若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」河出書房新社 2017年刊
第157回芥川賞受賞作品。著者自身が63歳の新人作家である。難解な東北弁を交え、日常に感じる数々の事象、身の回りのことや母親になった子供との関わり、幼い頃の思い出、なくなったご主人とのやりとりなど、誰にでもあることを自分に問いかけ感じたままを東北弁で書く。
ちなみに標題「おらおらでひとりでいぐも」は、「私は自分で一人行き(生きる、逝く)ますから」くらいの意味です。
これが意外に(と言っては失礼だが)哲学的で奥が深い。老人の繰り言のようにも思えるが、なにか普遍的な側面を持っている。
何よりも、自分以外に責任を持ってゆくような愚痴っぽいところ、攻撃的なところが少ないのが良い。
生きていること、この世とあの世のこと、孫との関わりなど、不思議な暖かさを持つ津軽弁で語られる。ストーリは殆どないのだが、いわば小説というより哲学書と言った趣だ。
なかなか興味深い書である。