ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

オオフタオビドロバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 昆虫採集の必要

 自分で撮った写真と図鑑の写真を見比べて、これはどれであるかを判断する作業で、私は苦労している。私は元々、外見の細かな違いを判別することを苦手としている。であるのに虫たちは見た目似たようなものが多い。亜種があり、雄雌で違い、個体変異もある。写真だけでは、これだ!と判断することのできない場合も多い。
 図鑑には虫の細かな特徴の説明もある。その説明を読みながら、手元に実物を置いて、上から下から、右から左から、前から後ろから虫眼鏡でじっくり観察すれば、これだ!と判断することもいくらかはやりやすくなるだろうなと思う。
 小学生の時、夏休みの宿題で昆虫採集をやるクラスメートが何人かいた。箱の中にいろいろな昆虫を虫ピンで刺して、それぞれに名札を貼ったものである。昆虫に興味の無かった私は、「何が面白いの?そんなことやる必要がどこにあるの?」と思うだけで、私自身は、そういうことをやろうなどとこれっぽっちも思わなかった。以来、オジサンになった今に至るまで、これっぽっちも思わないままであった。だけど最近やっと、上記のようなわけで、昆虫採集の必要が解ったのである。・・・でも、やらないけどね。

  似たような外見をしたハチの写真が7、8枚ある。『沖縄昆虫野外観察図鑑』の第3巻にナンブオオドロバチがあって、それと似ている。似ているがちょっと違う。説明文を読むと、沖縄島には亜種のムロタオオドロバチが生息しているという。ムロタオオドロバチの写真は載っていないが、「沖縄で普通に産するドロバチ」と説明があるので、私の写真のハチはこれであろうと一旦は決める。ところが後日、『沖縄昆虫野外観察図鑑』第7巻を見ると、オオフタオビドロバチというのがあって、私の写真のハチはナンブオオドロバチよりこれに似ている。オオフタオビドロバチの説明には「沖縄にもっとも多く見られるドロバチ」とある。というわけで、私の写真のハチはオオフタオビドロバチということにした。が、ナンブオオドロバチとオオフタオビドロバチ、どこがどうちがうのか、両者の写真をマジマジと見比べても、私にはその違いを説明できない。

 
 オオフタオビドロバチ(大二帯泥蜂):膜翅目の昆虫
 ドロバチ科 沖縄、瀬底、宮古、石垣、西表、与那国の各島に分布 方言名:ハチャ
 腹部に橙黄色あるいは黄色の斑紋がある。斑紋は腹部を巻くようにしてあるので帯、それが2本あるので二帯、で、フタオビと付く。
 ドロバチの仲間では沖縄で最も多く見かけるとのことだが、私にはどれがハチで、どれがアナバチで、どれがドロバチなのか判別できない。多く見かけるハチはミツバチであることは判るが、本種が「多く見かけるドロバチ」かどうかはよく判らない。建物の周りにある竹筒や、他のハチ類の旧い坑道にも巣を作るとのこと。
 体長20ミリ内外。成虫の出現は5~11月。幼虫の餌は鱗翅目の幼虫。
 
 顔
 
 巣

 ナンブオオドロバチ(南部大泥蜂):膜翅目の昆虫
 ドロバチ科 八重山諸島に分布 方言名:ハチャ(ハチの総称)
 ナンブオオドロバチは八重山諸島の特有種で、沖縄諸島で見るのはその亜種のムロタオオドロバチとのこと。黒と黄~橙色の横縞模様が目立ち、よく見かけるハチとのこと。
 成虫の体長は20ミリ内外。出現は5~11月。食物は鱗翅目(チョウ、ガ)の幼虫。
 亜種は他にフカイオオドロバチがあり、日本、中国、朝鮮に分布する。ムロタオオドロバチはトカラ列島から沖縄に分布する。

 記:ガジ丸 2007.2.17 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行


クロアナバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 二つあるといいね

 保険会社か何かのコマーシャルで「二つあるといいね」というコピーの出てくるものがある。ネズミがネコに追いかけられて巣の中に入る。その巣の入口でネコが待ち伏せしている。だけど、出入口はもう一箇所あり、ネズミはそこから出て行く。出入口も「二つあるといいね」ということを示唆している、そんなコマーシャル。
 アナバチとはアナバチ科の総称で、地中に穴を掘って営巣するところからその名があるが、今回紹介するクロアナバチもその一種。地中に穴を掘り営巣する。クロアナバチはコマーシャルのネズミよりもさらに上をいき、出入口を三つ作るそうである。ただし、ネズミの巣とは違い、使える出入口は一つだけ。残りの二つは偽物。

  クロアナバチの幼虫や卵を好物とする他の昆虫、あるいは小動物が、クロアナバチの成虫が地面から飛んでいくのを偶然発見する。「やったぜ、あそこに巣があるに違いない」と喜びつつ、その場所へ行き、穴を見つけ、中を覗く。だけど、そこには何も無い。「ちぇっ」と舌打ちする。顔を上げると近くにもう一つの穴がある。今度こそと思って、その穴を覗くが、しかし、そこにも何も無い。「ちぇっ」と再び舌打し、回りを見渡すが、三つ目の穴は無い。「何だ、くたびれ損かよー」と呟きつつ、その場を去る。
 クロアナバチは、「本物の巣の入口」を「働きに出る場合はこの穴を塞いでおく習性がある。」とのこと。なかなか賢い。クロアナバチの幼虫や卵を好物とする他の昆虫、あるいは小動物は、「いやいや、近くに本物がきっとあるはず」などと粘り強く探すほどの根性は無いのかもしれない。あるいは、期待して穴を覗いて2回もがっかりしたら、気持ちが萎えるのかもしれない。ダミーの穴も、「二つあるといいね」というわけだ。

 
 クロアナバチ(黒穴蜂):膜翅目の昆虫
 アナバチ科 日本、南西諸島、台湾、フィリピンに分布 方言名:ハチャ
 地中に坑道を掘って営巣するところからアナバチという科があり、本種は体全体が黒色のアナバチなのでクロアナバチという名前。
 直翅目のキリギリス科の昆虫を捕らえて巣の中に入れ、これに産卵し、孵化後はそれがそのまま幼虫の食料となる。『沖縄昆虫野外観察図鑑』によれば、「穴を3本掘る。中央の穴が本物の巣の入口。働きに出る場合はこの穴を塞いでおく習性がある。」とのこと。その様子を見てみたいものだが、まだ発見できていない。
 体長25~31ミリ。体は大きくて、黒くて、艶があるのでよく目立つ。職場や家の周りでよく見かける。近付くと逃げるのでなかなか写真が撮れなかったが、一昨年の八重山旅行の際、竹富島で近くから撮れた。成虫の出現は5~10月。
 
 顔

 記:ガジ丸 2007.1.20 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行


オキナワチビアシナガバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 チビクス(尻糞)

 私がトンボ公園と仮称している沖縄市泡瀬の公園には、ちょっとした池がある。そのお陰でトンボが多く住んでいるのである。
 ある日、その池の傍で昼食をとっていた私は、弁当を食い終わって、何かトンボ以外に面白い虫はいないかと辺りを見渡した。・・・いた。小さなハチがいた。小さいがきれいな色模様をしている。オキナワチビアシナガバチであった。

  チビとは私もよく使う言葉だが、改めて考えるとその由来が解らない。小さい尾、小さい美、小さい微などと考える。どれもしっくりこない。ウチナーグチ(沖縄口)でチビというと尻のことを指す。つまり、ビリッケツのケツということで、チビとは、問題にならないような小さなものという意味なのかもしれない。ちなみに、ウチナーグチでは人を罵るときにチビクスと言ったりする。尻糞ということである。ひどい言葉だ。私は父親に何度も言われている。我が子のことを尻糞と言うなんて、まったくひどい親だが、沖縄の普通の家庭ではよくあること。私の家は上品な家庭では無かったということ。

  オキナワチビアシナガバチ、その動きから、近づいても刺されるという不安を持たなかった。草の上を移動していく1匹を接写するため、中腰になったままずっと追いかけていく。しばらくすると、しだいにその数が増えていくのに気付いた。近くに巣があるんだなと推測する。見上げる。すぐ傍に、ガマの葉に付着した20センチほどの長さの巣があった。たくさんのオキナワチビアシナガバチがそこにいた。どれほど近づけば攻撃対象になるのか不明であるが、私はその時、1mほどの距離にいた。素早く離れる。
 方言ではハチの類をハチャと総称しているが、ススキやチガヤの茂ったところに生息するところから本種にはガヤバジと特別に名前がついている。草刈の際によく刺されるらしい。この”よく”ということが、本種に特別の名を与える理由となったのだと思われる。若い頃、測量のバイトをしている時にハチに刺された経験があるが、そのハチ、これまで私はミツバチだと思っていたが、本種だったかもしれない。

 
 オキナワチビアシナガバチ(沖縄ちび脚長蜂):膜翅目の昆虫
 スズメバチ科 南西諸島、台湾、東南アジアなどに分布 方言名:ガヤバジ
 脚が長くて、小さくて、沖縄に生息していることからオキナワチビアシナガバチという名前。「ちび」とは「からだの小さいこと。そういう人。」(広辞苑)であるが、ちびを表す漢字が無い。語源が気になる。いつか調べよう。
 方言ではハチをひっくるめてハチャと総称しているが、本種にはガヤバジと特別に名前がついている。ガヤとはチガヤのこと。ススキやチガヤの茂ったところに生息するところからその名があるようだ。おそらく、ハチの種類(蜂だけでなく他の昆虫も)それぞれに名前があるかもしれないが、それらのほとんどが一部地域に限られたものなので、沖縄語辞典にも載らないのだろう。ガヤバジも沖縄語辞典には無かった。
 その名の通り、体長10ミリ内外と小さい。成虫の出現時期は周年。「ススキやチガヤの茂ったところに生息する」だけでなく、そこに巣を作る。食物は鱗翅目の幼虫。
 
 顔
 
 巣

 記:ガジ丸 2007.1.13 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行


アオスジコシブトハナバチ/オキナワツヤハナバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 腰が太く花が好き

 写真が溜まっている。HP用の文章、写真は1つのUSBフラッシュメモリーで管理していて、家でも、職場でも、友人の店でも、どのパソコンでも追加、削除、加筆などができるようにしてある。フラッシュメモリーの容量は512メガ。文章のメモリーはたいしたことない。問題は写真なのであるが、写真についても、HPでアップした写真はその都度、パソコン(家の)のハードディスクに移動して、最初の頃はその512メガで十分余裕があったのである。しかし、撮る写真の量がアップする写真の量より常に多く、したがって、未発表の写真がどんどん溜まっていく。もうすぐ満杯になる。

 未発表の写真は、その名前が判明しているものだけでも、植物が約160枚、動物は200枚ほどになる。不明のものは植物が200枚、動物が100枚ほどとなっている。不明のものはいいとして、判っているものはどんどん出してしまおうと決めた。特に200枚もある動物の写真、季節が来たらとかなんて考えずに、どんどん出す。
 で、先ず、虻蜂蝿蚊の類から。

 アオスジコシブトハナバチは2005年の8月に、既に写真を撮ってある。その後、2006年の9月と11月にも撮ってある。職場の庭でよく見かける虫なのである。オキナワツヤハナバチも、不鮮明だったので削除したが2005年には撮ってあった。これもよく見る虫で、その後、2006年の3月と8月に鮮明な写真が撮れている。
 この2種は同じコシブトハナバチ科(オキナワツヤハナバチをミツバチ科としている文献もある)の昆虫。その名の通り、腰が太くて花が好きなハチの仲間。

 
 アオスジコシブトハナバチ(青筋腰太花蜂):膜翅目の昆虫
 コシブトハナバチ科 南西諸島に分布 方言名:なし
 体に青い筋があるのでアオスジ。ハナバチは下記の通り。コシブト(腰太)は腰が太いハチの一群をコシブトハナバチ科としており、クマバチもこの仲間。
 南西諸島で普通に見られるが、先島諸島、沖縄諸島、奄美諸島でそれぞれ亜種に分かれているとのこと。腹にある青緑色の筋は金属光沢があり、背には赤褐色の毛がある。ノボタン、シマアザミなどの花に訪れる。
 成虫の体長は14ミリ内外。出現は4月から12月。

 
 オキナワツヤハナバチ(沖縄艶花蜂):膜翅目の昆虫
 コシブトハナバチ科 琉球列島に分布 方言名:なし
 分布が琉球列島とだけあり、学名にokinawanaとあるところから沖縄の固有種なのであろう。よって、オキナワ。体に光沢があるので艶とつく。ハナバチ(花蜂)は「幼虫の食物として花粉と花蜜を集めるもの」(広辞苑)のハチの一群ということ。
 枯れたススキの茎に巣を作って、卵を産み、幼虫を育てなどして、年に4世代を繰り返すそうである。4世代の成虫がその折々に飛んでいるので、姿を見る機会は多い。花粉と花蜜を集めるため訪花する。センダングサの花などでよく見かける。
 成虫の体長8ミリ内外。出現は3月から12月。
 
 上から

 記:ガジ丸 2007.1.13 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行


クロスジスズバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 自由な世界へ

  9月のある日、網に囲まれた中にどうやって入ったのか知らないが、一匹のハチがベランダにいて、網の外に出ようと必死こいているのを見た。ガジ丸HPを初めて以来、虫にも優しくなっている私は、写真を撮った後、自由な世界へと逃がしてあげた。
     

 それから1ヶ月ほど過ぎた10月のある日のこと、社長に頼まれていた仕事を仕上げ、その書類を提出した後、外へ出る。パソコンとにらめっこして疲れた脳と目を休めるために、青空を眺めながらストレッチをやる。その時、目の前を見たことの無い蝶が飛んで行った。そして、数メートル先の軒の上に止まった。すぐにストレッチを止め、カメラを取りに事務所へ入り、再び外へ出ようとしたら、電話中の社長に呼び止められた。その場で待っている。しかし、電話は長かった。10分はゆうに過ぎてからやっと、話ができる。さっき手渡した書類の細かい説明をする。それでさらに10分ほどが過ぎる。
  その後すぐに外に出、蝶の止まった辺りを見た。やはりというか、蝶は消えていた。社長の、電話中のあの10分を残念に思いつつ、途中だったストレッチを続ける。するとまた目の前を、今度は目立つ色をしたハチが飛んでいった。ハチは職場の花壇にあるハギの花に止まった。そこにはもう一匹、同じ種類のハチがいた。

 それらは、よく見ると、前にベランダにいたのと同じ種類のハチ。自由な世界を飛んでいると、友達にも出会うようである。「良かったね」と私は心から思う。ベランダのハチと職場のハチが同じ固体であったかどうかは不明だが、とにかく、自由というのは動物にとっても、人間にとっても良いことなのである。何者かに支配されることを恐れる私は、自由に飛び回るハチを見て何だか幸せな気分になるのであった。

 
 クロスジスズバチ(黒筋鈴蜂):膜翅目の昆虫
 ドロバチ科 本州、沖縄、東南アジアなどに分布 方言名:ハチャ(ハチの総称)
 腰の部分が細長いので、見た目はキゴシジガバチの親戚かと思う。しかし、キゴシジガバチはアナバチ科で、本種はドロバチ科。と書きながら、アナバチとドロバチ、何がどう違うのか私には不明。まあ、学問的にはキッパリとした違いがあるのだろう。
 壁に泥を塗り固めて巣を作るところもキゴシジガバチに似ている。ただし、キゴシジガバチの巣は横長だが、こちらは縦長の壷形をしているという違いがある。もう1つ、キゴシジガバチの幼虫の餌はクモ類だが、本種は蝶や蛾の幼虫という違いがある。
 赤、黄、黒の縞模様で、形も独特なので虫に興味を持っていればすぐにそれと判断できる。私もベランダにいるのを見つけて、さすがに名前までは出てこなかったが、図鑑で見た覚えのあるハチだぞと気付く。図鑑を開いた。すぐに正体が判明した。
 体長20ミリ。成虫の出現は4~11月。食物は鱗翅目(チョウ、ガ)の幼虫。
 
 横から
 
 巣作り

 記:ガジ丸 2005.10.25 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行