7時間18分!それでも観たかった!
「サタンタンゴ」77点★★★★
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ハンガリーの、ある田舎の村。
秋の長雨が始まり、降り止まない雨に道はぬかるみ、
村は陰鬱な空気に覆われはじめていた。
村人フタキ(セーケイ・B・ミクローシュ)は
隣人シュミットの女房と一夜を共にしていた。
その朝、シュミットの女房は言う。
「きっと今日、何かが起こる」――
そんななか、
村にある知らせが舞い込んでくる。
「1年半前に死んだはずの男、イリミアーシュが帰ってきた!」
果たして、
イリミアーシュの帰還は本当なのか?
彼は貧しく、すさんだ村に救いをもたらす救世主なのか?
それとも――?!
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「ニーチェの馬」(11年)を最後に
映画監督業を引退を宣言したタル・ベーラ監督が
1994年に発表した伝説的作品。
4Kデジタル・レストア版での公開です。
(35ミリのネガを4Kスキャンして、300時間以上をかけて、傷や汚れを取り除いたそうです)
7時間18分!とあって
さすがに一日旅行に行く心持ちで望みましたが
うん、やっぱり観てよかった!
陰鬱な悪夢のようで、しかしあらゆる暗示が提示され、
25年前の作品とは信じがたいほど、鮮烈なのです。
上映中に2回の休憩があるし、
全体が12章で区切られていて
各章がその前のエピソードを別の視点から見せてくれたりするので
「そうか、こういうことか」という謎解きもできるし、読解の助けにもなる。
大丈夫、予想以上にいけると思います!
貧しい農民たちの村に、死んだはずの男イリミアーシュが戻ってくる。
キリスト然としたルックスで弁達者な彼は、
村人たちを導こうとするがーー?!というのが大筋で
降り続く雨、ぬかるんだ道、
全てが暗たんとして、暗~~く晴れない気分になる。
が、その悲壮感が実に今日的で
苦しいけれど浸りたい、という(笑)
特に
少女が猫をいじめるエピソードはキツかったんですが
そこに含まれた暗澹たる未来と、現状への苛立ち、
そしてその後に続いていくこの展開では、致し方なしか・・・・・・と。
さまざまな解釈ができるし、それを必要とする作品ですが
ワシのシンプルな脳みそでは
時代はいくらめぐっても、
人間がいるかぎり、その営みも、愚かさも繰り返される。
真に愚かしいのは
騙す人間か、騙される側か、
あるいは知ること、見ることを怠っている盲目たる者か――という
問いかけであるのかな、と。
25年の時を経てなお、波動砲のようにズドーンと
いまの我々を直撃してくる。
目撃すべき映画、だと思います。
本作はイリミアーシュ演じるヴィーグ・ミハーイのカリスマ性がキモでもあるんですが
彼は本作含め83年からタル・ベーラ作品の作曲を手がけている
作曲家でもあるそう。すげーかっけー・・・・・(笑)。
そしてタル・ベーラ監督、いま日本にやってきています!
取材、してきます!ドキドキドキドキ・・・・・・(心拍MAX)
★9/13(金)からシアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。
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