自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆世界にさらす「ワクチン敗戦国」の姿

2021年05月18日 | ⇒メディア時評

   国ごとの新型コロナウイルスのワクチンの接種率はすでに国際評価の判断基準になった。オックスフォード大学などが運営する共同サイト「Our World ㏌ Data」によると、「少なくとも1回のワクチン接種した人数の国ごとの人口割合」(5月16日現在)で日本は3.46%となっている。トップはイスラエルでの62.7%で、それに続くのがモンゴルで54.25%だ。同じサイトでワクチン供給元を探すと、モンゴルはアストラゼネカやファイザーの企業のほか、中国やロシアからも入れている。地の利を生かしながら世界からワクチンを集めているのだ。こうしたデータを見ると「日本3.46%」は実に情けない数字だ。それどころか、国際評価から完全に見放されている。

   その事例が経済と株価、そして東京オリンピックではないだろうか。先ほど内閣府が公式ホームページで発表した2021年1-3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.3%減、年率換算で5.1%減だった。マイナス成長は3四半期ぶり。1-3月期は新型コロナウイルスの感染拡大で政府が東京などに緊急事態宣言を発令した時期と重なる。そして2020年度は前年度比4.6%減で、戦後最大の落ち込みとなったことが分かった。日本は国債や借入金などを合わせた「国の借金」が3月末時点で1216兆円に達し、過去最大、そして世界で最大となった。世界の誰もが考えることは、日本は変異株によってこれからも緊急事態宣言を繰り返すことで経済はさらに低迷する、国の借金で財政破綻するのも間近だろう、と。

   東京オリンピックについても世界は厳しい目で見ている。ニューヨーク・タイム紙(5月11日付)は「A Sports Event Shouldn’t Be a Superspreader. Cancel the Olympics.」の見出し=写真=で、オリンピックを研究する政治学者の記事を掲載している。記事では、IOCは収益の73%を放送権料が占めるので東京五輪を手放さないだろうが、ワクチン接種が数%で日本の世論も60%が開催に反対している。オリンピックを「スーパースプレッダー(感染源)」してはならない、「科学に耳を傾け、危険なジェスチャーを止める時が来た。東京オリンピックは中止されなければならない」と痛烈だ。

   日経平均株価はことし2月16日に3万714円をつけて以降は、最近は下降傾向で2万8000円台だ。逆に、アメリカは3月以降、コロナ感染状況の好転とワクチン接種の進展を受けて経済活動が息を吹き返し、5月10日にダウは3万5000㌦を一時突破した。ワクチン接種が遅れた日本と進んだアメリカの格差が、株価パフォーマンスとしてはっきりと表れている。

   今後、日本はグローバル化から見放されて世界から旅行先などに選ばれなくなるだろう。また、留学生たちも母国に帰りワクチンを接種、そして日本には戻らないのではないだろうか。こう書いているだけで気が滅入る。

⇒18日(火)午前・金沢の天気     くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする