自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆続・「ポスト・コロナ」を読む

2020年04月18日 | ⇒メディア時評

    前回(17日付)のブログで「国難だからあえて給付を受け取らないという選択肢、あるいは志があってもよい」と書いた。すると、ブログを読んだ知人からさっそくメールがあった。「ということは、宇野さんは志が高いから、10万円を受け取らないんだよね(笑)」と。返答に窮したが、こう返信した。「志は半ばなので10万円は受け取ります。お金は循環させ日本経済の復興に寄与します。その一部は『ふるさと納税』に回し、返礼品に能登牛をお願いすることにします。窮する地方財政と需要減に陥っている畜産農家のお役に立ちたい。肉はすき焼きにして巣ごもり家族の融和をはかります(苦笑)」

   投資より内部留保、有事を想定した日本型経営戦略

   16日付「☆『ポスト・コロナ』の世界を読む」の続き。IMF調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミックと世界経済について厳しいシナリオも描いている。「世界的流行が今年後半に勢いを失わず、感染拡大防止措置が長引き、金融環境が悪化し、グローバルなサプライチェーンがさらに崩壊する可能性もある」(IMF公式ホ-ムページ)

    2008年のリーマンショックはアメリカの投資銀行の破綻がきっかけで連鎖的に世界規模の金融危機が発生し他産業にも波及した構図だ。しかし、今回のパンデミックでは国内外の「鎖国」政策でエアライン、鉄道を始め旅行業、ホテル・旅館業、製造業、地域の飲食店にいたるまでさまざま産業が痛手を被っている。まさにコロナ恐慌だ。

   国際線の9割、国内線の3割を減便を余儀なくされたANAホールディングスが日本政策投資銀行などに1兆3000億円規模の融資枠設定を要請していると報じられた(4月3日付・日経ビジネスWeb版)。定期航空協会のプレスリリース(4月9日付)によると、加盟各社の減収規模はことし2月から5月の4ヵ月間で全体で5000億円が見込まれる、としている。日本の航空業界にとって大打撃だ。ANAが金策に走るのも当然だろう。ところが、ANAの動きに比べ、JALは表立った融資に向けた動きなど報じられていない。

   そこで2019年3月期の有利子負債と利益余剰金(内部留保)を調べてみると理解ができた。ANAは負債7704億円に対し内部留保が5483億円と負債が上回る。JALは負債1368億円に対し内部留保が8225億円もあり、JALは資金調達に余裕があるのだ。ANAは政府目標である訪日4000万人達成に歩調を合わせ、機体を2017年294機から22年335機にするなど積極的に投資を続けてきた。一方、JALは日航機墜落事故(1985年、520人死亡)と経営破綻(2010年、負債2兆3200億円)という2つの十字架を背負い、この10年ひたすら内部留保を増やして財務体質の強化に邁進してきた。

   たとえるなら、ANAはアメリカ型経営、JALは日本型経営、と言えるかもしれない。アメリカ型は内部留保に慎重だ。むしろ、企業の成長戦略として株主への利益還元とさらなる投資を指向する。逆に、日本型は、債務超過に陥ると日本の銀行の融資が受けにくくなるという背景もあるが、今回のパンデミックや震災、あるいは大事故などの有事を想定して内部留保の蓄積を指向する。果たしてポスト・コロナの企業戦略はどうあるべきなのだろうか。

⇒18日(土)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

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