ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ソワレ

2020-08-28 23:49:49 | さ行

日本版A24スタジオ作品、という趣が!

 

「ソワレ」73点★★★★

 

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現代の日本。

 

俳優になる夢を持ちながら

鳴かず飛ばずの翔太(村上虹郎)は

生まれ故郷の海辺の街で

高齢者施設の入居者に、演劇を教えることになる。

 

翔太はそこで

施設スタッフとして働くタカラ(芋生悠)に出会う。

 

どこか陰のあるタカラは

想像を絶する苦痛を生きのびてきた女性だった。

 

が、何も知らない翔太は

ある夕方、夏祭りに誘おうと、彼女のアパートに向かう。

 

そこで衝撃の事態を目にした翔太は

とっさにタカラの手を取り、

あてどない逃避行を始めるのだが――?!

 

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センシティブな題材を

繊細に、「触感」を大切にしつつ、

既存の映画文法に挑戦しながら、映像に落とし込む――

そんな気概と意思が写っていて

 

どこか

「ムーンライト」(16年)

「ミッドサマー」(20年)などを排出した新鋭

A24スタジオの作品に似た空気を感じる作品でした。

 

 

で、監督が外山文治氏と知り

「ああ!」とより嬉しく、腑に落ちた。

「燦々(さんさん)」(13年)も好きで

気になっていた監督なんですよねー。

 

で、映画の内容は

逃れられない存在=父に蹂躙され続けてきたタカラ(芋生悠)が

ある事件を起こし

偶然居合わせた翔太(村上虹郎)と、逃亡をはじめる。

 

その逃避行は希望のない「予感」を感じさせつつも

ひたすら青く、みずみずしく

追わずにはいられない。

 

観ているうちに誰もが

「こんな弱者を追い回し、追い詰めるよりも、

やらなきゃいけない事、捕まえるべき悪はあるんじゃないか?」

――と憤怒するはず。

 

その感情は発展して

「こんな世界で何ができるのか」「なにが正義か?」「何が犯罪か?」――の問いを

じわじわと、我々に突きつけてくるのだと思います。

 

翔太が言う

「なんで弱い者ばかりが損をして、馬鹿を見るばかりなんだ。

そんなの良いわけがない!」

――というセリフ。

いま、このときに響くんだよなあ

 

来週9/1発売の『週刊朝日』、「この人の1週間」で

本作をプロデュースした俳優・豊原功補さんにお話を伺っております。

「なぜいま、『ソワレ』が必要だったのか――?」

じっくりひもとく、一助になれば幸いです!

 

★8/28(金)から公開。

「ソワレ」公式サイト


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