日本酒を評するときに、「上善水の如し」という言葉が使われる。理想とする酒は水のようにすっきりしていて飲みやすいという意味だ。きのう(7日)近所のスーパーに行くと、入り口に「酒蔵復興応援酒」という棚があった=写真・上=。石川県白山市の酒蔵が地震で倒壊した能登の酒蔵を応援するためにコラボレーションで造った酒を販売するコーナーだ。酒造メーカーはそれぞれつば競り合いを演じているとの印象があったので、コラボは意外だった。
白山市はいわゆる加賀であり、石川県民にとっては加賀の酒蔵が能登の酒蔵を応援して造った稀な酒だ。加賀の酒蔵は「車多酒造」、能登の酒蔵は珠洲市の「桜田酒造」と能登町の「数馬酒造」。3つの酒蔵の酒は金沢に住んでいてもなじみがあり、車多は『天狗舞』、桜田は『初桜』と『大慶』、数馬は『竹葉』のブランド酒で知られ、それぞれにファンが多い。個人的な趣向だが、冬の季節だと能登の酒はズワイガニのぴっちりと締まった身や味噌(内臓)にしっくりなじで実に相性がいい。
応援酒の棚には車多酒造の添書が貼られていた。「能登半島地震で、桜田酒造は一瞬で全滅しました。蔵元杜氏の桜田博克氏は、一面に広がる瓦礫の中から一歩ずつ酒蔵の再興を目指しています。このお酒は、奇跡的に残った初桜本醸造と天狗舞をブレンドしたものです。利益は桜田酒造の復興資金となります。ぜひ、初桜を応援してください。なお、このお酒は桜田氏が味わいの監修を行いました。能登に想いをはせお楽しみください」(一部略)と。同様に竹葉の添書もある。(写真・下は、酒蔵が倒壊した珠洲市の桜田酒造=「令和6年能登半島地震 酒蔵支援プロジェクト」公式サイトより)
その添書からは、同業他社ではあるものの、さらりと手を差し延べる気持ちが伝わってくる。そしてうれしいことに、その添書を読んだ買い物客が次々と初桜や竹葉を購入していたことだ。もちろん自身も買った。上善水の如く穏やかに気持ちが流れて消費者の心も癒やす。酒蔵の連携にそんなことを感じた。
⇒8日(金)午前・金沢の天気 くもり時々はれ
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