自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「ポスト・コロナ」を読む

2020年04月16日 | ⇒メディア時評

   きのうのブログで紹介したIMF発表の世界経済見通しに関する調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミック終息後の世界経済の動きや国際関係について示唆に富んでいる。

            安全性が担保されたツーリズムへの転換

   たとえばこの一文。「今回は影響を免れる国のない、真にグローバルな危機だ。観光業、旅行業、ホスピタリティ産業、娯楽産業などに成長を依存している国々は、とりわけ大きな打撃を受けている。新興市場国と発展途上国はそれ以外の課題にも直面する。比較的脆弱な医療システム、支援策のための財政余地が限られたなかで危機への対応を迫られる一方、世界的にリスク選好が弱まるなかで先例のない額の資本逆流が発生し、通貨圧力にもさらされている。しかも複数の国が、経済成長の停滞と高水準の債務という脆弱な状態で今回の危機に突入した。」(IMF公式ホームページ日本語)

   この現象を自分なり解釈すると、前半は文字通り、観光産業に依存している国や地域はすでに大きな打撃に、そして後半は発展途上国における経済破綻と大量の難民発生の可能性を示唆しているのではないか。「ポスト・コロナ」の現実世界が見えて背筋が寒くなる。

   観光産業が柱の一つである金沢も例外ではない。金沢港に「クルーズターミナル」がこの春完成した=写真=。3階建ての建物で乗船待合室だけでなく、レストランや展望デッキ、会議室、宿泊施設などが入る。石川県が80億円の予算を投じて完成させた「海の玄関口」だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年は54本のクルーズ船が寄港する予定だったが、すでにイギリスやイタリアの客船などキャンセルが相次いでいる。当初4月4日オープンだったが営業開始の目途もたっていない。そもそも、世界旅行というクルーズ船観光の業態そのものが持つのかどうか。

   ただ、人というのは忘れっぽい。ポスト・コロナが定着すれば、抑えられていた旅行熱が再び高まるのではないだろうか。もちろん、そのときは今回の公衆衛生上の教訓が制度化され、より安全が担保されたクルーズ船運航となっていることが前提であることは言うまでもない。

⇒16日(木)午前・金沢の天気     はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする