ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

相原真理子さんのこと

2010-02-06 16:44:51 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)
先日、夕刊で
相原真理子さんの訃報を知りました。

検死官シリーズの翻訳で知られ
あのターシャ・テューダーのライフスタイルを
いち早く日本に紹介された相原さん。


検死官シリーズのファンだった番長が
「アエラ」でインタビューさせていただいてから
10年あまり。

その後も
「週刊朝日」で映画評をお願いしたり
映画をご一緒させていただいたり

いつも憧れの存在でした。


検死官スカーペッタそのままのような
凜とした「働きウーマン」でありながら

妻、母としての顔を大切にされる
まあるい優しさの両立が素敵だった相原さん。


今年の年賀状に
体調を崩されたと書いてあって
お手紙を書こうかな、と思っていた矢先の訃報でした。

早すぎるとショックを受けつつ
いままでのお礼を伝えたいと思います。

ありがとう相原さん。
忘れません。

安らかにお休みください。
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第9地区

2010-02-05 01:49:00 | た行
アカデミー賞作品賞ほか
主要4部門にノミネートされた異色のSF作品。


「第9地区」41点★


先ほど完成披露試写で見たばかりですが
もう・・・Woops!うげえ!です。


すみません
おとといの前言、撤回します。

「アカデミー賞ノミネートされた作品は
どれもさすがに一定のレベルを保って――」

ねえよ!(怒)


いまから28年前、
南アフリカ上空に突如、巨大な宇宙船が現れた。

宇宙船内部にいたのは
昆虫のように“醜い”宇宙人たち。

宇宙に帰ることもできずに弱っていた彼らを
人類は“第9地区”に収容する。

そして28年後、スラム化した“第9地区”で
ある体験をした一人の男に
恐ろしい運命が襲いかかる――というSFです。


従来のSFとは全く違った視点、すなわち
“難民”“マイノリティ”として
地球に暮らす大勢の宇宙人・・・という着想はおもしろいし


宇宙人が超グロテスクな容姿だったり
(劇中では“エビ”と言われてたけど、完全にゴキ○リに近い)

相当に汚い描写があったり
スプラッタな作風だったりするのは好きずきなんですが

それを置いといても
いや、話も作りも別によくないよ?



うそっこ証言者たちが語る
偽ドキュメンタリーふうの作りもありきたりだし
主人公はじめ人類はとことん自己チューだし

別に心にグッとくる展開もない。


また
「見るからに嫌悪感を与える宇宙人像」を作り
彼らに対する人間の対応を描くことで

所詮、先入観や偏見から逃れられず
異文化や他者を排除する
人間の愚かさを重ねてるのかもしれないけど

いや、番長、
最初から彼らを「気の毒だなー」と思いましたから。

隣で寝るのはかんべんだけど
(そんなの人間にだってたくさんいるし)

そこまで見た目や差異だけで
判断しないから、別に。

って、みんなそうだと思うんですが。


こんなにも単純化される人類像を見てると
「人間もなめられたもんだなー」と
やりきれなくなっちゃいましたねえ。


まあ、いい人間なんて出てこないという
“筋の通った”映画ではあるんですが。

全米では超低予算、キャストも無名ながら
大ヒットしたそう。
でもこれはあきらかに
“B級”狙いの映画なんじゃ・・・?

もしアカデミー賞、受賞したら
どうなの?これ?


★4月、全国で公開。

「第9地区」公式サイト
コメント (4)
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しあわせの隠れ場所

2010-02-02 23:35:11 | さ行
いよいよ第82回アカデミー賞ノミネート決まりましたね。

すでに“祭り”と化している「アバター」はともかく
「ハート・ロッカー」マイレージ、マイライフ」「17歳の肖像」など
ノミネートされた作品は
どれもさすがに一定のレベルを保持していて
見応えあります。


そしてノミネート中の一作、
この映画も
ほんと、素直にいい映画でした。


「しあわせの隠れ場所」85点★★★


不幸な生い立ちの黒人少年
マイケル・オアー(クイントン・アーロン)が
偶然出会った裕福な白人女性
リー・アン(サンドラ・ブロック)に助けられ

やがて全米を代表する
アメフトのスター選手になる――という話。


まさに
「人の世に“善良”に勝る武器はなし」(by.ぽつお番長)
と胸を張って言いたい、素敵な物語です。


よくできた話・・・、と言いたいところですが
これが実話!で
しかもほぼ現在進行中で起こっている話というのが
ミラクルじゃありませんか。

こうした話が
単なる美談にならずに済んだのは
テンポと掴みのうまい脚本と

そしてなによりサンドラ・ブロックの
パンチの効いた存在感の勝利でしょう。


彼女演じるモーレツ母キャラ
しっかりした肉付けがあるからこそ
この映画は成り立っているのです。
かなり笑わせてくれるしね。

まあこのキャラ、かなり実在の本人そのまんまのようで
そこも温かいじゃありませんか。


それに重要なのは
主人公は、何もアメフトの才能があったから
手を差し伸べられたわけじゃないってこと。


劣悪な環境に育っても
周囲に染まらずに
優しさと謙虚さ、まっとうな心を
持ち合わせていたからこそ
道が開けたんです。


劇中、番長も好きな絵本
「はなのすきなうし」が
実に効果的な比喩となってました。


たっぷり笑いながら
ほっこり幸福感に包まれる

万人におすすめできる映画です。


★2/27から全国で公開。

「しあわせの隠れ場所」公式サイト(まだ英語版ですが)

ちなみに
第82回アカデミー賞は3/7(現地時間)発表!
毎回、受賞結果には
「えー?センスねえなー」と不満タラタラですが
やっぱりワクワクしちゃうんですよねえ。
コメント (4)
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ハート・ロッカー

2010-02-01 23:24:39 | は行
すごかった・・・
ついにイラク戦争版
「地獄の黙示録」ができたか!?という感じです。

「ハート・ロッカー」79点★★★


イラク報道で我々も毎日のように耳にする
凄惨な「爆弾テロ」。

その現地で
爆弾処理に当たる兵士たちの
まさに狂気と紙一重な日常を描いた映画です。


いままでのどのイラク戦争関連映画よりも
汗臭く、汚らしく、生々しく、恐ろしく、
本物っぽく感じました。


主演3人にほぼ無名俳優を起用し
脇役にレイフ・ファインズなど
「ハッ」とさせる配役をしたりするのもテクのひとつで

つまり“映画的”なお約束である
「スターは最後まで生き残る」を
あっさりくつがえそうとしてみたり

わざとズームを多様した
ホームビデオっぽい作りにしてみたり。


これまた
“観客をその場にいるかのように”させる技に
めちゃくちゃ長けてるんです。


「任務終了まであと○日」というテロップが出るたびに
「マジ、もう帰らせてくれ!」と
叫びそうになりました。


それほどに
ニュースではわからない「戦場という地獄」
説得力持って迫ってきます。


先週末に見た
マット・デイモン×ポール・グリーングラス監督の
最新イラクもの「グリーン・ゾーン」も
すごくよかったんですが

あの洗練と計算で見せる臨場感とは
また違ったリアリティがありました。


それにしても
まったく予備知識なく見て打ちのめされたけど
裏を知れば
9.11→イラク戦争を
意欲的に描いてきたスタッフ布陣なんですねえ。


脚本のマーク・ボールは
2004年、爆弾処理班に潜入取材をしたそうで
しかも
トミー・リー・ジョーンズ主演の秀作
「告発のとき」(2007年)の
原案者でもある。

撮影監督のバリー・アクロイドは
グリーングラス監督が
9.11時の悲劇の旅客機を描いた秀作
「ユナイテッド93」(2006年)で撮影を担当。

もうイラクを描くにゃ
最強のスタッフが集まったというわけです。
(ちなみに監督は女性!
しかもジェームズ・キャメロンの元妻!


報道されない戦場のリアルを描くことは
死んでいった兵士たちへの
最高の追悼でもあるけれど

当然、これは戦争の無為と狂気を
訴えているはず。

全米でも大絶賛で
本年度アカデミー賞最有力とされているけれど

まさか、戦意鼓舞と
取り違えてるアホがいるわけじゃないよね?


★3/6からTOHOシネマズみゆき座、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国で公開。

「ハート・ロッカー」公式サイト
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