ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ルリジガバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 使いまわ巣

 職場の事務所に社員は裏口から入る。裏口の手前、外側になるが、ベニヤ板で簡単に作った靴箱がある。その靴箱、幅は1mほど、高さも1mほどあって、棚は4段になっている。棚の一番下の段が私の靴の置き場所。通勤用の靴、室内用のスリッパ、外履き用のサンダルなどが、代わる代わるそこに収められている。

 事務所内は禁煙なので、タバコは外で吸う。外に出るたびに、スリッパとサンダルを履き替える。履き替えるとき私は屈んだりはしない。立ったままで履き替える。今年の梅雨時頃からだったか、外に出ようとして靴箱にサンダルを蹴り入れた時、一匹の黒いハチのようなものが、靴箱の一番下の段から飛び立って行くのを見るようになった。最初は気にも留めなかったが、あまり頻繁なので、数日後、屈んで、下の段を覗いてみた。
 泥を塗り固めて作った巣がそこにあった。少し離れて、しばらく、けして辛抱強くない私だが、屈んだまま5分ほどじっとしていた。すると、巣の主がやってきた。黒いハチ。そっと近付いて写真を撮る。よく見るとそのハチ、その10日前に外で撮ったものと同じハチ。まだ何者であるかを調べていないハチ。泥の巣というヒントで、調べる。

  建物の雨の当たらない壁などに、泥で巣を作るハチがいた。キゴシジガバチ。写真のハチと形も似ている。色は違うが、腰の黄色くない変種のキゴシジガバチであろうと判断した。が、その一週間後、キゴシジガバチを発見。これは確かに腰が黄色い。ならばと、改めて黒っぽいハチを調べる、ルリジガバチという種のハチがいた。
 ルリジガバチが泥で巣を作るなんてこと、文献には書かれていなかった。ただ、既存孔を利用するとあったので、おそらく、キゴシジガバチが作った巣を、ルリジガバチが再利用しているのであろう。ルリジガバチ、「使いまわ巣」が得意なようである。

 
 ルリジガバチ(瑠璃似我蜂):膜翅目の昆虫
 アナバチ科 本州以南、南西諸島、東南アジアなどに分布 方言名:ハチャ
 名前の由来、ジガバチのジガは広辞苑にあり、「獲物を穴に入れる時、翅をじいじい鳴らすので、古人が「じがじが(似我似我)」と言って青虫を埋めると蜂になって出てくるものと思い、この名がついたという。」とのこと。本種は青味がかった色をしているのでルリと名がつく。全体が金属のような光沢を持っている。
 キゴシジガバチ同様、腰の部分は糸のように細長い形をしているが、キゴシジガバチは真っ直ぐで、ルリジガバチは湾曲しているという違いがある。
 さて、写真のものがルリジガバチかどうかについては少々不安がある。文献では体長18~20ミリとあったが、写真のものは25ミリくらいあったような。また、「竹筒などの地上既存孔に営巣する」ともあったが、写真はキゴシジガバチのように壁に泥を塗って作った巣。ただ、大きさについては手に持って計ったわけでは無いので、私の感覚の間違いかも知れず、巣は、「既存孔」であれば、キゴシジガバチの巣を乗っ取ったということも考えられる。さらには、ルリジガバチは巣の蓋に鳥の糞の白い部分を使用するのが特徴とある。写真の巣、ところどころ真っ白いまだら模様がある。おそらくそれらが鳥の糞でできた蓋であろう。よって、写真のものはルリジガバチということにした。
 体長18~20ミリ。幼虫の餌は蜘蛛類で、成虫は蜘蛛を狩る。
 
 巣作り
 
 上から2014
 
 横から2014

 記:ガジ丸 2005.10.11 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


キゴシジガバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 くびれたウエスト

 友人のYは学生の頃、シンガーソングライターであった。彼の作った歌に、題は忘れたが、「突き出た胸に、くびれたウエスト」と始まる歌がある。そう歌われるモデルがクラスにいた。いかにも女の魅力たっぷりの体つきをした女子であった。当時、フェロモンなんて言葉は知らなかったが、今から思えばフェロモン100%の女だった。
 その女と、私は付き合いかけたことがある。「いかん、田舎モノで、淡白な俺にはとてもこの女に太刀打ちできない。いかん、止まれ、不幸への道だぞ」と思いつつも、彼女のフェロモンに圧倒され、田舎モノのボーヤはズンズンと引き込まれ、深みに足を踏み入れかけたのである。しかし、危ういところで、別の友人の愛情ある、的確な助言で何とか踏みとどまることができた。傷は浅めで済んだ。
 ゼミコン(ゼミのコンパ)の二次会だったかで、彼女とチークを踊る機会があった。彼女は、その魅力的な突き出た胸を惜しげも無く私に押し付けてくる。田舎モノはもうそれだけでドギマギする。鼻息が荒くならないよう、コカンが熱くならないよう、一所懸命違うことを考える。そうやって少し冷静になると、くびれたウエストに回した腕の感触から「なんだ、たいしたこたぁねぇぞ。Yが言うほどくびれてはいねぇぞ。」ということにも気付いたりした。彼女は中肉中背でグラマーな体つき。胸や尻が大きくて、その割にウエストがくびれて見えたのだが、「細い」とまでは言えるものでは無かった。
 
 虫の写真を撮るようになって、いろいろな発見をするようになった。今まで虫に興味を持っていなかった分、驚きの発見も多い。別項で紹介するルリジガバチやクロスジスズバチもそうだが、キゴシジガバチを初めて見た時は、その腰の細さに驚いたのである。これこそが究極の「くびれたウエスト」だ。Yも、これを見れば驚くに違いない。しかし、その針よりも細い腰から、いったいどうやって食い物が口から尻に抜けるんだろう。

 
 キゴシジガバチ(黄腰似我蜂):膜翅目の昆虫
 アナバチ科 本州、沖縄、東南アジアなどに分布 方言名:ハチャ(ハチの総称)
 胸の部分とお尻の部分が細い棒でつながっているような形はルリジガバチと似る。本種はその細い腰の部分が黄色いのでキゴシ(黄腰)となる。体全体は黒、腰と足、胸の一部が黄色。アナバチ科ならキゴシアナバチという名で良かろうと思うが、広辞苑によると、「獲物を穴に入れる時、翅をじいじい鳴らすので、古人が「じがじが(似我似我)」と言って青虫を埋めると蜂になって出てくるものと思い、この名がついたという。」とある。
 雨の当たらない場所、建物の壁などに泥を塗りつけて巣を作る。本種の食物は青虫では無く、クモ。クモを捕まえて巣に運び、巣の中の幼虫はそのクモを食べるとのこと。
 成虫の体長は20~28ミリ。出現時期は3~11月。
 
 横から

 記:ガジ丸 2005.10.10 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


キアシナガバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 ハチの経験はイチ

 『ふる里の動物たち』によると、キアシナガバチは「蝶、蛾の幼虫を狩る」とある。その現場を私は偶然目撃した。何の幼虫かは知らないが、キアシナガバチが幼虫を襲った瞬間を見た。その瞬間を見たが、写真は間に合わなかった。次のシーンは幼虫が即死して、内臓が飛び出たところ、そこから撮影する。キアシナガバチは幼虫を咥えながらしきりに動いている。何をするつもりなのかとずっと観察する。しばらくすると、自分より大きな体をした幼虫をキアシナガバチは噛み切った。噛み切った部分を咥えて飛び去った。おそらく、それを巣に運んで、自分たちの幼虫のための餌にするのであろう。
  キアシナガバチの毒とは一撃即死の毒なのである。さすがスズメバチ科のハチなのである。人を攻撃することもあり、刺されたらとても痛いらしい。同じスズメバチ科のコガタスズメバチもまた刺されるとすごく痛いらしい。どちらも職場にいっぱいいて、おそらく巣もあって、私の至近距離を飛んだりするが、まだ刺されたことは無い。

 私のハチの経験はイチ。20年ほど前、測量のバイトをしているとき、野原でうっかりミツバチの巣に触れて、手の甲を一箇所刺された。痛かったが、我慢の範囲内であった。私はマゾっけがあり、痛さには強い方である。でも、スズメバチには刺されたくない。

 
 キアシナガバチ(黄脚長蜂):膜翅目の昆虫
 スズメバチ科 沖縄諸島に分布 方言名:ハチャー、アカパジ
 沖縄の方言で、ハチのことを総称してハチャーというが、『沖縄昆虫野外観察図鑑』によると、キアシナガバチだけは特にアカパジという方言名が記載されている。赤恥ということでは無く、パジはハチャーの変化したもので、赤いハチということであろう。体の一部に赤い部分がある。和名のキアシナガバチは解り易い。その通り脚が黄色で長い。
 体長20~26ミリ。成虫の出現時期は周年。民家の庭や、周辺の林地などの樹木に巣を作る。ハスの実のような形の巣、私も何度か見かけたことがある。
 活動は活発で、首里にある私の家、職場の周辺では最もよく見るハチである。私は刺されたことは無いが、攻撃も素早いとのこと。
 面白い習性を偶然発見した。職場に木材で作ったドラゴンフルーツのための支柱があるが、その支柱を一匹のキアシナガバチが齧っている。何しているんだろうととりあえず写真を撮る。調べる。齧り取った木屑を唾液でこね、巣の材料にするとのことである。 
 
 横から

 追記(2005.10.4)
 職場の庭の、キアシナガバチが群れている同じ場所で、一回り大きな、似たような外見のハチを発見した。図鑑の写真を見るとキアシナガバチの八重山亜種に似ている。八重山ではないのに八重山亜種がいるとは考えにくいが、一応、写真と共に報告。
 
 体長は30ミリ近くありそうであった。

     キアシナガバチの狩り
     
     
     
     
         

 記:ガジ丸 2005.8.14 →沖縄の動物目次
 2014.7.5訂正加筆

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


クマバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 食足りて喧嘩せず

 先月、大家の庭にあるトベラの花が満開になった。トベラは私の部屋のベランダのすぐ傍にあり、ベッドに寝ている私の頭からは2mも離れていない。窓を開けるとトベラの花の甘い匂いが漂ってくる。甘い匂いは甘い夢を見させてくれる。現実は女っ気の無い生活だが、トベラのお陰で、夢の中はハーレムの世界となる。
  満開のトベラの写真を撮っておこうと思い、晴れた日の朝、デジカメを持ってベランダに出た。写真を撮っている最中にブンブンうるさく周りを飛び回るものがいた。蜂。十匹以上のミツバチと数匹のクマバチがいた。クマバチもミツバチも仲良く、同じ木の花の蜜を吸いに来ていたのだ。大家のとこのトベラの木は大きい。花も溢れんばかりに咲いている。蜂の十や二十、あるいは三十でも四十でも、彼らに十分な蜜を提供できる。
 食は十分に足りているので、違う種類の蜂同士でも喧嘩はしない。生きていけるという安心感さえあれば、争いごとなど無用なこと。
 「この花の蜜は俺のものだ。みんなあっちへ行け。」
 「そんな。蜜が無いと俺たち死んじゃうよ。」
 「うるさい。そんなこと知るか。」
 「だって、蜜はいっぱいあるじゃないか。一人では食い切れないだろう。分けてよ。」
 「食いきれない分も含めて俺の物だ。お前らの分は無い。」
 なんてことには、たぶんならない。
 「やあ、ミツバチさん。その辺はまだ口をつけていないですよ。」
 「ご親切にどうもありがとう。クマバチさん。」なんて具合であろう。

 一方、豊かな国で衣食足りている人々が、さらなる富を得るために争っている。彼らにはこれで十分という限度が無いらしい。中には、余りにも欲が強すぎて、その欲を満たすために他人の財産や、あるいは命までをも奪う者がいるらしい。世界には今日の食い物さえ覚束ない人々も多くいるというのに、人間とはまったく不思議なものだ。

 
 オキナワクマバチ(沖縄熊蜂)
 コシブトハナバチ科 沖縄諸島、宮古諸島などに分布 方言名:ハチャ(ハチの総称)
 名前の由来が『沖縄昆虫野外観察図鑑』にあった。「体が黒くて、一見クマを思わせることから」で、沖縄近辺の固有種なのでオキナワと付く。
 方言名、ハチのことをハチャとかハチャーとか言うが、コオロギなどと一緒で、大雑把なウチナーンチュは、ハチの呼び名を細かく分けたりしないのだろう。
 黒色の体に黒青色を帯びた半透明の翅を持つ。倭国のクマバチ(キムネクマバチ)は胸部が黄色になっているが、オキナワクマバチは全体が黒。
 5月から8月に活動が活発になり、ゴーヤー、ナーベーラー(ヘチマ)、サンニン(ゲットウ)などの花に集まる。と文献にあったが、アパートの近くに住むクマバチたちはせっかちな性格のようで、3月に活動して、トベラの花の蜜を吸っていた。巣は枯木。
 体長20ミリ内外。成虫の出現は4~10月。沖永良部島、沖縄諸島、宮古諸島の固有種とのこと。石垣島、西表島、与那国島にはアカアシセジロクマバチが生息する。
 
 巣

 
 アカアシセジロクマバチ(赤脚背白熊蜂):膜翅目の昆虫
 コシブトハナバチ科 石垣島、西表島、与那国島に分布 方言名:ハチャ
 名前の由来が『沖縄昆虫野外観察図鑑』にあり、「胸背には灰白色の長毛が密生して白色に見え、脚が赤褐色を帯びるところから」とのこと。
 沖縄にクマバチ属はオキナワクマバチと本種の2種あって、オキナワクマバチは背中が真っ黒だが、本種は背中の一部が白い毛に覆われていることで見分けられる。
 体長は25ミリ内外。成虫の出現は3~11月。成虫は花の蜜を吸う。ヘチマやクサギの花に訪れるとある。巣は枯枝の木質部。 

 
 参考写真(本土産のキムネクマバチ)

 記:ガジ丸 2005.5.27 →沖縄の動物目次
 訂正加筆:2011.5.19

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行