日本版A24スタジオ作品、という趣が!
「ソワレ」73点★★★★
************************************
現代の日本。
俳優になる夢を持ちながら
鳴かず飛ばずの翔太(村上虹郎)は
生まれ故郷の海辺の街で
高齢者施設の入居者に、演劇を教えることになる。
翔太はそこで
施設スタッフとして働くタカラ(芋生悠)に出会う。
どこか陰のあるタカラは
想像を絶する苦痛を生きのびてきた女性だった。
が、何も知らない翔太は
ある夕方、夏祭りに誘おうと、彼女のアパートに向かう。
そこで衝撃の事態を目にした翔太は
とっさにタカラの手を取り、
あてどない逃避行を始めるのだが――?!
************************************
センシティブな題材を
繊細に、「触感」を大切にしつつ、
既存の映画文法に挑戦しながら、映像に落とし込む――
そんな気概と意思が写っていて
どこか
「ミッドサマー」(20年)などを排出した新鋭
A24スタジオの作品に似た空気を感じる作品でした。
で、監督が外山文治氏と知り
「ああ!」とより嬉しく、腑に落ちた。
気になっていた監督なんですよねー。
で、映画の内容は
逃れられない存在=父に蹂躙され続けてきたタカラ(芋生悠)が
ある事件を起こし
偶然居合わせた翔太(村上虹郎)と、逃亡をはじめる。
その逃避行は希望のない「予感」を感じさせつつも
ひたすら青く、みずみずしく
追わずにはいられない。
観ているうちに誰もが
「こんな弱者を追い回し、追い詰めるよりも、
やらなきゃいけない事、捕まえるべき悪はあるんじゃないか?」
――と憤怒するはず。
その感情は発展して
「こんな世界で何ができるのか」「なにが正義か?」「何が犯罪か?」――の問いを
じわじわと、我々に突きつけてくるのだと思います。
翔太が言う
「なんで弱い者ばかりが損をして、馬鹿を見るばかりなんだ。
そんなの良いわけがない!」
――というセリフ。
いま、このときに響くんだよなあ
来週9/1発売の『週刊朝日』、「この人の1週間」で
本作をプロデュースした俳優・豊原功補さんにお話を伺っております。
「なぜいま、『ソワレ』が必要だったのか――?」
じっくりひもとく、一助になれば幸いです!
★8/28(金)から公開。