「ぼくのエリ 200歳の少女」原作者による
北欧衝撃ホラー&ミステリー。
「ボーダー 二つの世界」71点★★★★
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スウェーデンに暮らすティーナ(エヴァ・メランデル)は
異常に発達した嗅覚の持ち主。
その能力を活かし、税関で
違法なものを持ち込む人間をかぎ分け、
水際で犯罪を阻止している。
しかし、ティーナは生まれつき醜い容姿をしており
一応、同居人の男性と暮らしてはいるが
孤独な日々を送っていた。
そんなある日、ティーナは税関で
ヴォーレ(エーロ・ミロノフ)という旅行者の男に出会う。
どこか自分と似た容姿の彼を
ティーナは気にし始めるのだが――?!
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各国の映画祭を席巻しつつも
「ショッキングすぎる!」と話題のシーンがあり、
しかし、製作者の意向を汲んで
日本ではノーカット完全版として上映した――と、いう作品。
いろいろ身構えましたが
まず動物がかわいそうな描写はありません。血みどろもない。
ホッ。そこは、ご安心ください。
ただ
この映画がえぐってくるものは、確かにかなりキツい。
これまでにない側面から
人間の“陰部”に踏み込んでいる点が
衝撃のゆえんなんだと思うんです。
醜い容姿ゆえ、孤独な人生を送るヒロイン、ティーナ。
だが嗅覚が異常に発達している“特技”を活かし、
税関で働いている。
彼女の嗅覚が
単に麻薬に反応する、とかでなく、
その人の羞恥心や罪悪感など「罪の匂いを嗅ぎ分ける」ってのがおもしろい。
発汗やフェロモンを嗅ぎ分けてるんだろうな。
そんな彼女があるとき税関で
自分に似た容姿の男を止める。
なにかが匂うが、わからない。
別室で検査をするも、怪しいものは何も出なかった。
ただひとつ
彼と思ったその人には、なんとペニスではなく膣があった――?!
と、序盤はかなり
ミステリアスな展開。
その後、その謎や、二人の共通点をすぐに明かしてしまうあたりに
あっけなさも感じたんですが、
この映画のテーマはそこではないんでしょうね。
ゴツい顔の二人がやがて愛し合い、キスを交わし、交わるラブシーンに
なんともいえない気持ちが沸き上がる。
さらに、彼らの生殖にまつわる秘密に
「え?!」とあ然としつつ、
我々の生理に通じる、メタファーも読み取る。
この映画、
美醜による差別、異質さへの拒絶反応――など
建前など通用しない
人間の「本能的な」反応をゆさぶってくるんです。
主人公ふたりの存在は、北欧の童話や伝承にベースを持っていて
どこかダークファンタジーの様子もある。
さらに「ぼくのエリ」のような
猛烈な「切なさ」も内包している、という。
うーん、なかなか手強く、
しかしいまもインパクトの残る映画なのでした。
★10/11(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開。
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