自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆広告メッセージの凄み 「政治に殺される」

2021年05月12日 | ⇒メディア時評

   きのう朝8時39分に友人からメールが届いた。「おはようございます。今日の読売新聞です」と書かれ、画像が貼り付けられていた。「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」。出版社の宝島社の全30段(左右両面)の全面広告だ=写真・上=。図柄をよく見ると、戦時下の子どもたちの竹槍訓練の写真の真ん中に赤いウイルスがある。見ようによっては、国旗の日の丸の部分がウイルスになっている。

   キャッチコピーの下に趣旨が述べられている。「私たちは騙されている。この一年は、いったい何だったのか。いつまで自粛をすればいいのか。我慢大会は、もう終わりにして欲しい。ごちゃごちゃ言い訳するな。無理を強いるだけで、なにひとつ変わらないではないか。今こそ、怒りの声をあげるべきだ。」と。

   実は4日前の今月7日にメールを送ってくれた友人たち3人で昼食を伴にした折に、まさに、キャッチコピーや趣旨文と同様のフレーズが次々と出て、話が盛り上がった。「いまだにワクチンも接種できない。日本はまるで敗戦国だ」と。

   この広告は、読売のほかに朝日、日経の朝刊にも掲載されていた。宝島社はこれまでも全面広告を出している。印象深いのが、2019年1月7日付だった。「敵は、嘘。」(読売新聞)と「嘘つきは、戦争の始まり。」(朝日新聞)の2パターンあった=写真・下=。

   「敵は、嘘。」はデザインがイタリア・ローマにある石彫刻『真実の口』だった。嘘つきが手を口に入れると手が抜けなくなるという伝説がある。「いい年した大人が嘘をつき、謝罪して、居直って恥ずかしくないのか。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。」と。当時国会で追及されていた森友・加計問題のことを指していた。

   そして、「嘘つきは、戦争の始まり。」のデザインは湾岸戦争(1991年)のとき世界に広がった、重油にまみれた水鳥の画像だった。当時は、イラクのサダム・フセインがわざと油田の油を海に放出し、環境破壊で海の生物が犠牲になっていると報じられていた。また、イラクがアメリカ海兵隊部隊の沿岸上陸を阻むためのものであるとの報道や、多国籍軍によるイラクの爆撃により原油の流出が生じたなど、その真偽は定かではない。この広告の掲載のときは、アメリカ大統領のトランプ氏が2017年の就任時からメディアに対して「フェイクニュース」を連発していた。為政者こそ軽々しく嘘をつくな、というメッセージだった。

   今回の広告は、コロナ禍で後手後手になっている為政者をダイレクトに突き刺す広告である。企業広告とは言え、国民の気持ちを代弁するメッセージの数々に喝采を送りたい。

⇒12日(水)夜・金沢の天気      はれ

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