
相場英雄「震える牛」小学館文庫 2012年刊
これは著者の代表作と言って良いのではないか。社会派、警察小説の分野で迫真の描写力、ストーリー構成力である。
フィクションとは思えないほどの、ありそうな社会背景から事件を掘り出し、地道な聞き込み捜査を積み上げて、ストーリーを推し進める。聞き込みの進行と同時に読者は、一枚一枚ヴェールが剥がれてゆくように事件の真相に迫ってゆく。
警察内部の縦割り組織、キャリア、ノンキャリアの確執、などが絡み操作は一筋縄では進まない。傍線として、メディアの記者の推理、取材から、事実への肉薄もあり小説としては面白みが増す。事件の社会的な背景、必然性、解明までの手順などリアリティに富む。
ちなみに「震える牛」とはBSE(狂牛病)に罹った牛が細かく震える様を言ったものである。
文句なしに面白いおすすめの1冊である。本屋大賞をとっても然るべき小説だと思う。