ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ボウラン

2017年08月08日 | 草木:草本

 去年の7月、東京で小物屋を営みつつ、週末は女庭師として働いているTさんと一緒に焼き物で知られる読谷村座喜味を訪ねた。焼き物を仕入れるのが目的のTさんに私が付いて行ったのである。東京に住む知人に紹介されたTさん、この時が初対面であったが、女の一人庭師という生き方に興味を引かれ、すぐに親しくなった。
 焼物の里でTさんの仕入れが終わった後、仕入れ先の女将さんに紹介されて、シーサー作りで現代の名工の称号を持つ窯元を訪ねた。窯の主は新垣榮用さん。
 「まあまあ、休んで行きなさい」と言い、庭のテーブルに案内し、お茶とお菓子まで御馳走してくれた。柔和な顔をした心優しい翁であった。
 庭のテーブルの上はトタン屋根がかかっている。その屋根を支える柱の1本に私の目がいった。ランらしき花が咲いている。ランの中でも有名で、私もよく知っているカトレアに似ているが、カトレアよりはずっと小ぶり。花よりも全体の姿に特徴があり、それはカトレアとは全く似ていない。葉が無い、茎だけが何本も伸びている。
 「これ、ランだとは思いますが面白い形ですね、何というのですか?」と訊いた。新垣翁は老人とは思えぬ素早い反応で即座に、「ボーランだよ」と答えた。
 「さすが陶芸で名を成した人、頭も鋭敏なんだ」と感心しつつ、「ボーラン、棒蘭ってことだろうな、茎が棒に見えるってことだろうな」と私は推理していた。

 ボウランの方言名についてはどの文献にも記載は無かったが、新垣翁が発音した通りのボーランで良かろうと私は思い、ここでは勝手にボーランとした。
 
 ボウラン(棒欄):花壇・鉢物
 ラン科の多年草 近畿南部以南、南西諸島、台湾に分布 方言名:ボーラン
 名前の由来を明示した資料は無いが、葉が棒状なのでボウラン(棒欄)、で間違いないと思う。茎も細い円柱形で、葉鞘に覆われ茎の表面は外から見えないとのこと。
 山地に生え、日当たりの良い岩や木の幹に着生する着生ラン。茎の長さは15~40センチほど、棒状の葉は多肉質で、長さ6~12センチ、径3~4ミリ。
 茎のやや上部から短い花茎を出し、1~5個の花をつける。花は横向きで半開する。花には独特の臭気がある。基本種の色は黄緑色、唇弁には紫黒色の斑紋がある。開花期は7月から8月。園芸品種が多種あり、写真のものはその一つ。
 ちなみに学名は、Luisia teres (Thunb.) Bl.
 
 花

 記:島乃ガジ丸 2012.2.26 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行


ホウライショウ

2017年08月08日 | 草木:草本

 私が大学生の頃、父と母は家を新築した。敷地は前の家と同じで、前の家を取り壊して新しい家を建てた。新しい家は敷地いっぱいに建物が建てられた。庭が消えた。前の家には小さいながらも庭と呼べる空間があった。植物も植えられていた。
 新しい家のデザインは母がやった。母は一応私にも相談した。が、「庭は必要だ」という長男の意見は無視された。他にもいくつか意見を出したがことごとく却下された。「一応」だったのだ、母は最初から息子の意見など聞く気は無かったと思われる。
 大学を卒業して沖縄に帰って、新しい家に住むことになった。土の無い家であったが、ベランダや屋上にいくつかの鉢物があった。父の趣味である。しかしそれも数えるほどしか無い。「この家には酸素が足りない」と私は感じた。
 そんなわけで、その頃私は観葉植物に興味を持った。その類の本を読み、実際にもいろいろ買って、ベランダや屋上、自分の部屋にそれらを置いた。

 そんなわけで私は若い頃から観葉植物の名前はいろいろ知っている。ベンジャミン、パキラ、アグラオネマ、ディフェンバキア、スパティフィラム、アンスリューム、ポトスなどは購入している。ガジュマルの鉢物は自分で挿し木して作った。
 購入はしていないが、自分で作ってもいないが、モンステラという名前もよく覚えている。葉の形が独特であるのと、その名前が怪獣みたいなので記憶に刻まれた。モンステラは、今回調べて初めて判ったが、和名をホウライショウという。ホウライショウは怪獣の名前から遠い。そんな名前であったなら私の記憶には残っていなかったはず。
 
 ホウライショウ(鳳莱蕉):鉢物・装飾
 サトイモ科の半蔓性多年草 南アメリカ原産 方言名:なし
 観葉植物としてはモンステラという名で知られているが、ホウライショウという別名もある。モンステラは属名から。ホウライショウの由来については資料が無く不明。鳳は鳳凰のホウで、「聖王の世に現れるとされる想像上の瑞鳥」(広辞苑)の雄の方。莱は莱草が広辞苑にあり「荒地に生える雑草」のこと。蕉は芭蕉のショウ。それらを足して考えると、「目出度き雑草で芭蕉のような大型多年草」ということだろうか。
 ホウライショウ(モンステラ)はその属に含まれる植物の総称で、観葉植物として多く見かけ、民家の庭(沖縄では露地でも生育する)でも時折見かけるのはモンステラ・デリシオサという種。地植えでは大きく伸びてジャングルの蔓植物に見える。
 茎から太い気根を出し、他のものに絡みついて伸びる。葉は特徴があり、大きく、中央部にまで達する深い切れ込みや、または、大きく孔が空いたりする。原産地がそうであるように高温多湿を好み、日陰でよく生育する。
 花は白く棍棒状、仏炎苞が大きくクリーム色をして良く目立つ。スパティフィラムのそれを大きく厚くしたような感じ。開花期について資料は無いが、私の写真は7月。
 果実は芳香があり食用になると広辞苑にあり、調べると『熱帯の果実』(小島裕著、新星図書出版発行)に「完熟させて生食、パインとバナナを足したような味」とあった。ただし、完熟していないと刺激があるとのこと。開花後一年ほどで熟すとのこと。
 
 花
 
 実

 記:島乃ガジ丸 2011.10.30 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行


ホウセンカ

2017年08月08日 | 草木:草本

 てぃんさぐぬ花や チミサチ(爪先)にスミティ(染めて)
 ウヤぬ(親の)ゆし(言う)グトゥ(事)や チム(肝)にスミリ(染よ)
       ※ゆしグトゥ:文献には“由事”とあり“教え”と解説している。
 この沖縄のわらべ歌、というか教訓歌の「てぃんさぐぬ花」で有名なホウセンカを、じつは、つい最近(3年ほど前)まで、その実物を私は知らなかった。

 3年ほど前に突然、アパートの畑に見知らぬ花が咲いた。「なんじゃい、これ」と思って写真を撮り、会社に持っていって、植物に詳しい同僚に訊く。
 「ウチナーンチュがこれを知らないと恥だよ。ホウセンカ、てぃんさぐの花だよ。」とのこと。子供の頃から名前はよく知っていた花なのに、まったく言う通りである。ウチナーチュとして恥。が、“聞くは一時、聞かぬは一生”だ。これからは、「君たち、これがホウセンカだよ。てぃんさぐぬ花だよ。」と威張ることができるってわけだ。
 これがてぃんさぐぬ花か、と畑作業をするたんびにしみじみと眺める。近所のオバサンたちは、「邪魔になるよ。引き抜いたほうがいいよ。」などと忠告してくれたが、せっかくのてぃんさぐぬ花、もったいないと思い、私はそのままにしておいた。暫くして、枯れた。が、ホウセンカは翌年の春、畑のいたるところから芽を出した。想像以上の増え方だった。結局、梅雨の頃には全てのホウセンカを引っこ抜いた。オバサンたちの忠告に従っていさえすればほんの1分に満たない作業が、30分余の労働となってしまった。

 歌にあるように、古き良き時代には女の子がこの花で爪を染めて遊んだ。そのことから爪紅(ツマクレナイ)との別名もある。また、結婚したがっているモテナイ男がこの花を持っていると良く似合う。「妻くれない?」となる。
 
 ホウセンカ(鳳仙花):草花・または雑草
 ツリフネソウ科の一年草 原産分布は東南アジア 方言名:ティンサグ
 ナンクルミー(自然発生)する植物の一つ。開花期は周年。
 高さ30~60cmほどになり直立する。花色は多種あり赤・白・紫など。直立した茎から横向きに少し垂れ下がったように花を出す。果実は熟すと破裂して種子を飛び散らせる。熟した頃、果実にちょっと手で触れると、びっくりするくらいの勢いで破裂する。1株を放っておくとあちこちから芽を出すので、畑では雑草扱いされる。
 公園の花壇に見かけるインパチェンスは同属で、和名をアフリカホウセンカと言う。種がはじけ飛ぶのはホウセンカと一緒で、一株あるとあちこちから芽を出す。しかし、本家のホウセンカに比べると、だいぶ好かれている。お行儀が良いからだ。さほど背は伸びず、こんもりとして、表に花を見せてくれるので、花壇の花として使いやすい。
 
 花
 
 白花

 記:島乃ガジ丸 2005.1.18 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行


ベゴニア類

2017年08月08日 | 草木:草本

 毎週土曜日実家へ行って、父にパソコンを教えている。母にも一緒に教える予定であったが、体調が万全でないということで、それは延期となっている。
 これまで父へのパソコン講義は2回行っている。その2回、約2時間で、パソコンの電源を入れる、消すをやっと覚えてくれたかどうかである。先週、3回目の講義を行おうとしたら、「もう一人でできるから」ということであった。「ん?怪しい」と思ったが、母が再入院したとのことで、私は病院へ急ぎ、その日の講義は中止となった。
 「ん?怪しい」と思ったのには理由がある。前2回の講義で、父は1分前に教えたことも覚えていなかったからだ。矢印をスタートボタンに持っていってクリック、矢印をウィンドウズの終了に持っていってクリック、などといったことを20回繰り返しても覚えていなくて、そのたんびに「次はどうするんだっけ?」と私に訊いたのである。
 77歳の脳味噌はこういうものかと思う。昔のことはよく覚えているのに、1分前のことを覚えることは難しいようだ。備忘録が必要だと思った。それも本人が、自分が解るように書く。そうしないと、きっと1年経っても覚えることはできないのかもしれない。
 そう言う私だって脳はちゃんと衰えている。このHPで多くの植物、動物を調べて紹介しているが、そうやって調べた新しい知識はなかなか身に付かないでいる。大方は忘れてしまっている。若い頃得た知識はしっかり記憶しているんだが・・・。

 むかし、・・・ここでいう昔は、今週別項で紹介しているゼラニウムと同じ日、つまり約二十年前のこと。そして場所もまた、ゼラニウムと同じ那覇市役所に面した通りの花壇で、ゼラニウムから少し離れたところ。そこにゼラニウムとは別種の、これまたゼラニウムと同じく全体の形、葉の形、花の形はほぼ一緒で、花の色だけが違う植物を見る。これもその時、名前を聞いた。その時、私の脳味噌は若かったので、ゼラニウムと共に、聞いた名前をちゃんと記憶し、今でも覚えている。ベゴニアという名の植物。
 
 ベゴニア(Begonia):花壇・鉢物
 シュウカイドウ科の宿根草 世界の熱帯亜熱帯地方に広く分布 方言名:なし
 ベゴニアという名前は学名の属名であるBegoniaからきているが、ベゴニアはシュウカイドウ科シュウカイドウ属(ベゴニア属)植物の総称で、オーストラリアを除く世界の熱帯亜熱帯地方に産し、多くの種がある。また、それらの原種からさらに多くの園芸品種が生まれている。園芸店で多く見られるのはキダチベゴニア、レックスベゴニア、球根ベゴニアなどで、ベゴニアの代表はどれかと言われても特定できない。
 『沖縄園芸大百科』にも8種が紹介されている。それぞれに特徴があるが、ここではその内の、私が見たことのある4種を紹介しておく。
 
 キダチベゴニア(木立begonia):花壇・添景・鉢物
 茎が直立し、大きくなると木質化することからキダチ(木立)とつく。
 丈夫な性質のベゴニアで、庭の添景にも使える。真夏を除いて花を咲かせる。
 
 花

 
 シキザキベゴニア(四季咲きbegonia):花壇・鉢物
 キダチベゴニアの一種で、同じく四季咲き性であるところからこの名がある。園芸店ではセンパフローレンスという名前でよく見かける。
 草丈が低く、花数が多いので花壇の花としてよく用いられる。

 レックスベゴニア(rex begonia):花壇・鉢物
 名前は学名のbegonia rexから。根茎性ベゴニアから分かれたもの。
 葉が大きく、色彩も多様の美しい種類で、観葉植物として人気がある。

 キュウコンベゴニア(球根begonia):花壇・鉢物
 球根性のベゴニアということからこの名がある。
 園芸品種が多く、花の色、形も豊富。大輪美花のベゴニアとして人気がある。

 記:島乃ガジ丸 2007.6.17 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行


フブキバナ

2017年08月08日 | 草木:草本

 一人住まいを始めて12年近くになるが、そのほとんどの期間、私は宅配の新聞を取っていない。付き合いでたまには取るが、12年間で合わせて4年も無いと思う。そんなわけで、私の情報源は主にテレビである。であるが、テレビもまた、つけている時間は長いが、番組の内容を注視している時間は短い。何となく見て、何となく聞いている。
 私はまた、本もあまり読まない。仕事に関係すること、植物や動物の図鑑など図書館から借りて見ているが、社会の新しい情報を掲載している本、雑誌などは読んでいない。なもんだから私は新しい言葉をあまり知らない。外来語などにも弱い。
 近くにグループホームと看板のある建物がある。建物自体は私がここへ来る前からあったのだが、看板が立ったのは4、5年ほど前のこと。グループホームという言葉を私は知らなくて、「何屋さんだろう?」と覗いた。お年寄りが何人かいて、オバサンが何人かいる。で、何となく判った。「老人ホームの小さい奴か」と。

 それから1年後、その家の門のすぐ傍に見慣れない花が咲いているのに気付いた。薄紫の花が、ひとつひとつは小さいが、群れてたくさん咲いてすごく派手。介護を必要とするお年寄りたちに、少しでも明るい気分になって、と植えられたのかもしれない。
 
 フブキバナ(吹雪花):花壇・添景
 シソ科の常緑多年草 原産地南アフリカ 方言名:なし
 数年前からの新しい品種で、私が参考にしているどの文献にもその記載は無い。3、4年前に近所の家(グループホーム)の庭に咲いているのを見て、写真を撮ったのであるが、ずっと名前が判らずにいた。一昨年の春に、南部のどこかの町で、この花が咲き乱れて評判になっているというテレビのニュースがあって、それで、名前を知った。
 花の咲くさまが吹雪のようなのでこの名前がある。うむ、確かに吹雪のようではあるが南方系の花に吹雪とはいかがなものか、と私は思う。別名をイボザと言い、これは属名からで、別にハナフブキ(花吹雪)とも言うらしい。イボザはイボ痔みたいだし、ハナフブキはソメイヨシノを連想するし、まあ、それらよりはフブキバナがまだましか。
 「別名イボザ、ハナフブキ」、「シソ科イボザ属」、「南アフリカ原産」、「白い花が房状につく」、「高さは90~180センチ」、「花期2~3月」、以上はネットからの情報。「白い花が房状につく」については、私が見たどのフブキバナも薄紫色の花であった。「高さは90~180センチ」については、まあ、だいたいそんなもの。「花期2~3月」については、私の近所にあるフブキバナは2~4月だったと覚えている。
 
 花

 記:島乃ガジ丸 2006.9.21 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行