いまの時代にはふさわしくない表現かもしれいないが、「花にも格」というものがある。たとえば、古くからボタンは「花王」、シャクヤクは花の宰相、「花相」と呼ばれてきた。高貴な美しさを周囲に漂わせ、人は相応な愛で方をする。きのう玄関に庭のシャクヤクを飾った=写真=。敷板の上に唐銅の花入だ。花の姿は人の姿にもたとえられる。「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」と。花は精気を放ち、心を和ませてくれる。
しかし、残念なことに人の世の精気が感じられない。東京オリンピック・パラリンピックは一体どのような展開になるのか。NHKニュースWeb版(5月12日付)によると、IOCは理事会後に広報責任者がオンラインで会見を行い、ファイザーなどから提供を受ける新型コロナウイルスのワクチンについて、「東京オリンピックの選手村に入る人の大多数が接種すると見通している」と述べた。また、各競技の予選について「全体の7割にあたる7800人以上の出場枠がこれまでに固まり、2割は世界ランキングをもとに決まる」と述べた。ところが、オンライン会見では質疑応答の最後に指名され、ヤフーの記者と紹介された男性が画面に向かって突然、英語で「東京オリンピックはない」と書かれた黒い布を掲げながら「オリンピックはいらない」などと繰り返し声を上げる一幕があり、映像はすぐに切り替わり会見は終了した。
混沌とした東京オリンピックの状況を象徴するような出来事ではある。オリンピックだけではなく、「人の流れ」をともなうイベントや会議など催事が混迷を深めている。きょう届いたメールで能登半島で9月に予定しているイベントの担当者の苦悩が書かれてあった。
「コロナ、なかなか収まりませんね。GW中に、ついに当市でも感染者が発生し、石川県が独自の緊急事態宣言を発出したことで、現在の市民感情は、イベントを開催することに不安を抱えている状態です。事務局サイドでも、今月末に企画発表会の開催を予定しておりましたが、コロナの状況を見極めて判断するということで延期することになりました。準備がちょっと進んだかなぁと思うと、スタート地点に引き戻される感じがしています」
医療従事者480万人のうちワクチン2回接種を終えたのは139万人、65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種を終えたのはわずか3万人だ(5月12日現在・総理官邸公式ホームページより)。コロナ禍の収束はまだ先が見えていない。菅総理は7月末までに希望するすべての高齢者への2回接種を終えたいと述べているのだが。
自然の中で花は毎年変わらず咲くが、人の世は変わってしまうものだ。先人たちはこれを「無常」と称した。「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」(平家物語)
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