ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ハニーボーイ

2020-08-06 23:47:31 | は行

ノア・ジュプ、やっぱいいすねえ!

 

「ハニーボーイ」74点★★★★

 

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若くしてハリウッドスターとなった

22歳のオーティス(ルーカス・ヘッジズ)は

ストレスからかアルコールに溺れ、自動車事故を起こしてしまう。

 

逮捕された彼は、更生施設でリハビリを受けることに。

 

カウンセラーから

「自分の想い出をノートに書いて」と言われた彼は

封印していた過去の記憶を遡り始める。

 

まっ先に思い出すのは、父のことだ。

1995年。12歳のオーティス(ノア・ジュプ)は子役として働き、

そのギャラで父(シャイア・ラブーフ)を養っていた。

 

過去を思い出すうち

22歳のオーティスは自身の問題の根っこに

父との関係があると気づく。

 

が、いっぽうで父との日々は、

光に溢れ、輝くものでもあったのだ――――。

 

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ハリウッドの子役として生計を支える

聡い12歳の少年と

アルコールに溺れるダメなステージパパの物語。

 

というと、ままありそうな感じなんですが

まず、絵がすごくいい。

 

触感を大事にするような、繊細な光と

エモーショナルを盛り上げる絶妙な音楽。

 

ドキュメンタリー分野で活躍してきた

アルマ・ハレル監督の、独特の映像美が光ってます。

(監督の短編「jellywolf」、YouTubeでも観られるので、ぜひ)

 

その映像に収められた主演ノア・ジュプの

切なく、無垢な愛おしさがたまりません。

「ワンダー 君は太陽」(18年)で主演ジェイコブ君の向こうを張って

超・印象的だった彼。

 

「フォードVSフェラーリ」(20年)でも

クリスチャン・ベイルの息子役で、印象深かった彼が

瑞々しく、主演をはっております。

 

さらに、成長した彼をルーカス・ヘッジズが演じるなど

実に旬。

 

と、映画的にも光ってるんですが

さらにこの話が劇中で、ダメ親父役を演じるシャイア・ラブーフの

自伝的な物語なのだ、と知ると

より胸がギュッと絞られるんですよ。

 

「トランスフォーマー」シリーズでも知られ

子役からスターとなった彼ですが

しかし問題行動を多発し、逮捕されたりと

いろいろお騒がせ人物だった。

 

その彼が、リハビリのために「自身のPTSDを探る」目的で

セラピストに言われて書いたのが、本作の脚本なんですね。

こんな過去があったなんて知らなかった。。。

 

自ら、自分を苦しめた父親を演じるって、

どんだけの精神力なんだろう。

その意欲に、敬意を感じてしまう。

ラストに写る、実父の写真と、ひたいをはげ上がらせた自身が

そっくりなのも、泣けた・・・。

 

シャイア・ラブーフって

「ウォール・ストリート」(2011年)とかでも演技派だなあとは知ってたけど

最近の彼の「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」(20年)

めちゃくちゃよくて

いろいろふっきれたのか、いい俳優になったなあ!と

感動してたのですが

 

まさに「ザ・ピーナッツ~」撮影中に何度目かの事件を起こし、

公開が延期されてしまったことで

そこに大いなる反省があったんだそうです。

 

一念発起しての、この作品、ということを知ると

またまたジーンとくるのでありました。

 

発売中のAERA「いま観るシネマ」で

アルマ・ハレル監督にインタビューさせていただいております。

獄中ならぬ、リハビリ施設中のシャイアから

「監督してほしい」と連絡を受けたそうで

その信頼関係が、どこに起因するのか。

伺ってますので、ぜひ映画と併せてご一読くださいませ~!

 

★8/7(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「ハニーボーイ」公式サイト

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