ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

そぞろ神のモノにつきて心ソワソワ

2023年09月14日 | R100Trad (1990) クロ介


秋風が吹き始めるころ

ツバメたちには南へ帰る日が近づいてくる

忙しく飛び回っては小虫を一杯に頬張る

しっかり食べて蓄えておかないと厳しい長旅に耐えられないのだ

そして、いよいよ、という日になると決まって

みんな揃って別れの挨拶にやってくる

何をイタいこと云ってやがるのかと思う向きもあるかもしれないが

毎日外の様子を眺めていれば自然とそれに気づくのだ

ふと足元を見ればそこには萩のかわいらしい赤紫の花

伸び放題の草むらからは虫の音

稲刈りが終わりひこばえが伸びる田んぼ

示し合わせたかのように落葉を始めた川沿いの桜並木

みんなが教えてくれる

――もう秋だよ、と

どんなに強烈な夏だったとしても

地球が回れば必ず秋になる



電線に並んで止まって、風を読むツバメたち

「気をつけて、そしてまた春に会おう」

ボクは心の中で彼らに別れを告げツバメたちを見送る



今年は何処に行こうかな?

いつもこの頃になると考える

「今年は」というのは「今年の秋は」という意味だ

もちろん春夏秋冬それぞれの季節に

それぞれの良さがあることは理解しているけど

やはり一番は秋だね

大平峠の落葉が降り積もる街道

鈴蘭スカイラインの終わりのない広葉樹の林

晩秋の時雨に濡れそぼる奥琵琶湖の里

思い返すだけで

松島の月を想ってそわそわしていた芭蕉のような気分になる





このごろは山間部も主要道路はことごとく改良が進んだ

地域の主要インフラとしての道路を災害から守ることは

当然プライオリティの高い課題だろう

利己的な見方であえて云わせてもらうけど

正直少し寂しいなと思っているのは確かだ

ひねくれた意見をあえて云いたい訳ではない

ただ

先日走ってきた気田川沿いの静岡県県道389号線のようなルートが好きなのだ

もうそれは「トレール」と云ってもいいかもしれない

確かに危険で、維持するために人手も金も時間もかかるのだろう

けれど

砂や砂利が積もり

落ちた木々の枝が散らばり

鬱蒼とした森や林の中を

我が物顔で蛇行する急流の渓谷の際を

直線ともカーブとも云えない有機的な線形で道は進む

そんな中を黙々と淡々と時間も忘れて走ることが好きだ



今のボクの相棒 BMW R100(改RS)

空冷の水平対向エンジンを

オーソドックスなダブルクレードルフレームに乗せた

とても基本的なスタイルのオートバイだ

いや、今となっては基本的というよりオールドファッションか

でもアウトバーンの国で生まれた高速ツアラーだった

今だって高速道路は大の得意で

それはまさに水を得たサカナのような走りだ

とは云えR100RSはあの大きなフロントカウルと

幅60cmのベリーショートなハンドルでとても不整地には向いていない

少なくとも見かけ上はね

それでも縦置きのクランクの安定感と

フラットツインの低重心が作り出す走行感覚は

とても個性的で魅力的

もともと大戦中は側車を付けて砂漠を走るようなオートバイだったから

オフロードとの相性は良いようで

現在ではBMWフラットツインと云えば

「GS」というくらいオフロードのイメージだ

だからこの極東の狭い島国の林道上がりの県道は大得意で

このR100RSが日本人に大人気だった理由が

そんなところにもあるように感じる



それに加えてタイヤの進化も大きい

いま履いているミシュランパイロットクラシックは

非常に高いパフォーマンスで

基本設計が30年以上前のオートバイの走りを

見事にアップデートしてくれている

それでいて必要以上にタイヤの性能が突出することもなく

トータルバランスとして走りを支えてくれていることにも好感が持てる



さて今年の秋は、どこへ行こうか

藁科川に沿って南アルプス公園線(静岡県県道60号線)を辿ろうか

紅葉の頃に木曾路から奈川へ抜けその後旧道で安房峠を越えようか

落葉し喧騒の過ぎた初冬のせせらぎ街道へは今年も行きたいな

でも筋違いの岐阜県県道98号線か453号線もいいかな

(調べてみたら県道453号線は無期限の通行止め告知されていた)

噴火があってから足を向けるのを控えてきた御嶽もいいか

ついこないだと思っていたら噴火は2014年だった

もう10年位経つ

ボク自身が田ノ原へ最後に行ったのは調べてみたら2012年のことだった

久しぶりに行ってみようか



そぞろ神の誘惑が昼も夜も続く

今日この頃だ

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