自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆コロナ禍 腐心するテレビと新聞

2020年04月26日 | ⇒メディア時評

   新型コロナウイルスの緊急事態宣言の下、社会では「巣ごもり」や「在宅ワーク」が当たり前となった。在宅率が高まればその分、テレビや新聞との接触度も増える。そこからは番組や紙面づくりに腐心するメディアの姿も垣間見える。

   先日(今月21日)ローカルテレビ局の知人と話していて、「HUT(総世帯視聴率)が10%も増えたが、再放送の番組ばかりで視聴者は満足していないのでは」と。「確かにそうだね」と瞬間うなずいた。お笑いタレントの志村けんさんが3月29日に新型コロナウイルスの肺炎で亡くなり、「追悼番組」と称して民放だけでなくNHKも出演番組を再放送していた。不謹慎な言い方かもしれないが、「バカ殿様」のシーンがどの局でも繰り返され、正直言って、亡き人への記憶を消費しているに過ぎないのではないだろうか、死者の尊厳に配慮した追悼番組なのだろうかと疑問に思った。次は今月23日に亡くなった女優・岡江久美子さんの出演番組の再放送かと思うと少々いたたまれない。

   自身も在宅ワークとなり、平日の日中にテレビのリモコンをオンにする回数が増えた。視聴して感じることは、土日であってもCMが少なく、自社番組の宣伝や「ACジャパン(公共広告機構)」やがやたらと目立つ。インターネット広告費がテレビ広告費を初めて超えるという「広告業界の転換点」(電通「2019年 日本の広告費」)から転げ落ちるようにCM出稿量が激減しているのではないか。「ギョーカイは大丈夫か」と他人事ながら懸念する。

   報道や情報番組は新型コロナウイルスの関連テーマが多いが、伝えるべき情報をいち早くというテレビ報道の使命感のようなものを感じる一方で、出演しているウイルス感染の専門家のコメントが危機感を煽り過ぎると感じることもある。

   先にテレビCMが減ったと述べたが、新聞も同様に広告段数が低くなり、自社広告が目立つ。新聞に折り込まれるチラシ広告も随分減った。これまであったスーパーの特売日やポイント還元のチラシを見なくなった。感染予防のため、買い物客の混雑を招く販売促進のチラシを自粛しているのだろうか。

   紙面では見出しにも気遣がうかがえる。「連休中 うちで過ごそう 各地の人出 大幅減」(26日付・朝日新聞)。連休初日(25日)の全国各地の人出の様子を記した一面の記事だが、あえて見出しで「うちで過ごそう」とつけた。社会状況や読者の心理、そして報道の有り様を鑑みた編集者の苦心の見出しではないだろうか。

   新聞紙面の広告段数が減るとその分、紙面を埋める記事の量が増えて記者の仕事量が増える。ところが、大型連休とは言え、屋内外のイベントは中止、観光名所も閉鎖となり記事にならない。新聞業界では「ニッパチ」といって、2月と8月は社会の動きが緩慢になり記事も少なくなる。このニッパチ現象が連休明け後も当面続くのではないだろうか。   

   テレビ局は放送時間を極端に削減することはできないが、新聞社はページ数を削減できる。今後はその方向ではないだろうか。

⇒26日(日)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

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