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災害時も美味しく健康的な食事を 発生から3日間命をつなぐ「防災食」の進化 地方自治体も応援
2日 10時00分
災害時、最も必要なものは「水」と「食料」だ。大規模災害でライフラインが停止するなどした場合、「支援物資が届くまで3日から1週間かかる」とされる。推奨される最低3日分の食料備蓄。私たちはどのような「防災食」を用意すればいいのだろうか。進化する防災食を取材した。
■農水省が推奨する“3日分の食料”栄養バランスを考えて
防災食と言えば、乾パンやビスケットなど、調理のいらない炭水化物をイメージする人が多いかもしれない。実際、災害直後はどうしても炭水化物の摂取が多くなり、ビタミンやミネラルなどの不足で便秘や口内炎に悩む人も多いという。
農水省は、災害時もできるだけ栄養を摂ることを意識し、主菜・副菜・主食をバランス良く備蓄するよう呼びかけている。こうした災害時の栄養の偏りを考慮して作られた防災食がある。
■高知県で生まれた防災食「豆腐ジャーキー」
高知市で昭和40年から続く老舗の豆腐製造会社「タナカショク」が新たに開発した「豆腐ジャーキー」。小さく切った豆腐を2時間ほどかけて乾燥させ、さくらチップで燻製にすることで、5年間の長期保存が可能になった。豆腐で作られているため、植物性タンパク質やビタミンEなどの栄養も豊富だ。
タナカショクの田中幸彦社長は、「(災害時に)炭水化物を摂り続けると、体に変調をきたしたというデータが残っている。栄養のバランスを崩さないための補助食として活用していただけたらなと思います」と話す。
豆腐といえば「足が早い」イメージがある。田中社長はそんなイメージを覆したいと20年程前、常温で長持ちする豆腐製品を作り、県外にも販売するようになった。防災意識が高まるにつれ、「防災食になるのでは」と考えるようになったという。
■栄養たっぷり野菜の防災食 “規格外”を食べてフードロス対策にも
偏りがちな栄養を補う防災食は他にもある。同じく、高知市の食品事業会社「SLICK」が開発した「高知乾燥野菜ミックス」と「高知乾燥果物ミックス」。にんじん、玉ねぎ、キャベツなど、地元で採れた野菜を低温で乾燥させたドライフードだ。素材そのままの味を楽しむことができ、栄養もとれる。
廃棄されてしまう「規格外」の野菜を使うことで、フードロスを抑えることにもつながるという。元々おやつとして楽しんでもらうために開発していたものだが、長期保存できることに注目し、防災食として活用できるように手を加えた。包装を専用のボトルに変更することで3年間の保存が可能になったという。備蓄しやすいよう、商品を重ねられるデザインにもこだわった。
「SLICK」の森田直剛代表は商品をさらに改良し、自動販売機で販売できるよう準備を進めている。「普段はおやつとして、災害時には備蓄食として食べてもらえれば」と話す。
■事業者の防災食開発を県が後押し 「津波の危険」逆手に
高知県の食品事業者が積極的に開発に取り組むことができている背景には、実は県の協力があった。
高知県は、南海トラフ地震で甚大な被害が出ることが想定され、47都道府県で最も高い津波が来る危険もあるが、それを逆手に取り、防災対策を産業振興につなげる取り組みを10年程前から行っている。
その1つが、地域の食品事業者の防災食の開発をサポートする取り組みだ。開発された商品で、安全性や独自性など基準を満たしたものを、県の「防災関連商品登録製品」として認定。パンフレットやホームページに掲載する。全国で行われる防災製品の展示会などで、自治体や企業に売り出していく狙いがある。
「豆腐ジャーキー」も「高知乾燥野菜ミックス」も、防災食になるのではと事業者が県に相談し、より長く保存するための包装の工夫などを試行錯誤して販売までたどり着いたという。まさに官民一体の取り組みなのだ。
■福島県で開発 川俣町名物「シャモ」のスープにカレー
東日本大震災を経験した福島県でも、ある思いが込められた防災食が開発された。
「川俣シャモのゴロッと煮込み」は、川俣町の名物である「川俣シャモ」がゴロッと入ったスープ。1年半保存ができるうえ、袋から出して、そのまま常温でもおいしく食べられる。
開発した川俣町農業振興公社の渡辺さんは、東日本大震災を経験している。備蓄した食料だけで何日も過ごした体験が、おいしい防災食開発のきっかけとなった。
以下略ーーーーーーーーーーーーーーーーー
TBSテレビ社会部 佐藤碧
2日 10時00分
災害時、最も必要なものは「水」と「食料」だ。大規模災害でライフラインが停止するなどした場合、「支援物資が届くまで3日から1週間かかる」とされる。推奨される最低3日分の食料備蓄。私たちはどのような「防災食」を用意すればいいのだろうか。進化する防災食を取材した。
■農水省が推奨する“3日分の食料”栄養バランスを考えて
防災食と言えば、乾パンやビスケットなど、調理のいらない炭水化物をイメージする人が多いかもしれない。実際、災害直後はどうしても炭水化物の摂取が多くなり、ビタミンやミネラルなどの不足で便秘や口内炎に悩む人も多いという。
農水省は、災害時もできるだけ栄養を摂ることを意識し、主菜・副菜・主食をバランス良く備蓄するよう呼びかけている。こうした災害時の栄養の偏りを考慮して作られた防災食がある。
■高知県で生まれた防災食「豆腐ジャーキー」
高知市で昭和40年から続く老舗の豆腐製造会社「タナカショク」が新たに開発した「豆腐ジャーキー」。小さく切った豆腐を2時間ほどかけて乾燥させ、さくらチップで燻製にすることで、5年間の長期保存が可能になった。豆腐で作られているため、植物性タンパク質やビタミンEなどの栄養も豊富だ。
タナカショクの田中幸彦社長は、「(災害時に)炭水化物を摂り続けると、体に変調をきたしたというデータが残っている。栄養のバランスを崩さないための補助食として活用していただけたらなと思います」と話す。
豆腐といえば「足が早い」イメージがある。田中社長はそんなイメージを覆したいと20年程前、常温で長持ちする豆腐製品を作り、県外にも販売するようになった。防災意識が高まるにつれ、「防災食になるのでは」と考えるようになったという。
■栄養たっぷり野菜の防災食 “規格外”を食べてフードロス対策にも
偏りがちな栄養を補う防災食は他にもある。同じく、高知市の食品事業会社「SLICK」が開発した「高知乾燥野菜ミックス」と「高知乾燥果物ミックス」。にんじん、玉ねぎ、キャベツなど、地元で採れた野菜を低温で乾燥させたドライフードだ。素材そのままの味を楽しむことができ、栄養もとれる。
廃棄されてしまう「規格外」の野菜を使うことで、フードロスを抑えることにもつながるという。元々おやつとして楽しんでもらうために開発していたものだが、長期保存できることに注目し、防災食として活用できるように手を加えた。包装を専用のボトルに変更することで3年間の保存が可能になったという。備蓄しやすいよう、商品を重ねられるデザインにもこだわった。
「SLICK」の森田直剛代表は商品をさらに改良し、自動販売機で販売できるよう準備を進めている。「普段はおやつとして、災害時には備蓄食として食べてもらえれば」と話す。
■事業者の防災食開発を県が後押し 「津波の危険」逆手に
高知県の食品事業者が積極的に開発に取り組むことができている背景には、実は県の協力があった。
高知県は、南海トラフ地震で甚大な被害が出ることが想定され、47都道府県で最も高い津波が来る危険もあるが、それを逆手に取り、防災対策を産業振興につなげる取り組みを10年程前から行っている。
その1つが、地域の食品事業者の防災食の開発をサポートする取り組みだ。開発された商品で、安全性や独自性など基準を満たしたものを、県の「防災関連商品登録製品」として認定。パンフレットやホームページに掲載する。全国で行われる防災製品の展示会などで、自治体や企業に売り出していく狙いがある。
「豆腐ジャーキー」も「高知乾燥野菜ミックス」も、防災食になるのではと事業者が県に相談し、より長く保存するための包装の工夫などを試行錯誤して販売までたどり着いたという。まさに官民一体の取り組みなのだ。
■福島県で開発 川俣町名物「シャモ」のスープにカレー
東日本大震災を経験した福島県でも、ある思いが込められた防災食が開発された。
「川俣シャモのゴロッと煮込み」は、川俣町の名物である「川俣シャモ」がゴロッと入ったスープ。1年半保存ができるうえ、袋から出して、そのまま常温でもおいしく食べられる。
開発した川俣町農業振興公社の渡辺さんは、東日本大震災を経験している。備蓄した食料だけで何日も過ごした体験が、おいしい防災食開発のきっかけとなった。
以下略ーーーーーーーーーーーーーーーーー
TBSテレビ社会部 佐藤碧