ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

モリーズ・ゲーム

2018-05-07 23:05:39 | ま行

 

またまたジェシカ・チャステインがやってくれました!

 

「モリーズ・ゲーム」75点★★★★

 

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2002年。

 

冬季オリンピック出場を目指すモーグル選手

モリー・ブルーム(ジェシカ・チャスティン)は

あるアクシデントから、アスリート人生を絶たれてしまった。

 

絶望するモリーだが、そもそも

心理学教授の父(ケヴィン・コスナー)を持ち、頭脳明晰な素地はあった。

 

そんな彼女はひょんなことから

ポーカー・ゲームのサロンでアルバイトをすることになる。

 

そこはハリウッドスターや映画監督など

大物が集まる超一流のサロンだった。

 

モリーはそこで、さまざまなこと学んでいくが――?

 

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 ディカプリオも顧客だったという伝説のポーカールーム。

 

それを運営していた弱冠26歳のモリー・ブルームの

回顧録をもとにした作品です。

 

しかも「ソーシャル・ネットワーク」(10年)「スティーブ・ジョブズ」(15年)などで

実在人物をリアルに深掘りする才人・アーロン・ソーキンの初監督作。

 

そりゃあ、おもしろいです!

 

怒涛のセリフ、畳み掛けるような

めまぐるしい過去と現在のカットバック。

 

まさに「ソーシャル・ネットワーク」を彷彿させる

その洪水と情報量が圧巻!

 

しかし、そんな監督のパワーを前に

チャスティンの硬質さは微塵もひるまない。

凜として複雑なヒロイン像の構築に、拍手!

 

さらに今回はその鋼鉄さに、

元・アスリートとしてのタフさ、強靱さが加わり、

 

裏社会の汚さや裏工作とは無縁な、

ある意味バカがつくほどの“フェアネス精神”が、

これまた硬くしっかり、描かれているのがおもしろい。

 

限りなく黒い世界にいる彼女に、本当に“白さ”はあるのか?

どこまで観客を、周囲を信じさせられるか?――が大きなポイントですね。

 

 

それにね、話自体もおもしろいけど

セクハラ問題に揺れるいまに、この映画

すごーく、大きな意味があると思う。

 

豊満なバストをチラ見せする服装といい

モリーは自分の武器をちゃんと理解しているけど、

絶対に客と私情を交えない。

部下となる女子たちにも「一線を引く」ことをしっかり教育する。

 

そういうビシッとした姿勢でいると

彼女のポーカールームの噂を聞いて

「なんかいいことできるんじゃねーか」と思ってやってくる輩も

「あ、そういうことはないのね」「野暮ね」と、暗黙のうちにルールに従っているような感じ。

 

その線引きをするのは、誰でもない自分自身なんだと

こんなふうに闘うこともできるんだと

彼女はキリッと、世に知らしめているようでもあって。

 

 #MeTooから派生した、性被害の撲滅を訴える「Time's Up」運動にも参画しているチャステインの

これ、ある種のアンサーであり拳だと、ワシは感じました。

 

★5/11(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開。

「モリーズ・ゲーム」公式サイト


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