ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

新聞記者

2019-06-29 12:27:23 | さ行

これは観なきゃダメだ!

 

「新聞記者」80点★★★★

 

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現代の日本。

東都新聞の社会部記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに

「医療系大学の新設」に関する極秘文書が送られてくる。

内部のリークなのか?

吉岡は調査を始める。

 

そのころ

内閣情報調査室(内調)に勤務するエリート官僚・杉原(松坂桃李)は

日々、パソコンに向かっていた。

 

内調の仕事は主に

現政権に「都合の悪い人物」のスキャンダルをマスコミに流したり、

ネットでアンチコメントを流したりすること。

「すべては政権安定のため」という参事官(田中哲司)に疑問を感じつつも

杉原は粛々と仕事をこなしていた。

 

そんななか、杉原の尊敬する上司・神崎(高橋和也)が投身自殺を図る。

いったい、なにがあったのか――?

 

極秘文書の件で、神崎に迫っていた吉岡もその自殺に衝撃を受ける。

そして吉岡、杉原、

異なる立場の二人の線が、交差する――。

 

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やっと日本にも、こうした映画ができた!

 

東京新聞・望月衣塑子記者の『新聞記者』(角川新書)に触発された作品。

 

内容はフィクションですが

直近な事件を想起させるリアルさがとてつもなく

そこに正面から挑んだ主演二人の熱量と、製作陣の覚悟に打れました。

 

例えば政府に都合の悪いことを言った人間に

都合よくスキャンダルが出てきて、マスコミがそれを扇情的にかき立てたり。

勇気を振り絞った女性の告発が、葬られたり。

「なにか、変だ」「おかしいんじゃない?」と思う日本のいまの状況が

こんなふうに「操作」されていてもおかしくない、と

思わせる怖さ。

 

その恐怖に支配されず、

地道な下調べと取材、そしてツイッターで

強大な権力に挑もうとする記者・吉岡の姿はあまりに非力で、

エンタメ要素としては、か弱いといえるかもしれない。

 

 

ど派手なスリルや、わかりやすい情報合戦があるわけじゃないしね。

 

でも、この強烈な重苦しさと緊張感、

ハラハラはなんだ?

 

 

そしてラスト、松坂桃李氏の、抜け殻のような表情のものすごさ。

 

でも、このエンディングこそが、

終わらない戦いのゴングになっている。

そう感じました。

 

併せてぜひ、望月衣塑子さんの『新聞記者』(角川新書)を。

おもしろいのでおすすめですよ。

 

そして

来週7/2(火)発売の『週刊朝日』で

主演のシム・ウンギョンさん×松坂桃李さんの対談取材をさせていただきました!

お二人のこの映画にかけた覚悟、ニュースの見方がどう変わったかなど

たっぷりお話を伺っております。

しかも

インタビューはすべて日本語。

シムさんの日本語力に感嘆!

 

★6/28(金)から全国で公開。

「新聞記者」公式サイト


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