自民党の岡田直樹参院議員(石川県選挙区)がテレビ朝日の番組「報道ステーション」で事実に反する内容が取り上げられたとして、6月17日、放送法に基づく訂正放送と謝罪を求める通知書をテレビ朝日あてに送っていた問題は、「報道ステーション」(4日放送)の番組の中で古舘伊知郎キャスターが岡田氏に謝罪し、一応けりがついたかっこうだ。
いきさつはこうだった。6月10日、北朝鮮への経済制裁を検討する参院拉致問題特別委員会で、参考人として呼んだ拉致被害者の家族代表の横田滋さん夫妻に、岡田氏は「聞くに忍びないことをお聞きしますけれども」と夫妻の心境を気遣いながらも、北朝鮮に経済制裁をすれば、めぐみさんが本当に殺されるかもしれない、その覚悟のほどはどうですか、とたずねた。それに対し、横田氏は「それを恐れていれば結局このままの状況が続く」と経済制裁を強く求めた。岡田氏とすれば、「家族はリスクを覚悟して経済制裁を求めている。だから、政府もやるべきだ」というセオリーで、慎重な言い回しだった。これには、横田夫妻も、参考人として発言の機会が与えられたことに対して、岡田氏に感謝をしていた(6月16日付「救う会全国協議会ニュース」)。
ところが、横田さん夫妻が参考人として出席した特別委員会の様子をニュースとして取り上げた10日夜の「報道ステーション」で、古舘キャスターが、岡田氏の質問に対し、「北をとっちめたいと思うあまり、まるで非常に苦しい立場にいるご夫妻に、この覚悟はありやなしやと聞いているふうに聞こえる」などとコメントし、「無神経な質問」と決めつけたことから、岡田氏は「事実とは違う、名誉を毀損された」と謝罪と訂正放送を求めていた。
確かに映像の一部だけを見れば、無神経な質問に見えるかもしれない。しかし、前後の隠れた文脈をきちんと伝えてこそニュースとしての論理が成立するのである。自分に都合のよい部分の映像を抜き取って構成すれば、ただのプロパガンダ映像である。
謝罪が言い訳がましかったりすると、謝罪の価値が半減するどころか、かえって相手を反発させることになるものだ。その点、4日の古舘キャスターの「訂正」は「前後(の文脈)を忖度(そんたく)せずに発言してしまった」「今後は、ご本人の真意を問いただし、その上でコメントしたい。岡田議員および関係者に多大な迷惑をかけたことをおわびします」と素直に謝罪していた。見ていて違和感はなかった。かえって、「古舘は成長したのではないか」と思わせるほど。すがすがしい謝罪だった。
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