ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

キンモウアナバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 カニの巣穴のような

 金曜日の職場の近くに墓地がある。墓地の一角にはちょっとした公園がある。ちょっとした公園はぐるり回るのに10分とかからない程の広さで、また、植栽されている植物の種類も少ないので、訪ねる機会は少ない。墓地を含めた周辺を散策したついでに、あるいは、トイレを利用するためなどに立ち寄ったりする程度。
  数年前、その公園に寄った際、大きなハチが飛んでいるのを見つけた。数匹いて、飛んでいるだけでなく、地面の上を歩いたりもしていた。普段よく見かける大きめのハチ、キアシナガバチよりもずっと大きい。見たことの無い大きさで、しかも、地面の上を歩いている。ということで、「おっ、これは俺の知らないハチだ。」と判る。当然、写真を撮ったのだが、下手糞カメラマンの写真はボケてて使い物にならなかった。

 そんなことがあったこともすっかり忘れていた去年の六月、タバコを買いに行ったついでに同公園にふと立ち寄った。その時、ちょっと驚くような光景を見た。
 園路を歩いて、以前に大きなハチと出会った所まで進むと、たくさんのハチがブンブン飛んでいた。「おっ、これは前に見た奴だ。」と気付く。歩を進めるごとにハチの数はどんどん増えていった。ハチの数が最も多くなった所で私は立ち止った。「おー!」と小さく叫んだ。芝生の生えた一角に、砂浜のカニの巣穴のような穴が無数に空いていた。

 
 キンモウアナバチ(金毛穴蜂):膜翅目の昆虫
 アナバチ科 本州~琉球列島、台湾、インドシナなどに分布 方言名:ハチャ
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「顔面と後胸背に黄金色に輝く毛を密生し、和名はそれに由来する」とあった。顔面については「黄金色または銀色」とのこと。
 アナバチ(穴蜂)は広辞苑に「地中に穴をあけ・・・」とあり、そこからアナバチと名がついたのであろう。本種については、『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「乾燥した砂地などに・・・坑道を掘って、その中に巣を作る。」とあった。
 飛んでいる時は速すぎて見えないし、地面の上を歩いている時は、背はたいてい翅の下になっていて、黄金色の毛に覆われているかどうか確認できない。ただ、翅は金色に見える。翅が透明なら、背が金色で間違いない。姿全体は黒色。
 体長28~32ミリで、穴蜂としては日本最大とのこと。「ヒメクダマキモドキやセスジツユムシなどを捕獲し、それに産卵し、巣に運び入れる。」とのこと。孵化した幼虫はそれらを餌とする。成虫の出現時期は5月から10月。
 
 たくさんの巣

 記:ガジ丸 2010.3.23 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


アカアシハラナガツチバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 1ページ捲る手間

 沖縄のテキトーなオジサンが書いた記事を、有難いことに読んでくださる方がいて、さらに、「○○と紹介されてある写真は△△の間違いではありませんか。」と指摘くださる方もいる。これは本当に有難いことだと思っている。知識が正しくなるのだから。
 そういう指摘はいくつもあり、大変有難いとは思っているが、まだ訂正していないものも4つ5つある。中には指摘されてから2年以上経っているのもある。何故訂正しないかと言うと、指摘された△△について、手持ちの文献、あるいは近くの石嶺図書館に資料が無く、確認できないから、そして、資料が無いと記事が書けないからである。

 三年前(2007年4月)にハチの写真を撮った。図鑑に似たようなハチがあった。ヒメハラナガツチバチ、「これだ!」と私は断定した。先日、これの記事を書こうと思い、念のために(テキトーなオジサンもテキトーを多少反省しているので)とネットで確認した。すると、ハラナガツチバチには数種あり、中でもハラナガツチバチ、ヒメハラナガツチバチ、キンケハラナガツチバチの3種は互いに似ていた。そして、私の写真のハチはそのどれとも少し違っていた。「どういうこと?」と沖縄のオジサンは混乱した。

  参考文献の『沖縄昆虫野外観察図鑑』のヒメハラナガツチバチを改めて見る。じっくり見ると、私の写真と文献の写真ではやはり少し違う。ところが、何気に次のページを捲ったら「ありゃ!?」となった。そこにはアカアシハラナガツチバチがあった。
 「体のほとんどが黄褐色の毛で覆われ、」と文献にある。私の写真のハチも「黄褐色の毛で覆われ」ている。「そうか、お前だったのか。」と私は思いつつ、もう1ページ捲る手間を省いたことを反省した。オジサンの反省はテキトーだけでなかったのだ。

 
 アカアシハラナガツチバチ(赤脚腹長土蜂):膜翅目の昆虫
 ツチバチ科 本州~沖縄諸島、八重山諸島に分布 方言名:ハチャ
 ツチバチが広辞苑にある。土蜂という字で、ツチバチ科のハチの総称とのこと。名前の由来は特に記されていないが、「土中のコガネムシの幼虫の体表に産卵し、」ということから土蜂なのであろう。ハラナガは腹部が長いことからであろう。アカアシは脚が赤いからであろう。腹が長いのも脚が赤いのも、見て、判る。
 体長は雌23ミリ内外、雄21ミリ内外。腹が長い、脚が赤いの他に、赤黄褐色の毛が体に密生しているのも特徴。それで私は写真のものを本種と判断した。
 「土中のコガネムシの幼虫の体表に産卵し」はツチバチ全般の説明だが、本種もそうするとのこと。生まれた幼虫はそのまま寄生する。成虫の出現は3~12月。
 
 雄

 記:ガジ丸 2010.3.22 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


アシナガキアリ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 人に迷惑をかけない働き者

 私は、日本国民の中では間違いなく貧乏人(世界的に見れば金持ち)であるが、多趣味である。・・・貧乏人だが多趣味という言い方が正しいかどうか、今ふと考えた。
 趣味の多くはお金を必要とする。そして、趣味にはそれを行う時間が必要である。一般的には「貧乏暇無し」なので、貧乏人は趣味を持ちにくい。よって、「貧乏人”だが”多趣味である」の”だが”は正しい。むろん、その趣味の種類は限られているが。
 絵を描く、文章を書く、写真を撮る、畑で野菜を作る、散歩する、などが数年前、または十年前位からの私の趣味で、今も続いている。それらのいずれも暇は必要だが、お金はあまりかからない。貧乏人の全ては金がかかる趣味は持てない。向上心(金持ちになりたいという)のある貧乏人は暇も無いので趣味を持てない。私は貧乏人だが多趣味である。つまり私は、向上心が無くて、暇のある貧乏人なのである。

  貧乏暇無しという言葉がアリにもあてはまるのかどうか不明だが、アシナガキアリが貧乏なのかどうかも不明なのだが、彼らはよく働く。種族繁栄のために働いて、その目的が果たされているのであれば、彼らは、気分的には裕福なのかもしれない。
 アシナガキアリに趣味があるのかどうかも不明だが、少なくとも、今週別項で紹介しているイエヒメアリのように、人の皮膚を噛むなんて迷惑な趣味は持っていない。

 現場仕事の日は、道端で昼飯を食う機会が多い。地べたに座って弁当箱を広げる。ちょいと気をつけて地べたを見ると、アシナガキアリを発見する。「やあ、君たちも頑張ってるね。」と私は思い、ご飯粒を少々落としたりしている。

 
 アシナガキアリ(脚長き蟻):膜翅目の昆虫
 アリ科 琉球列島、台湾、東南アジア、ニューギニアに分布 方言名:アイ、アイコー
 脚が長いのでアシナガキアリ(脚長き蟻)という名前。アメイロハヤアリという別名もある。これは、体が飴色をしていて歩く速さが速いことから。
 体長は働きアリ3ミリ内外。名前の通り脚の長いのが特徴であるが、もう一つ、触角も長い。後脚は体長の1.5倍あり、触角は体長とほぼ同じ長さとなっている。
 家の中で見ることもたまにあるが、ほとんどは屋外で見る。草地、畑地、林地などどこにでもいて、屋外では最も多く見かけるアリとなっている。
 人を噛むことは無い。いつも早足で働いている。ということで、私はこのアリに愛情さえ覚える。けして殺したりはしない。餌をあげたくなるくらいである。
 
 アシナガキアリ女王
 
 アシナガキアリ比較
 
 アシナガキアリの巣

 記:ガジ丸 2007.7.27 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行


イエヒメアリ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 蟻の這い出る隙

 私は東京で5年間生活した経験がある。その5年間で、「春が来た、春が来た、どこに来た。」とか、「春よ来い、早く来い。」などと歌われるような春が来た喜びや、春を待ち望む気持ちがよーく解るようになった。
 それまで、私は暑さに弱い体質だと思っていたが、それは沖縄に住んでいる限りのことであった。私は、ホントは寒さに弱い体質なのであった。東京の冬を、6回目も経験するほどの根性は無かった。何しろ、死ぬほど暑いといっても、じっとしていて死ぬことは滅多に無い。死ぬほど寒いといってじっとしていると、死ぬ。
 沖縄に帰ってからは、7、8、9月の三ヶ月、じっと我慢して過ごすことが続いたが、東京の冬をじっと我慢するよりは楽である、と感じている。沖縄の冬は、時々「ひぇー寒い」と感じる日があるが、それでも10度切るか切らないかの気温なので、屁みたいなものである。しかも、そんな日が1週間も2週間も続くことは無い。というわけで、沖縄に住んでいると春の喜びなんてものはあまり感じない。

 実は数年前から、「春は喜び」どころか、「春は嫌だなあ」と思うようになっている。春の職場が嫌になっている。「春は仕事が忙しくなるから嫌」なのでは無い。
  数年前から、職場に、それも私のデスクのすぐ傍に、サシアリが巣を作ったみたいで、デスクの周りで多数見かけるようになった。サシアリは人の皮膚を噛む。噛まれると痛痒い。イライラする。春になるとサシアリが活発に動くようになり、それに皮膚を噛まれてイライラする。よって、私は春になると嫌だなあと思うようになっている。
 目の前をうろちょろしているサシアリが、ほんの数分も経たないうちに靴下の裏側、Tシャツのお腹の辺りの内側を噛んでいる。Tシャツの布の目は、まあ、割と粗いのでアリが進入することもあろう。が、靴下の布の目は細かい。そんな細かい目からもサシアリは進入する。ごく小さいアリなのである。彼の這い出る隙間はごく小さい。

 
 イエヒメアリ(家姫蟻):膜翅目の昆虫
 アリ科ヒメアリ属 琉球列島、熱帯、亜熱帯各地に分布 方言名:アイ、サシアイ
 屋内に生息し、小さいことからイエヒメアリ(家姫蟻)という名前。ウチナーグチ(沖縄口)ではアリのことをアイ、またはアイコーと言うが、本種は人を刺す(噛む)ことからサシアイ(刺し蟻)と、特別な名前がついている。
 家の中で最も多く見かけるアリ、家の中の畳の下、壁の裏、家具と壁の隙間などに営巣する。食物を嗅ぎつけると、その巣から大量にやってくる。
 参考にしている『沖縄昆虫野外観察図鑑』には本種の紹介は無かった。同属のフタイロヒメアリはあって、その紹介文の中に、仲間として本種の名前があった。フタイロヒメアリの体長は2ミリと記載されているが、イエヒメアリの体長については書かれていない。私の経験では2ミリの長さは無い。1ミリから1ミリちょっとくらい。
 上述の通り、人の皮膚を噛む。皮膚を食べているのかもしれない。痛痒いのでとても気になる。イライラしてくるほど。このアリを見つけた際は、できるだけ殺している。

 記:ガジ丸 2007.7.15 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行


フタモンアシナガバチ/ヤマトアシナガバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 違いの判るオジサン

 全国的(あるいは世界的)にそうだと思うが、今年の冬の気候はまったくの不順。2月とは思えない暖かい日が続いたと思ったら、3月とは思えない寒い日がある。窓の外、トベラの木は、花が満開に近い状態にあるが、その花を訪れる虫の数が今年は少ない。去年の同じ時期は、クマバチ、ミツバチが乱舞していた。モンシロチョウの姿もあった。が、今は、チョウもハチもいない。メジロが2、3羽いるくらい。
 虫たちも悩んでいるのだろう。3月初旬の暖かい日、ミツバチを何匹か見た。そのミツバチたちも「あれ、春だと思ったのに、早まったかな?もう少し、巣の中で大人しくしておこう。」と思ったのかもしれない。天候不順には虫も困るのだ。

  ハチの類は、クマバチ、ミツバチの他、キアシナガバチ、キゴシジガバチなどが私の住まいの周りでよく見かける。これらはもう覚えた。散歩の途中などで見かけたハチ、2年ほど前までは近所のハチと同じものと思って、写真も撮らなかったが、私もなかなか、違いの判るオジサンになっていて、「おや、これは違うぞ。」と写真を撮る。撮った写真と図鑑を見比べる。今まで知らなかったハチと判る。「へっ、へっ、へっ、やはりな。」と一人静かにほくそ笑む。物知り爺さんになるという願いが、叶いそうな気になる。

 今回紹介するのはアシナガバチと名の付く2種類のハチ。ヤマトアシナガバチとフタモンアシナガバチ。いずれも属名がPollistesとなっている。
 ヤマトアシナガバチPollistes japonicus
 フタモンアシナガバチPollistes chinensis
ヤマトアシナガバチは日本の、フタモンアシナガバチは中国の、みたいである。

 
 フタモンアシナガバチ(二紋足長蜂):膜翅目の昆虫
 スズメバチ科 北海道以南、沖縄島、朝鮮に分布 方言名:ハチャ
 アシナガバチ(脚長蜂)は「スズメバチ科のハチの一群」で、「脚が比較的長い」(広辞苑)ところからその名がある。本種は「第2腹節背板には顕著な2個の円紋があり」(沖縄昆虫野外観察図鑑)ところからフタモンと付く。昆虫について学問したことが無く、その体の仕組みを私は詳しく知らないが、第2腹節背板は腰の辺りということ。
 「潅木林や山麓で見られるが個体数は多くない」とあったが、私は、与那原の海岸近くで群れているのを見た。プレハブ小屋の周辺を何十匹と飛んでいた。小屋の近くには雑草の生い茂った場所があったが、その辺りに巣があったのかもしれない。
 体長は16ミリ内外。成虫の出現は5月から11月。私が見たのは11月。
 
 吸蜜
 
 顔

 
 ヤマトアシナガバチ(大和足長蜂):膜翅目の昆虫
 スズメバチ科 琉球列島、台湾に分布 方言名:ハチャ
  アシナガバチ(脚長蜂)は「スズメバチ科のハチの一群」で、「脚が比較的長い」(広辞苑)ところからその名がある。本種は日本産であるところからヤマト (大和)が付くものと思われる。写真のものはその沖縄亜種。亜種は他に先島(宮古、八重山など)と台湾に分布するタイワンアシナガバチがいる。沖縄亜種と 先島亜種とでは見た目に大きな違いがあるとのこと。文献に写真が無いので、どのくらい違うかは不明。
 民家の軒先や木の枝に営巣するとのこと。アシナガバチはハスの実のような巣を作る。私が見たのは職場の庭。職場には樹木が多くあるので、樹木の生い茂っ た中を探せば、ハスの実のような巣が発見できるかもしれない。本種は攻撃性が弱いようで、巣に触れない限り攻撃はしないそうである。
 体長は18ミリ内外。成虫の出現は周年。鱗翅目の幼虫を食べる。

 記:ガジ丸 2007.3.17 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行