとは知らなかったけど
その繊細さ、漂う冷徹さに
そうか。と、ちょっと腑に落ちる感じがしました。
この作品もゲイのカップルを描いてはいるんですが、
どんな人にも普遍の「恋」、そして人と人との関係が描かれているのが
めちゃくちゃいいんですよ。
どちらかというと真面目タイプの主人公ラッセルと
アーティスト志望で皮肉屋のグレン。
金曜の夜にクラブで出会い、一夜を共にした二人は
互いに「自分にはない」部分に興味を惹かれたのか
土曜日にも会い、会話を弾ませる。
それはまさに、誰もが経験する
知らない同士がお互いに興味を持つ瞬間のキラキラと
前のめりで相手を知りたい!と思う、あのきらめきそのもので
でも、お互いを知ることでぶつかり、
空気が悪くなりもするんです。
そして
それを超えて「ごめん」で、再び繋がり合う。
人と人との関わりのステップが
わずか週末の2日間に凝縮され、
忘れがたいはかなさと美しさを放つ。
その凝縮感と共感度合いが、ハンパない。
合間にはさまれる
夜明けの空、朝焼けの薄い雲の帯、
「荒野にて」にも通じる優しい時間が、美しすぎて泣きたくなる。
さらに
「古いものが好き」というラッセル君の家具や小物のセンスのよさも
人物造形に大きな印象を足してくれます。
ミカエル・アース、ミア・ハンセン=ラブ、サラ・ポーリー・・・・・・
ワシ的に、何度でも見返せる「空気」を共有できる
監督の一人だなあと。
それにですね、
観終わって、いつまでたっても、いまだに
「あの二人、どうしたかな」と、ふと思う。
そういう映画は忘れがたいんです。
★9/27(金)からYEBISU GARDEN CINEMAほかで公開。