アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

今年読んだ本2024

2024年12月28日 | 読書三昧

今年も、良い本にめぐり合うことができ幸せでした。
目の不調は相変わらずで、2~3頁読んではしばらく休むを繰り返す「カメ読」で何とか読み続けています。

 角川歴彦著「人間の証明」
 天童荒太著「青嵐の旅人」
 池井戸潤著「ハヤブサ消防団」
 嶋津輝著「襷がけの二人」(★★)
 黒田志保子著「若冲~ぞうと出合った少年」(★★)
 池井戸潤著「俺たちの箱根駅伝」(★★★)
 松井今朝子著「一場の夢と消え」
 三浦しをん著「きみはポラリス」(★★)
 雫井脩介著「クロコダイル・ティアーズ」
 朝井まかて著「御松茸騒動」(★★★) 

 長嶋 有著「タンノイのエジンバラ」
 稲垣えみ子著「人生はどこでもドア」
 村山由佳著「記憶の歳時記」(★★)
 沢木耕太郎著「旅のつばくろ」(★★)
 稲垣えみ子著「アフロ記者が記者として書いて来たこと。退職したからこそ書けたこと」
 村山由佳著「二人キリ」
 稲垣えみ子著「老後とピアノ」(★★★)
 稲垣えみ子著「寂しい生活」(★★★)
 古谷経衡著「シニア右翼~日本の中高年はなぜ右傾化するのか」(★★★)
 一穂ミチ著「ツミデミック」 

 鈴木エイト著「”山上徹也”とは何者だったのか」
 石原俊著「オーディオ”粋道”入門」
 川越宗一著「パション」(★★★)
 村木嵐著「阿茶」(★★)
 佐高信・望月衣塑子著「この国の危機の正体」
 角田光代著「対岸の彼女」
 吉田秀和著「ベートーヴェン」
 村山由佳著「星々の舟」(★★★)
 桐野夏生著「柔らかな頬」(★★)
 佐藤雅美著「恵比寿屋喜兵衛手控え」 

 北原亜以子著「恋忘れ草」(★★★)
 村木嵐著「まいまいつぶろ」(★★)
 石井妙子著「女帝~小池百合子」(★★★)
 逢坂冬馬著「歌われなかった海賊へ」
 万城目学著「八月の御所グランド」
 遠田潤子著「銀花の蔵」
 高村薫著「マークスの山」(★★★)
 河崎秋子著「ともぐい」(★★)
 九段理恵著「東京都同情塔」
 柚木麻子著「マジカルグランマ」(★★) 

 朝倉かすみ著「平場の月」
 一穂ミチ著「スモールワールズ」
 深緑野分著「スタッフロール」(★★★)
 冲方丁著「骨灰」

以上、纏めると・・・。

①今年読んだのは、直木賞候補作を中心に44冊。
特に印象に残ったのは・・・。

 北原亜以子著「恋忘れ草」(★★★)
 高村薫著「マークスの山」(★★★)
 池井戸潤著「俺たちの箱根駅伝」(★★★)などでした。

北原氏と高村氏の作品は、いずれも受賞作です。

②候補作の場合、やはり受賞作とは何かが違う(足りない)と思うことがしばしばありました。
それは、昨年集中して読んだ受賞作も含め、昨今、小説家の力が一頃に比べ大分異なっている(落ちている)のではないかと懸念する要因ともなっています。

例えば、現在同賞の選考委員を務める高村薫氏の「マークスの山」(1993年上半期第109回受賞作)などを読むと如実に感じさせられます。

③また、今年は、元朝日新聞記者(編集委員)稲垣えみ子氏の著作に出合い、高齢者の身の振り方との関連もあり共感しつつ数冊続けて読みました。

④時事ネタとしては、東京都知事選挙との関連で、石井妙子著「女帝~小池百合子」が圧巻でした。他に、鈴木エイト氏や古谷経衡氏の著作も印象に残りました。 

蛇足:料理のミュシェランよろしく、「お勧め度」は下記のように★の数で表しています。

  ・先ず、「是非、お読み下さい」と強く推薦したい本 → ★★★
  ・次に、「お読みになってみては」とお勧めできる本 → ★★
  ・最後に、「お暇があればどうぞ」とお勧めする本  → ★

仮に★三つの本なら、心地よい後読感に浸れること請け合います。

蛇足~「今年は44冊」と相方に言ったら、「私は70冊」と帰って来た。恐れ入りやした。

 

 

 

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角川歴彦著「人間の証明」

2024年12月25日 | 読書三昧

 

リトルモア社刊 133頁

角川歴彦(つぐひこ)氏は、東京五輪のスポンサー契約をめぐる贈収賄事件で逮捕・拘留されたKADOKAWA社の会長だった人。

本書によれば、事は本人の知らないところで進行したが、地検特捜部は(同氏を)黒と認定して自白を強要。拘留は、226日間にも及んだ。

同氏は、高齢(逮捕時79歳)で且つ、心臓に持病を抱えていて生死を彷徨う場面もあった由。

5回目の請求の末ようやく保釈されたが、こうした「人質司法」を決して許さず、刑事事件として(司法を相手に)戦いを挑むことになった。

 

 

 

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天童荒太著「青嵐の旅人」

2024年12月21日 | 読書三昧

 

「毎日新聞」2023年1月~24年5月連載、上下巻785頁。

直木賞受賞作「悼む人」の印象を一変させる幕末の青春群像を描いた大作。

物語~激動の幕末の伊予松山藩。戦を厭う娘ヒスイ、医の道で人を助ける救吉、若き武士辰之進。霊泉の湧く故郷を守るため、若者たちが立ち上がる・・・。

天童氏初めての時代小説とかで、同氏独特の静かな筆到はどこへ行ったかと思わせるエンタメ小説に仕上がっている。あるいは、初めての新聞小説という側面があるのかも知れない。

とは言え、ヒューマンな物言いは氏独特のものだ。

 

 

 

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池井戸潤著「ハヤブサ消防団」

2024年11月23日 | 読書三昧

 

「小説すばる」2021年6月~22年5月連載、集英社刊、480頁。

先に拝見した「俺たちの箱根駅伝」がとても面白かったので、本書を借りて読んだ。

ミステリー作家が父の故郷に移り住むと、早速、地元の消防団に入団させられ、田舎の複雑な人間関係に組み込まれていく・・・。

登場人物がよく描かれていて面白いのだが、何せ小さな田舎が舞台故、話もこじんまりして迫力に欠ける。また、連続放火が太陽光発電事業や新興宗教に関係するというのはいかにも作り事のようである。

やはり、「箱根駅伝」には遠く及ばないと思った。

 

 

 

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嶋津輝著「襷がけの二人」

2024年11月14日 | 読書三昧

 

2023年下半期第170回直木賞候補作、書き下ろし、文芸春秋社刊、364頁。

大正末期から戦後間もなくまでの東京・下町を舞台とする良家の嫁と元芸者の女中頭の物語。

ところが、東京大空襲が二人の運命を変え、今度は、三味線の師匠とその女中という関係逆転の成り行き・・・。

彼女らを見守る著者の穏やかな眼差しと筆運びに共感しつつ読んだ。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)

選者評~三浦しをん氏
「市井に生きる女性の生活と人生に焦点を当てながら、説得力をもって時代のうねりを描くという試みが成功している。独特の肌ざわりと余韻が残るのは、この作者にしか書けない、ちょっと変わった着眼点が随所にあるからだろう。」

 

 

 

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黒田志保子著「若冲~ぞうと出合った少年」

2024年11月10日 | 読書三昧

 

黒田さんは児童文学者。本書が初の単行本の由。国土社刊、142頁。

「忠兵衛」少年は、京都の青物問屋「枡源」の跡取りだったが、商売は苦手で絵ばかり描いていた。

そして、将軍吉宗に献上されるため街中を引かれて行く「象」との出合いが、絵画への憧れを確かなものにする・・・。

丁寧に描かれた「伊藤若冲(少年)」の物語は、説得力満点である。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)

 

 

 

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池井戸潤著「俺たちの箱根駅伝」

2024年11月06日 | 読書三昧

 

「週刊文春」2021年11月~23年6月連載、文芸春秋社刊、上下巻704頁の大作。

面白かった。前のめりになって一気に読んだ。
池井戸さんの本は、いつもそうだが生きた人間を描いているので、安心して読むことが出来る。

箱根駅伝の落ちこぼれチーム(予選会で選外となったチームの選手の寄せ集め)が本選の箱根路を力走し、上位入賞を勝ち取るまでの感動の物語。

また、これをテレビ中継する放送局内の葛藤も描かれ、物語に厚みを与えている。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)

 

 

 

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松井今朝子著「一場の夢と消え」

2024年10月29日 | 読書三昧

 

「オール讀物」2023年3/4月合併号~24年3/4月合併号連載、文藝春秋社刊、414頁の大作。

「曽根崎心中」「国性爺合戦」「心中天綱島」など、江戸中期(元禄)に大ヒットし古典ともなっている浄瑠璃作品を世に問うた近松門左衛門(杉森信盛)の半生。

彼と関りのあったさまざまな人々を丁寧に描いている。
ただ、そこで得たヒントを作品に仕上げる過程の作家としての努力や苦しみは記されていない。それが、物語の厚みを損なう結果となっているのではないか。

いずれにせよ、この種の話は浄瑠璃とは何かを知らずして得心しえない。つまり、小生には少々重たすぎる物語であった。

 

 

 

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三浦しをん著「きみはポラリス」

2024年10月21日 | 読書三昧

 

妻の見舞いで病院へ行った際、差し入れた本の中の一冊。

高級レストランの料理のように、著者が腕をふるって恋愛のあれこれを調理し盛りつけた11皿の短編集。

三角関係あり、同性愛あり、信仰愛あり、禁断の恋ありとバラエティーに富むが、いずれにも筆者の暖かい目が注がれていて心地よい。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)

 

 

 

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雫井脩介著「クロコダイル・ティアーズ」

2024年10月03日 | 読書三昧

 

2022年下半期168回直木賞候補作。
「オール読物」2022年1~8月連載、文藝春秋社刊 331頁。

老舗の陶器店を営む熟年夫婦は、近くに住む息子夫婦と孫と幸せに暮らしていたが、ある日、息子が何者かによって刺殺されてしまう。

後の裁判で被告となった男は、息子の嫁と交際歴があり(嫁に)依頼されて刺したと供述する・・・。

疑心暗鬼と嫁姑の葛藤が複雑にからみあい、いつしか家族間の絆は失われて行く。

信頼関係を失った家族には救いがない。読んでいて楽しい物語ではない。

蛇足:クロコダイル・ティアーズ(Crocodile tears)ワニの涙~偽りの涙、特に偽善者が悲報に接して嘘泣きするような不誠実な感情表現を言う。

 

 

 

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