食べて美味しい薬草
子供の頃、ターイユシンジという煎じものを何度か飲まされたことがある。ターイユとは沖縄語で、漢字で表せば田魚、和語で言えば鮒のこと。シンジは煎じのこと。
父から聞いた話だが、父の父(私の祖父)は一時期鮒釣りを生業とし、釣った鮒は祖母が市場へ売りに行ってたらしい。確か小学校一年生の時、祖父の鮒釣りを手伝わされたことがある。庭の畑からミミズを捕獲し、近くの川へ行ったのを覚えている。
ターイユシンジ、滋養強壮として体力が落ちた時、病気の時などに体力回復の目的で摂取すると文献にある。風邪で寝込んだ時などに私は飲まされたのであろう。
そのターイユシンジはターイユだけを煎じたのではなく、葉ものも入っていた。葉ものは、私の子供の頃の記憶は「苦い」というだけしか残っていないが、今回、沖縄料理の本などで調べてみたら、その苦いものはニガナであった。ニガナとは倭国で言うニガナとは種が違って、和語で言うとホソバワダンのこと。苦いのでニガナという名。
ニガナは苦いけれども、ゴーヤーよりは苦くないと私の舌は感じている。ニガナの白和えは、その苦さが味のアクセントとなってとても美味しい。なので、ニガナは薬草としても扱われるが、日常食の野菜としても用いられる。スーパーで普通に売られている。
薬草で腰痛や歯周病、高血圧を何とかしようと思って、最近、薬草類を意識して摂るようにしている。ニガナは胃腸に良いとあり、腰痛や歯周病、高血圧などに効くとは言われていないのだが、ビタミンやミネラルが豊富だとのことなので、何かの役に立つだろうと思い、最近よく食べている。食べて美味しいという理由が大きいが。
ニガナ(苦菜):野菜・薬草
キク科の多年生草本 九州以南に分布 方言名:ニガナ・ンジャナ・ンザナ
沖縄でニガナと呼んでいる植物はホソバワダン(細葉苦菜)とハマナレン(大葉苦菜)の2種であるが、本土でニガナと呼んでいるニガナとは別種。ホソバワダンとハマナレンはどちらもキク科アゼトウナ属で、本土のニガナはキク科ニガナ属の多年草。
栄養価が高く、夏場の野菜の少ない時期に重宝する。魚汁や白和えなどに使われる。
薬効としては、解熱、胃痛腹痛、回虫駆除、心臓病などに効くとのこと。
記:2018.7.22 ガジ丸 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄おばぁの健康レシピと長寿の知恵袋』平良一彦監修、(株)エクスナレッジ発行
アントシアニン
私は元々血圧が高め(130台)であったが、4~5年前から血圧がさらに高くなっていき、腰痛を患った2017年夏頃からは毎回(手首血圧計で週に1~2回計っている)150台~160台となり、それが今(2018年夏)も続いている。
私の健康不安は高血圧だけではない。腰痛があり、頻尿も酷いので前立腺の不具合や歯周病があり糖尿病の不安もある。それらの不安を払拭するために病院へ行く・・・ということを私はやらない。沖縄に昔から伝わる薬草で何とかならないかと勉強している。
ハンダマは沖縄名、和語ではスイゼンジナという。味に癖はあるが健康野菜であることはだいぶ前に聞いて知っていた。10何年か前に知人の家でハンダマサラダを御馳走になり、その後、自分で料理して食べた記憶もあるが、味はよく覚えていない。ただ、薬草料理を出してくれる飲み屋さんでハンダマチャンプルーを食べたことは覚えていて、ヌルヌルしている野菜だったこと、薬草の割には美味しかったことなどを記憶している。
過日、馴染みの八百屋へ行くと1束100円と安かったので購入した。ハンダマは紫色をしている。「紫色はポリフェノールの1種でアントシアニンっていう奴だ、抗酸化作用がある」ということを先輩農夫のNさんから聞いていたので、それならたぶん、高血圧にも効果があるはずと思い、その1束を茹でて食べた。ゴマ和えにした。
ハンダマを茹でた汁は紫色をしている。「そうか、これがアントシアニンの色ってことか」と感心する程に色が着いている。それは別の煮物料理に使い無駄にはしなかった。
それから10日後くらいに同じ八百屋でまたもハンダマ1束100円を購入した。今回も茹でて、半分をゴマ和えにして食い、翌日残る半分を酢味噌和えにして食った。いずれも美味しかった。そして、その時の茹で汁は、半分は別の煮物料理に使ったが、残る半分は冷やして飲んだ。茹で汁はそのままではあまり美味くないということが判る。
薬草に詳しい友人Tによると、「薬草茶の概ねは、それ単品だけではあまり旨くない、他の薬草とブレンドすると旨くなることが多い」とのこと。次回試してみようと思う。
ハンダマ(スイゼンジナ)は、アントシアニンが多いということから抗酸化作用があり老化防止に効果があると想像できるが、想像通り薬草の本にもそう書かれてある。そしてまた、別の文献には低血圧、貧血、頭痛、不眠症などにも効くともある。
「低血圧に効くということは血圧を上げる?高血圧には悪いってこと?」という疑問を持つが、そうでは無く、血圧を正常に保つという意味らしい。
生でサラダにして、油で炒めて、茹でて和え物にして食事として頂く。また、葉や茎を乾燥させ、それを煎じて飲むと薬効があるとのこと。
スイゼンジナ(水前寺菜):野菜・薬草
キク科の多年生草本 東アジア原産 方言名:ハンダマ
世界の熱帯地域で広く栽培されている。1765年頃、日本へ渡来し、初め熊本県の水前寺で栽培されたことからスイゼンジナの名前がある。
多く枝分かれし、葉をつけ、高さは40~60センチになる。長楕円形で、柔らかく厚めの葉は表面が濃緑色、裏面は紫色となる。その紫色の色素が何かと評判の良いポリフェノールの一種アントシアニン。その他ビタミン類も豊富な健康野菜。
丈夫な野菜で年中収穫できる。味噌汁の具、チャンプルー、和え物などにも良い。
記:2018.8.16 ガジ丸 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄の薬草百科』多和田真淳・大田文子著、那覇出版社発行
『沖縄おばぁの健康レシピと長寿の知恵袋』平良一彦監修、(株)エクスナレッジ発行
『ハーブを楽しむ本』川口昌栄編集、株式会社集英社発行
眠り薬
例年、夏場は暑くて寝苦しくて、ほとんど毎夜グダグダ睡眠が続く私だが、10月頃になって秋風を感じるようになると概ねグッスリ睡眠となる。
ところが、昨年(2017年)12月中頃からなかなか寝付けなくなってしまい、グダグダ睡眠が続いて、1晩に何度も目が覚め、覚めたらなかなか眠れない状況となる。
そんな状況は、たまに5~6時間グッスリ睡眠という日もあったが、年明けて2018年1月になっても続いた。1晩に何度も目が覚め、あれこれ考え事をして、なかなか寝付けなくて、1晩足して4時間前後しか眠れていない日も数日あった。
そんな中、「そうだ、畑に眠り草があったじゃないか」と思い出す。
畑の一角にアキノワスレグサ(カンゾウとも言う)を植えてある。それを食べたのは2~3年前の1度切り、たいして美味いものと感じなかったからで、もっぱら、秋に咲く大きなユリに似た花を楽しむために置いてある。季節を感じる花となっている。
アキノワスレグサは、沖縄語でクヮンソーと言い、薬草として有名。肝臓や胃の薬として使われるようだが、眠り薬としても知られている。
さて、1月20日にクヮンソーを5株ほど収穫して、その夜食べる。その夜は足して4~5時間の睡眠。それまでに比べると少しは増しといった程度。
1月25日にクヮンソーを20株ほど収穫し、その夜10株ほど食べる。その夜も足して4~5時間の睡眠、20日と同じく、少しは増しといった程度。
その後も27日にクヮンソーを食べるが、あまり変化は無い。28日にも晩酌の肴に少し食べる。その夜になってやっとクヮンソーの効果が出たのか、それまでより少し良くなった。それでもしかし、私の満足できるグッスリ睡眠では無い。クヮンソーに眠り薬の効果があるかどうか確定できないまま、29日以降はクヮンソーを食べていない。
しかし、2月1日になって私のグッスリ睡眠がいくらか戻った。その夜は、2度ほど目が覚めたが、足すと6~7時間は眠れて、夢もいくつか見た。翌日もほぼ同様となり、2月4日の夜はほぼグッスリ睡眠となって、久々に濃い夢を見た。
私の眠り薬となったのは、「腰は治るか」、「仕事はあるか」、「食っていけるか」、「人付き合いは上手く出来るか」などといった不安を棚上げして、「あれこれ不安に思うな、コツコツ真面目にやっていれば何とかなるさ」という吹っ切れた気分。そんな気分になったことが、眠り薬としての効果がより大きかったのかもしれない。
クヮンソー、眠り薬として効果があるかどうかは、私の経験からは断定できない。でもまあ、野菜として食せるし、じつは、その花や花の蕾が食用として美味らしい。今年の秋には花や蕾を収穫して食べてみたいと思う。畑をやっていれば・・・となるが。
アキノワスレグサ(秋の忘れ草):薬用・野菜
ユリ科の多年生草本 原産分布は日本、台湾 方言名:クヮンソー
根茎が薬用に、葉柄部と花が料理に用いられる。花はロート状で橙黄色。
記:2018.2.5 ガジ丸 →沖縄の飲食目次
薫り高き食物
フローレンスフェンネルはフェンネルの亜種で、フェンネルは和語でウイキョウ、沖縄語でイーチョーバーと呼ばれるもの。食物としてのウイキョウ(フェンネル)は2012年2月に紹介済みだが、その記事は、友人のIさん(女性)は和食の料理人で、そのパートナー(男性)Tさんは洋食の料理人であると紹介し、Tさんから「フェンネル欲しいなぁ」と話があって、2013年1月にウイキョウを持って行ったら、「これじゃない」となって、Tさんの言うフェンネルはフローレンスフェンネルということが判明した。
という結果となって、その年、フローレンスフェンネルの種を播いて、2014年1月にTさんへ持って行ったら、「これです」と喜んでくれた。3月にIさんTさんの店へ行った時、Tさんの料理したフローレンスフェンネルを食べさせて貰った。美味かった。私も自身で少し料理して食べたが、プロには勝てないが、それなりに美味かった。
Tさんが喜んでくれたということで、2014年にもフローレンスフェンネルの種を播いて、翌年1月以降に多くを収穫し、IさんTさんの店へ売って、なお残ったものはTさんから料理法を教えて貰って自分でも料理した。
Tさんの料理するフローレンスフェンネルは、タマネギ大となった株元の部分。私もその部分を蒸したり、酢漬けにしたり、ワイン蒸しにしたりで食べた。ネットで調べると根っこも食えるとあったので、根っこも蒸して食べた。株元の部分は薫り高く、塩味だけで十分美味しかった。根っこの部分は芋のような感じ、まあまあ美味かった。
しかし、2015年に種を播くことは無く、収穫も無く、その後は食べていない。Tさんの店へ持って行けば買ってくれるが、友人達は買ってくれないので、栽培するには経済的に成り立たないということになった。独特な味は、一般受けしないようであった。
フローレンスフェンネル(Florence・fennel):葉菜
セリ科の多年草 南ヨーロッパ原産 方言名:なし
タマネギ大となる根元はセロリの葉の根元が数多く重なって、太く大きくなったような感じ。肉厚で、水分豊富で、美味。果実は香味料や薬用になる。
記:2018.1.6 ガジ丸 →沖縄の飲食目次
沖縄の大根
子供の頃、ダイコンは好きな食べ物ではなかったと記憶している。ダイコンは沖縄語でデークニと言うが、子供の頃、祖父母、及び父母の口からデークニという言葉はよく耳にしていたが、デークニに良い印象を持っていない。
しかし、大人になってからは、ダイコンは好きな食物となっている。沖縄料理のティビチ(豚足)汁やソーキ(豚骨付きアバラ肉)汁のダイコン、母の料理する生のダイコンをタコやイカと和えたものなど好きになった。おでんのダイコンも大好き。
母の使ったダイコンは、スーパーでよく見る青首ダイコンだったと思うが、シマダイコンという名のダイコンもあるということは、私も子供の頃から知っている。見た目で、細くて長いものが青首ダイコン、短く太いものがシマダイコンと認識している。私の認識だけでなく、ちゃんと調べると、参考文献ににシマダイコンの特徴があった。
『沖縄園芸百科』にシマダイコンの項目はなく、ダイコンはあり、その中で「栽培期間が長く根身が大きく良質である沖縄種があります」とある。そこにある写真のダイコンは形からしてシマダイコンと呼ばれているものと思われる。
さらに、『沖縄大百科事典』にはシマダイコンの項目があり、それによると、「アブラナ科の一年草」で、「他府県に類のない特有の野菜」、「アガイー、ワインチャーの2系統に大別される」、「根形は短太と長紡錘形」、「根部は灰白色で繊維が少なく肉質もよく、煮食用に最適。抽苔後も食用になる」、「1本の重さは2~6キログラム」などとあった。シマダイコンと呼ばれるものにもいくつか品種があるみたいである。
私がシマダイコンと認識しているずんぐりした形のダイコンを、市販の種の、その袋表に島ダイコンと名前が書かれてあるダイコンを、私は私の畑で毎年栽培し、収穫し、食べている。私はそれを美味いと思い、とても気に入っている。
私の食べ方は煮物の他、皮を剥いて、皮は塩漬け、中の部分はポン酢和えにして食べることが多い。皮の塩漬けも中身のポン酢和えも酒の肴として上質だと感じている。
シマダイコン(大根):根菜・葉菜
アブラナ科の一年草または二年草 原産地は不明 方言名:デークニ
名前の由来は広辞苑に「大根(おおね)の音読から」とあった。シマ(島)は沖縄のといった意。方言名のデークニはダイコンの沖縄読み。
根の部分が大きくなり食用となるが、葉も美味しく食べられる。茎の先に淡い紫色の花を多数つける。開花期は12~2月。
ちなみに、ダイコンとシマダイコンの学名は同じRaphanus satvus L.となっている。
記:2018.1.2 ガジ丸 →沖縄の飲食目次