カーナビとかいう機械が人気だそうな
道に迷っては困る仕事の人たちが使うだけでなく
所詮、遊びのオートバイ走りにも使うらしい。
ひとの趣味だから、おのおの好きにすれば良い。
ただボクは思う。
今の日本で、迷ってそのまま朽ち果てることなど決してない。
予定調和の過程や結末は果たして趣味か?
それともなにか、
計画立案・確実実行・目標達成の社会生活から抜け出せず
自己の解放の過程においても、管理を持ち込まずにはいられないと云うか?
〇
大袈裟だったね。
なんだかね、高っかいオートバイ買ってすぐにね
マフラー換えたり、ライトを換えたり
果ては色まで塗り替えちゃったり
金があるなら使うのは自由かもしれんけど
中でもカーナビ装着は最近スゲー多い。
カーナビなんているかー?
カーナビの案内で目的地へ行くなんて
ボクはそんなオートバイの使い方、イヤだね。
なんだか頭にきたから
今日は迷いに行くことにした
(すみません、ただの貧乏な天の邪鬼なんですわ)
〇
でも最初に行っとくけど、
迷えないよ!
ちょっと時間がかかるだけの話だね。
まだ路面の乾ききらない山道を
杉の落ち葉にリアタイアを滑らしながら登って
国道301号線の道の駅「つくで手作り村」に着いた。
ここはいつもオートバイが一杯なんだけど
ちょっぴり寒くなったこの頃ではオートバイなんて数えるほどしか停まってない。
12月なんてまだこのあたりじゃぁ寒い内に入らんけどね。
途端にオートバイの数が減るんだから、何をかいわんやですわ。
〇
今日はこの先にある、いつも気になるルートに分け入って
迷ってやろうと云う算段だ。(そう私は天野ジャック)
道の駅から北へ向かって1km位走ると
右「玖老勢」という表示が出る。
「玖老勢(くろぜえ)」とは鳳来北部の集落で、
作出(つくで)からそんな豊川(とよがわ)筋に通じるルートがあるなんて、
半ばこの辺りの地理を知っているからこそ、
その険しさが容易に予想されて
「きっとひどいルート」なんだろうなと、考えるわけだ。
なもんだから、いつもその表示を見ながら敬遠していた。
けれど今日はもういいわ、ってくらい天の邪鬼魂(?)に火が付いていて
迷いに行くならあそこだな、と真っ先に思い浮かんだルートだった。
〇
走り始めると確かにどっちが本筋か見分け難い分岐があったりして
ウキウキしてきたんだけど、なんだか妙な按配で
道路の左右はずーっとすごい杉の森。
どうやらこの杉の森を管理する林道を昇格させた県道のようで
その整備具合がまた半端ない。
「ここは一体全体どこだと云うのだ」
なんてひとりで芝居がかっていても
すぐそのきわに、こんな看板さえ付けられている。
「ここは県道436号線で起点から6.0km」らしい。
まーいい。
取りあえずすんげェー気持ちの良いルートだ。
でもね、オレンジ色のベストを着て、犬を連れた人たちが一杯いた。
間違えて撃たれないようにしてね。(どうやって?)
〇
なんだよー、迷いようがないじゃん、とか悪態付いてたら
ふいに目の前に三差路登場!
左「設楽・国道257号」
右「豊橋・浜松」
県道番号は表示されていない。
うげー、迷っちまったじゃん!
ていうか、目的地が定まっていないだけで、迷ってはいない。
設楽へ行くのか、豊橋に行くのかが決まっていないだけだ。
結果的に「左」に折れて、見事ルートを外れた。
入った先は県道435号線で玖老勢には行かない。
すごい閑散とした集落をいくつか越えて
とてつもない勾配の見事なS字カーブを駆け昇ったり、転げ落ちたりして
はたと国道257号線にぶち当たった。
「ははーん、ここね」
〇
やっぱ、迷えんね。
地名や位置関係をなんとなく掴んでいれば十分走れる。
遠くに長い距離走っても同じことだ。
下調べをしてルートを組み立てることもせずに走りだす訳ないし
その段階で大体を把握していれば良い。
カーナビに目的地や経由地を入れるだけで走り出すなよ。
ツーリングにリエゾン区間なんて無い、だろ?