PHP新書、201頁。
数々の絵画の解説で著名な中野さんの「美貌のひと」を拝見した。
掲載された美女(美男を含む)の絵画もさることながら、中野さんの硬派の解説が魅力的である。
例えば、フランツ・リストの肖像画に添えられた文章。
「美貌の青年がピアノの前に憂鬱そうに座り、だがいったん興が乗るとアクロバテイックな奏法に合わせて髪ふり乱し、時に弦が切れるほどの大音量を出し、ふっとまた夢想的になる。現実を忘れさせる。いつしか「リスト・マニア」と呼ばれる貴婦人たちの集団が各地に生まれた。いわゆる「追っかけ」だ・・・。」
とまぁ、そこに居合わせた如き解説が続く。
表紙の肖像画(部分)は、あるいはトルストイのアンナ・カレーニナではとされるクラムスコイの「忘れえぬ女」である。原画がこちらにあります。