サッカーワールドカップの日本の第一戦、同じ場所でテレビ観戦していた若者たちがケンカしたそうである。負けてもヘラヘラ笑っていることが気に入らないということが、その原因なんだそうである。日本チームへの思い入れが強い人からみると、負けてもヘラヘラ笑っていることが腹立ったのであろうが、日本チームへの思い入れがさほど強くない人にとってみれば、「次頑張ればいいや」とヘラヘラ笑って済むことだったのであろう。涙流して悔しがることも個人の感性、さっぱり諦めることも個人の感性。自分とは違う感性だからといって腹立てて、人を殴るなんて、まるでチンピラヤクザみたいだと思う。
いったい、日本国の人間の何割くらいが、サッカーワールドカップに興味を持っているのだろうか。テレビのニュースやワイドショーを観ていると、国民こぞってワールドカップに興味を持っていて、ジーコジャパンを応援しているような放送をしているが、私はしかし、それほど興味が無い。第一戦、家のテレビではNHKの映りが悪いということもあって、テレビ放送は観なかった。どうしても観なきゃ、という思いも無かった。
もちろん、日本チームが勝てば嬉しいと思い、負ければ残念に思う。が、元々サッカーファンでは無いので、さほどの興味は持てないというわけである。ゴルフファンでも無いのだが、ウチナーンチュなので、むしろ宮里藍の成績の方がずっと気になった。気になったのでテレビのスポーツニュースを、見たくも無い他国のサッカー試合を我慢して見続けたが、いつまでたっても宮里藍のニュースはしない。どういうこと?と思うのは私の感性で、テレビを観ている多くの人にとってはきっと、藍よりもサッカーなのであろう。
世間がワールドカップにワクワクドキドキしている中、先週火曜日から4泊5日の日程で四国を旅した。四万十を川沿いに歩いている最中、雨に降られ、その日は夜遅くまで雨が続いたが、その他は概ね晴れ、汗ばむほどの陽気であった。
私の部屋には窓側に1畳ほどのフローリングがあり、そこには食卓兼用の事務机を置いてある。土曜日、旅から帰ると、その机の下のフローリングに白いカビがたくさん生えていた。フローリングの表面の薄い板が一部めくれ上がってもいた。畳の上も湿っていて、裸足に吸い付くような感じがした。部屋全体が湿って、カビ臭かった。四国の陽気に私が浮かれている間、沖縄はずっと雨だったらしい。今年は平年の3倍の雨量らしい。
そのせいで、全国ニュースになるようなことが起きている。那覇市首里鳥堀の地滑り現場は、私の住まいからだいたい2キロのところにある。中城村の地滑り現場は、今これを書いている金曜日の職場から3、4キロのところにある。野次馬根性の希薄な私はどちらも見に行こうなどとは思わないが、避難生活を余儀なくされている人々については気の毒に思う。せめて、サッカーの試合でも観て、心を慰めて欲しいものである。
楽しくない状況にいる人々に希望を与え、情熱を沸き立たせ、楽しい思いにしてくれる力が、そう、スポーツにはあると思う。ジーコジャパンが次の試合に勝って、決勝トーナメントに進出、なんてことになれば、今苦しい状況にいる人々も「よっしゃ、俺も頑張ろう」という気持ちになるかもしれない。スポーツの力は偉いのである。それでも、私は特に興味が無い。次の試合もきっと観ない。個人の感性である。殴らないでね。
記:2006.6.16 ガジ丸