私の創作、あまり人気が無いのでアクセスも少なかったサイト『ユクレー島物語』は長いことお休みしている。人気が無いからお休みでは無く、話を考えたり、絵を描いたりするのに時間がかかり、畑を始めるようになってその時間が惜しくなったからだ。
『ユクレー島物語』には挿入歌なんてのもある。それも私の創作、作詞作曲編曲だ。そして、それもまた1曲完成させるには時間がかかる。話も絵も歌もアイデアはいくつもあるが、どれも仕上げる時間的余裕が無く、2010年1月29日の博士の発明『自信発生装置』という話と絵をアップして以来、ご無沙汰となってしまっている。
今年(2012年)3月、『ユクレー島物語』には関係無く歌ができた。『今のチンボーラー』という題。その少し前、宜野湾の私の畑の近くに住む平和運動家の爺様Hさん、婆様Zさんと知り合い、彼らの話を聞いている内にできたもの。
『今のチンボーラー』は、有名な沖縄民謡『海ぬチンボーラー』をもじっている。歌詞の一部を借用してもいるが、歌詞の主旨、メロディーは全く違うもの。
有名な民謡『海のチンボーラー』、軽快なメロディーで私の好きな民謡の一つ。特に嘉手苅林昌の歌い方はあっさりしていて耳に心地よい。その踊りを何度か見ていて私はてっきり舞踊曲だと思っていたが、沖縄大百科事典に記載があった。それには『海のちんぼうら』と表記され、「沖縄本島で愛唱されている酒盛歌」、「元歌は伊江島の〈前海スィンボーラ〉」、「いつのまにか遊郭でうたわれるようになり、エロチックなものに変化した。」などと説明されている。『正調琉球民謡工工四第二巻』にその歌詞がある。
海ぬチンボーラー小(グヮー) 逆なやい立てぃば
足(ヒサ)ぬ先々(サチザチ) 危なさや
チンボーラーはニシの一種、ニシとは螺と書き、「巻貝の一群の総称」(広辞苑)のこと。ほら貝の形をしていて、ごく小さな貝。
ほら貝の形を思い浮かべれば、「逆さに槍立てて」は解ると思う。「チンボーラーが逆さに槍立てて(刃が上向き)いるので、歩く先々が危ないよ」といった意味。
この後、囃子のような歌詞が続く。
支度ぬ悪っさや 側なりなり
サー 浮世(ウチユ)ぬ真ん中
ジサジサ ジッサイ 島ぬヘイヘイ ヘヘイ
沖縄語辞典を頼って訳してみると、支度の悪い(準備の遅いという意だと思われる)者は側に退かして(放っておいて)、さぁ、浮世の真ん中へ(遊郭の事だと思われる)といった意味。ジッサイは実際(まったく、ほんとうに)、ヘイは呼びかけ。
沖縄大百科事典の記事「遊郭でうたわれるようになり、エロチックなものに変化」は、2番以降から何となく匂ってきて、5番では「辻(遊郭の街)のえんどう豆を食べてみたか若者よ、食べてみたけど味は覚えていない」という歌詞となる。
さて、私の創作『今のチンボーラー』の歌詞は以下、平和運動家の影響がある。
春カジ吹ちゅるクル シマぬ道々アッチーネー
(春風の吹く頃 村の道々を歩けば)
チチジ花ぬシダカジャよ 平和でぃアンシヌフクラサよ
(ツツジ花の清々しい匂いよ 平和であることが喜ばしいよ)
[ヌンディウムイルスバから (なんて思っている側から)]
メーニチぬクトゥヤシガ ミンカーナルウカウトゥ立ててぃ
(毎日の事だけど つんぼになるほど音立てて)
金網ぬアガタから チブルぬイーウティイチムドゥイ
(金網の向こうから 頭上で行ったり来たり)
戦ぬウワティヂートゥラリ 島やアッタニアメリカユ
(戦が終わって土地を取られ 島は突然アメリカ世)
ヨーサルムンチャースバなりなり
(弱い者達は側へ退け退け)
ウチ世ぬ真ん中 街ぬ真ん中 ジサジサ実際 島ぬ塀々 へ塀
ユーガバナ咲ちゅるクル 浜にウリやいアッチーネー
(百合の花が咲く頃 浜に下りて 歩けば)
ナミカジやナダヤッサン 平和でぃアンシヌフクラサよ
(波風は穏やかである 平和であることが喜ばしいよ)
[ヌンディウムイルスバから (なんて思っている側から)]
ウミバタぬ道なりに金網張らりイリララン
(海岸の道なりに金網張られて入れない)
ナマぬチンボーラー フェンスぬミグイや危なさん
(今のチンボーラー フェンスの周りは危ない)
ヤマトゥぬユーなてぃ幾十年 ジンぬカワイに基地ヌクチ
(倭国の世になって幾十年 お金の代わりに基地を残し)
ヒンスームンチャースバなりなり
(貧乏人達は側へ退け退け)
ウチ世ぬ真ん中 街ぬ真ん中 ジサジサ実際 島ぬ塀々 へ塀
ウチナー生まりてぃナマぬユまでぃ ユぬ中ありくり変わたしが
(沖縄が誕生して今の世まで 世の中あれこれ変わったけど)
ナマンチンボーラー 逆なりなり
(今もチンボーラーは逆さならならで)
モータイ歌たい カナサンスンドー
(踊ったり歌ったり 愛することもするよ)
ジサジサ実際 島ぬ塀々 へ塀
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記:2012.8.9 ガジ丸 →沖縄の生活目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄タイムス社発行
『正調琉球民謡工工四第二巻』