その勇気を称えたい!
「オフィシャル・シークレット」73点★★★★
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2003年1月。
英国の諜報機関GCHQ(政府通信本部)で
メールのチェックや翻訳の仕事をする
キャサリン(キーラ・ナイトレイ)は
ある日、米国の諜報機関NSA(国家安全保障局)から送られてきた
メールを見て愕然とする。
それは英米がイラク侵攻を強行するため
違法な工作をする、という内容だった。
「戦争をはじめるために、ウソをつくの?」
――内容に憤りを感じたキャサリンは
悩んだあげく、マスコミにその内容をリークする。
2週間後、記事が英国「オブザーバー」紙の一面を飾った。
しかし、キャサリンの職場ではリークした犯人探しのため
執拗な取り調べが始まる。
そしてキャサリンの告発も虚しく、
イラク侵攻は開始されてしまう――。
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2003年3月20日、「大量破壊兵器あり」のウソで始まったイラク戦争。
暴走する戦争を止めようと
内部情報をリークした、一人の勇気ある実在女性を描いた作品です。
アメリカで「記者たち」(19年)に描かれた彼らが闘ったように
同じくしてイギリスで
たまたま「イラクを攻撃するための工作」を知り、
正しき行いをしようと、突き動かされたキャサリン。
彼女は
英国諜報部勤務、といっても
華麗なるスパイ的なポジション、とかではぜーんぜんなく
新聞広告に応募して採用された
本当に、いちスタッフ。
映画も彼女を
いかにもヒロイックな人物として描いていない。
そこが、いいんですね。
良識あるいち市民として、ウソを見過ごせなかったその心情、
いっぽうで
正しいことをしているのに、職場を追われ、逮捕され、身の危険すら感じ
「本当に、やってよかったのか?」と悩む
彼女の胃が迫り上がるほどの迷いや恐怖に
ものすごく共鳴できる。
それでも、信念を通す。
キャサリンの底にある鋼のパッションを
キーラ・ナイトレイが素晴らしく演じています。
実在のキャサリンは1973年生まれ。
日本に留学し、広島で仕事をした経験から
反戦への強い思いがあったことが
劇中で明かされる。
これは――日本人である我々は特に
胸に手を当てなければならないでしょう。
彼女の告発を記事にしたのは
イギリスの日曜発行の新聞「オブザーバー」紙。
勇気ある行動ですが、やっぱりそうそう思うようにはいかず
「うちは官邸の広報紙かよ!」と、内部記者に揶揄されるシーンを見ながら
この出来事からすでに17年、いまだ、いやさらにメディアは
ひどい状況になってないか?と
思わずにいられないのでした。
★8/28(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。
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