相場英雄「偽金 フェイクマネー」実業之日本社文庫 2008年刊
社会派ミステリー作家相場英雄が放つ、現代の錬金術電子通過の世界を舞台とするミステリー。都市銀行→消費者金融→起業という道をたどった主人公が、マネーロンダリングを電子マネーの世界で出来ることを見抜き、ゲームオタクと組んで短期決戦を目論む。
そこに将棋会所の女性席主、キャスターを目指すフリー女子アナ、現代ヤクザが絡み、巨額マネーを巡って疾風怒濤の展開となる。最近のビットコイン事件を彷彿とさせ、リアリテイを持ってはいるが、我々の預かり知らぬ、ネット上の電子マネーの世界のことだけにある種フィクションの世界と突き放して味わえる。
作者得意の警察小説の分野ではなく、銀行或いは金融小説の分野である。
このマネーロンダリングや、外国移転が現実に可能だとすると、現政権に信頼をおいていない中国富裕層はこぞって利用するだろう。現実に中国政府が電子マネーの統制にやっきとなるのも、こうした背景があるのだということがよく分かる。
現実の変化に材を取った面白い小説である。