先々週だったか、小学校一年生になる男の子の母親と称する人からメールがあり、
「今年4月から沖縄に住むようになりました。・・・今、蝉の声が聞こえません。沖縄では8月に蝉は鳴かないのでしょうか?」といった内容。
それより前の8月12日、友人Hとの会話、
「最近、朝夕涼しい風が吹くよな。8月なのに珍しいことだよな。」
「そういえば、セミの声が聞こえなくなったぜ。」
「なんだろうな、もう秋ってことかな。」
「まさか、沖縄の夏は今が真っ盛りだぜ。」
沖縄気象台の記録を見ると、8月の気温、上旬は確かにここ4年で最も低いが、中旬は、あの記録的な暑さだった2003年に次いで高く、下旬は03年を超えて最も高い。蝉が秋と勘違いすることは無い。それに、秋になればなったで、クロイワツクツクが鳴くので、10月いっぱいは蝉の声が消えるということは無い。が、今年は消えた。
全く消えたわけでは無く、時々は聞こえる。しかし、その声は数が少なく、小さい。あんなにたくさんいた蝉はいったい、どこへ行ったのだろう。
Hの推理、
今年の梅雨は記録的な大雨だった。雨量も記録的だったが、降っている時間も記録的に長かった。沖縄ではそう無いことだが、地滑りも数箇所であった。その地滑りで流された蝉の幼虫の数は少ないが、沖縄のどこの地面も、降り続く雨によって土の含む水分が飽和状態になっていた。よって、蝉の幼虫たちは皆、泥沼の中に長期間閉じ込められた。蝉の幼虫たちは泳げない。つまり、体力のある者を除いて、多くの蝉の幼虫は溺死したのである。というわけで、今年の沖縄の夏には蝉が少ないのだ。
私の推理、 Hの推理が正しいとすると、幼虫の絶対数自体が少なくなり、地上に出てくる成虫の数も出初めから終わりまで、全体的にその数が少なくなるはずである。しかし、8月初めまでの蝉の数は例年通りであった。よって、彼の推理は正しくない。
「8月の中旬からは、外は○○なので出るのは止めよう」ということに、沖縄の蝉界ではなっているのだろうと私は推理する。「○○なので」の○○が何なのか確かな事は判らないが、まあ、地球温暖化とか、オゾンホールとか、大気汚染とかの地球環境悪化の何かであろう。蝉たちの多くは外に出るより、地中に留まることを選んだ。
蝉の幼虫は、樹木の根からその樹液を吸って生きている。進化した蝉たちは、羽化後も幼虫同様に根の樹液で生きられるようになった。そして、地中に棲家を作った。
記:2006.8.31 ガジ丸