アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

辻井君の「ショパン」

2015年03月06日 | この一枚
辻井伸行君は、目下、日本で最も有名なピアニストの一人と言ってよいでしょう。ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールに優勝し、その類稀なる音感と超人的な演奏で、一躍注目を浴びました。

彼はすでに、CDを何枚かリリースし、また、全国規模のリサイタルも行っているので、演奏をお聴きになった方も多いかと思います。



この「マイ・フェイヴァリット・ショパン」は、以前ご紹介していますが、次の曲が収められています。

 ・アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22
 ・バラード第1番ト短調 作品23
 ・4つのマズル力 作品24
 ・2つのノクターン 作品27
 ・幻想曲へ短調 作品49

彼の(盲目の)世界に鳴り響くショパンの調べがスピーカーを通して部屋中に広がりました。「明るさ」「楽しさ」「未完成」が印象に残る演奏です。「華麗なる・・・」や「バラード」などの大曲より、「マズルカ」のような曲の方が、仕上がりはよいように思いました。

確かに、感性の良さをうかがい知る演奏ですが、天才的な閃きを感じさせるものでも、完成された演奏でもなく、努力して創り上げた音楽世界のように感じました。

CD解説の伊熊よし子さんは、下記のように評しています。

「辻井伸行の演奏は、ひたむきさと音楽を深く愛する心が映し出されたもの。あまリにも純粋で真摯に作品と対峙するため、つい涙がこぼれるという人が後を絶たない。

このショパンも聴き込むほどに心の奥に熱いものがこみあげてくる。辻井は自分の音を見つけ、自分のショパンを見出し、ショパンで語り、歌い、聴き手の心の感動という名の扉をノックする。強烈に、しかも静謐さを伴って・・・。」
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My Favorite Analog!~グローフェ「グランドキャニオン」

2015年02月20日 | この一枚
古き良き時代の米国を代表するグローフェの「グランドキャニオン」を聴いた。演奏は、当時音が良いと評判だったオーマンディ・フィラデルフィア。



勿論、LPなのでダイナミックレンジなどは現在のCDに敵わないのだが、絶頂期のフィラデルフィアの音を楽しむことができる。表題作の他、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」がカップリングされている。

このLPは、CBSソニーの世界クラシック音楽全集(103枚)の中の1枚で、ジャケットに近代絵画の傑作が使われていて楽しみが倍化する。

この絵は、モディリアーニの「子を抱くジプシー女」である。首の長い独特の画風が目を引く。

一方、この全集は新品のまま保管されていたものを入手したので、いずれも始めて針を下ろすわけで、ノイズがなく極上の再生音を奏でるのがうれしい。
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My Favorite Doughnuts!~ホロヴィッツの「The Last Recording」

2015年02月11日 | この一枚
伝説の名ピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツのラストレコーディングです。



彼の死(1989年11月5日85歳)の4日前まで、彼の自宅に録音機材を持ち込んで録音された文字通りの「ラストレコーデング」です。

1. ハイドン:ソナタ第59番 変ホ長調
2. ショパン:マズルカ第35番 ハ短調 作品56-3
3. ショパン:ノクターン第16番 変ホ長調 作品55-2
4. ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
5. ショパン:エチュード 変イ長調 作品25-1
6. ショパン:エチュード ホ短調 作品25-5
7. ショパン:ノクターン第17番 ロ長調 作品62-1
8. リスト:バッハのカンタータ第12番の主題による前奏曲「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」
9. ワーグナー・リスト編曲:トリスタンとイゾルデより「イゾルデの愛の死」

これはまさに、人類遺産的な演奏と言ってよいでしょう。

特に、晩年、彼自身も愛したハイドンのソナタの出来は天下一品で、その簡素さと邪心のなさにおいて、人生を達観したものにしか表現しえないものでしょう。

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My Favorite Analog!~小澤の「アルルの女組曲」

2015年01月04日 | この一枚
やんごとない事情で、手持ちのオーディオ機器の大部分を処分してしまったので、しばらくレコードを聴くことができなかった。

幸い、網友からレコード再生の核となるイコライザーアンプをお借りするができたので、昨日からまた、レコード再生が可能となった。

そこで取り出してきたのが、このレコード。
小澤征爾指揮、フランス国立管弦楽団によるビゼーの「アルルの女組曲」。



音が出た瞬間、メロディラインの懐かしさとビートの利いた音楽に思わず身震いしてしまった。

このレコードは、小澤征爾氏の数ある録音の中でも高い評価を受けているものだが、改めてその演奏・録音の素晴らしさに感動した。

作曲者のジョルジュ・ビゼーはフランス人で、父が声楽教師、母がピアニストという恵まれた環境に育ち、9歳でパリ音楽院に入学するという神童振りを発揮した。

オペラ「カルメン」の作曲者として広く知られ、劇付音楽「アルルの女」、交響曲ハ長調などの優れた音楽を残したが、37歳の若さでその生涯を閉じた。

このレコードには、アルルの女第一、第二組曲の他、カルメン組曲の抜粋(ハバネラなど6曲)も収録されている。
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My Favorite Doughnuts!~岩崎宏美さんの「PRAHA」

2014年12月30日 | この一枚
伸びやかな歌声と歌唱力の高さで人気の岩崎宏美さんのアルバム「PRAHA」。



このアルバムのことは、「ステレオサウンド」誌に掲載されたオーデイオ評論家小林吾郎氏との対談で知りました。

岩崎さんのベストヒットを中心に収録されていますが、何と言っても、ドヴォルザーク・ホールのチェコフィル及び、エクストンの江崎友淑氏(著名な録音技師)とのコラボレーションというのが、オーデイオファイル(愛好家)にとっても魅力です。

果たして、出だしの「聖母たちのララバイ」から、雄大なオーケストラをバックに、岩崎さんの美しいボーカルが響きます。

収録曲

1.聖母たちのララバイ
2.シアワセノカタチ
3.思秋期
4.夢やぶれて(ミュージカル「レ・ミゼラブル」から)
5.手紙
6.ロマンス
7.好きにならずにいられない
8.シンデレラ・ハネムーン
9.万華鏡
10.すみれ色の涙
11.ただ、愛のためにだけ
12.つばさ~Dedicated to 本田美奈子~

耳に馴染んだ「聖母たちのララバイ」や「すみれ色の涙」などは勿論、今度のアルバムで最も気に入ったのが、本田美奈子さんの「つばさ」でした。この曲は、詩も曲もとても良いのですが、何といっても故人となった本田さんへの挽歌となっています。



また、このアルバムには、阿久悠氏の作詞になる岩崎さんデビュー直後の曲が3曲入っています。「思秋期」、「ロマンス」と「シンデレラハネムーン」ですが、いずれも、同氏特有の、そのステージを切り取ったようなすばらしい詩がお楽しみになれます。以下、「思秋期」のみご紹介します。

思秋期

 ”足音もなく行き過ぎた
 季節をひとり見送って
 はらはら涙あふれる私18

 無口だけれどあたたかい
 心を持ったあのひとの
 別れの言葉抱きしめやがて19に

 心ゆれる秋になって涙もろい私
 青春はこわれもの愛しても傷つき
 青春は忘れもの過ぎてから気がつく

 ふとしたことではじめての
 くちづけをしたあのひとは
 ごめんといったそれっきり声もかけない

 卒業式の前の日に
 心を告げに来たひとは
 私の悩む顔見て肩をすぼめた

 誰も彼も通り過ぎて二度とここへ来ない
 青春はこわれもの愛しても傷つき
 青春は忘れもの過ぎてから気がつく

 ひとりで紅茶のみながら
 絵葉書なんか書いている
 お元気ですかみなさん
 いつか逢いましょう

 無邪気な春の語らいや
 はなやぐ夏のいたずらや
 笑いころげたあれこれ思う秋の日”

「思秋期」。どんな曲かイメージがわきませんでしたが、「青春はこわれもの~」というフレーズで思い出しました。いい歌ですね。
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My Favorite Doughnuts!~カラヤン「モーツァルト・管楽器のための協奏曲集」

2014年12月24日 | この一枚
今回ご紹介するのは、モーツァルトの「管楽器のための協奏曲集」です。



モーツアルト晩年の傑作、クラリネット協奏曲のソリストは、首席奏者のカール・ライスター氏。そのふくよかで滑らかな調べは格別です。

1971年の録音と記載されていますから、何と43年前の録音です。

残念ながら、このCD(2枚組)は廃盤となっていて、中古を探す以外、入手する手立てがありませんが、機会があれば是非、聴いて欲しいドーナツです。

勿論、曲目、演奏ともに一級品で、且つ、ジャケットの絵も美しく、収蔵に値する一枚です。

CD-1
・クラリネット協奏曲イ長調 K.622
 カール・ライスター(cl)

・オーボエ協奏曲ハ長調 K.314
 ローター・コッホ(ob)

・ファゴット協奏曲変ロ長調 K.191
 ギュンター・ピースク(fg)

CD-2
・フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K.299
 ジェイムズ・ゴールウェイ(fl)
 フリッツ・ヘルミス(hp)

・フルート協奏曲第1番ト長調 K.313
 アンドレアス・ブラウ(fl)

演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
    ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)

録音:1971/8/17-24 サン・モリッツ、フランス教会
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My Favorite Analog!~シューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」

2014年12月09日 | この一枚
古今東西の名曲の中でも、ひときわ異彩を放つシューベルトの弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 「死と乙女」。



第2楽章に、同名の歌曲の旋律が使われていることから、この四重奏曲も「死と乙女」と呼ばれる。

~病の床に伏す乙女は、死神に対し「立ち去って欲しい」と懇願するのだが、死神は、「お前を苦しめるために来たのではない、(永遠の)安息を与えるために来たのだ」と語りかける~

演奏は、「コレギウム・アウレウム(黄金楽団)」。
この集団は、できるかぎり作曲された当時の演奏スタイルを再現したいと、使用する楽器にもこだわりをみせる。

ちなみに、ヴァイオリンは、1741年製のガルネリと1814年製のマルコンチーニ、ヴィオラは、1690年製のグランチーノ等というからすごい。

それらが奏でる音楽は、深く憂いに満ちたもので、聴く者を捕らえて離さない。
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My Favorite Doughnuts!~Rachmaninov「 ピアノ協奏曲第2番」

2014年11月27日 | この一枚
Rachmaninov(ラフマニノフ)のピアノ協奏曲第2番です。1番とのカップリングです。



甘いメロディーで知られる名曲です。
フィギャースケートの伴奏音楽として使われることがあるので、ご存知の方も多いのではと思います。

日頃、彼の音楽を聴くことはあまりないのですが、音楽サーバーが演奏者毎に整理されていてアクセスが容易であることから、しばらく振りに聴きました。

演奏は、ピアノがツイメルマン、オーケストラは、小澤征爾指揮のボストン交響楽団です。2000年(第2番)と97年(第1番)の録音ですから、かなり以前の制作です。両者ともまだ若く、溌剌とした演奏に好感が持てます。

一方、ツイメルマンは、この協奏曲について、「初恋のような感情に満ちた曲」と述べています。

曰く、「ラフマニノフの協奏曲は演奏するものではなく、"生きる"ものです。私にとってこの2曲は若いピアニストの若い協奏曲です。「疾風怒濤」的な感覚にあふれ、初恋のような感情に満ちています。・・・猛烈に心を揺さぶる瞬間があり、まるで作曲家を裸にしたように多くを物語る旋律的な部分もあります」

独奏者自身がこれほど惚れ込んでいるわけですから、これが聴く方にも伝染して好結果につながっているのではと思います。
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My Favorite Doughnuts!~グリミネッリの「モーツアルト・フルート協奏曲集」

2014年11月20日 | この一枚
冒頭の「フルートとハープのための協奏曲」。
音が出た瞬間に、「これは懐かしい!」との思いが先にきた。



慣れ親しんだモーツアルトだが、久しぶりに聴くと新鮮に聞こえるから不思議だ。

収容されている曲目は、

1. フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
2. フルート協奏曲 第1番 ト長調 K.313
3. フルート協奏曲 第2番 ニ長調 K.314
4. フルートとオーケストラのためのアンダンテ ハ長調 K.315

の4曲。どれも耳慣れする親しみのある曲ばかりだ。

アンドレア・グリミネッリは、「騎士」の称号を持つイタリアのフルート奏者。その国際的な活躍に対して、政府から功労者の勲章も授与されている実力者である。共演は、ロジャー・ノリントン指揮カメラータ・ザルツブルグ。

クラシック音楽だと片意地張らず、BGM的に聴いても楽しめるお薦めのドーナツ。2005年のリリースだが、現在でも、AMAZONなどで入手できる。
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珠玉の~フライシャー「モーツアルト・ピアノ協奏曲集」

2014年11月08日 | この一枚
米国人のピアニスト、レオン・フライシャーのモーツアルトを聴きました。



ピアノ協奏曲集ですが、12番と23番に加え、ちょっとめずらしい、「3台のピアノのための協奏曲」が収録されています。

ピアニストにとって致命的とも言える右手の指の故障から復帰したフライシャーですが、シュトゥットガルト室内管弦楽団を相手に、彼の弾き振りによる珠玉の一枚に仕上がっています。特に、12番はモーツアルト初期のコンチェルトだけに、メロデイも構成も単純明快で、心地よく聴くことができます。

これこそ「ピアノ演奏だ」と言わんばかりのテクニック重視の演奏が多い中、どこにも角張ったところのない、暖かく慈愛に満ちた音楽は、まさに天上の音楽です。

定評あるシュトゥットガルト・コンセルヴァトワールでの録音。「3台のための~」は、キャサリーン夫人とともに弾いています。
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