ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ホトトギス

2017年08月08日 | 草木:草本

 戦後間もなく生まれた従姉は、いわゆる団塊の世代。周りにはたくさんの同年代生まれがいる。人生は競争であった。おかげで、彼女は向上心の強い女となった。
 向上心の強い彼女は、同じく向上心の強い、彼女より数年歳上の亭主と共によりよい生活を目指して努力してきた。その結果、数年前には別荘を持つ身分となった。それらを得る稼ぎは亭主の力であるが、それだけの稼ぎができるよう支えたのは彼女である。頑張って生きてきて、今は悠々自適の暮らしをしている初老の二人なのであった。
 その二人の別荘を、私はたびたび訪ねている。周りに同年代生まれがいっぱいの彼女はまた、周りと同じであるということもあまり好まない。別荘はヘンテコな形をしている。建築中、そのわけのわからない形から、しばらく近所の話題の種になったほど。
 そんな別荘の庭もまたヘンテコリンである。洋風なのか和風なのか判らない形である上に、洋風も和風も関係なくいろいろな草木を植えている。独特であることを好む初老の二人は、どこにでもある草木よりも、沖縄には珍しい種類を好む。私の知らない植物がそこにはいくつもある。「何それ?」と訊くと、いつも自慢げに答えてくれる。
 ホトトギスについては、私も以前から知っているのではあったが、それでも沖縄では珍しい部類に入る。沖縄の他所の庭では見たことが無く、私も実物は初見だった。
 
 ホトトギス(杜鵑草):生花・下草
 ユリ科の多年草 日本原産 方言名:なし
 ホトトギスの名は「花の模様が鳥のホトトギスの腹の斑紋に似るため」と広辞苑にあった。鳥のホトトギスのお腹を私は見たことが無い。
 沖縄には自生が無かったようで、『沖縄植物野外活用図鑑』には帰化植物に分類されている。そういえば、近所の庭や公園などではあまり見かけない。写真のものは珍しいモノ好きの、従姉の庭に植えられているもの。
 地下茎が伸びて繁殖する。文献の写真を見ると、花色は淡い紅紫から薄紫色などがあるようだ。その花弁には斑点がある。その模様がホトトギスのお腹。開花期は秋から冬。
 
 花

 記:島乃ガジ丸 2005.11.16 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行


ホテイアオイ

2017年08月08日 | 草木:草本

 テレビドラマや映画など、あるいはニュース番組などでも、日本の日常の風景が映し出されるとき、そこにお寺や神社や、お坊さんや神主さんなどが普通に存在する。そういった素材が画面にあれば、そこは日本であるという認識が生まれる。そのくらいお寺や神社や、お坊さんや神主さんなどはいかにも日本的なものだと思う。
 そういったことがしかし、沖縄には当てはまらない。沖縄では、少なくとも私の近辺では、お坊さんは法事のとき、神主さんは地鎮祭のときくらいしかお目にかかれない。私が子供の頃は、そういった機会はもっと少なくて、その代わりユタと呼ばれる人たちに会うことが多かったと覚えている。ユタ(霊能力者、あの世と交信できる能力を持った人)についてはカミダーリー(神霊の与える病)と共にいずれ別項で詳しく述べるが、法事の際には坊さんの代わり、病気の際には医者の代わりとなっていた。
 というわけで沖縄は、仏教や神教の影響が希薄である。「神様、仏様」と祈ることは少なくて、「ウヤファーフジ(ご先祖)」に手を合わせることがずっと多い。トートーメー(仏壇)には神様も仏様もいない。ご先祖がいるだけである。道教の影響から来る独自の祖先崇拝の宗教観が、伝統として今なお多くのウチナーンチュの中に生き続けている。

 なもんで、倭国では高名な七福神が、沖縄ではメジャーとはなっていない。十分歳を取っている私でさえ、その7柱の神の名を全部は言えない。まあ、それでも、有名どころの大黒様、弁天様、蛭子様、布袋様くらいは知っている。大黒様は昔話、因幡の白兎から、弁天様は美女であることから、蛭子様はえびす顔という言葉から。そして、布袋様が、じつは最も古くから知っていて、それは植物のホテイアオイから知った。
 
 ホテイアオイ(布袋葵):池・水槽
 ミズアオイ科の多年生水生植物 熱帯アメリカ原産 方言名:ウチグサ
 池、沼などの水面に浮くが、池底の泥に根を張ることもあるようだ。葉柄の中央が鶏卵ほどの大きさに膨れ、浮袋となって水に浮く。その葉柄の形状から布袋という名がある。
 花茎は高さ30センチメートルほど。その先から穂状に花を咲かせる。淡紫色のきれいな花は、梅雨時の5月頃から秋にかけて咲いている。
 
 花

 記:島乃ガジ丸 2005.9.25 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行


ボタンウキクサ

2017年08月08日 | 草木:草本

 私の、金曜日の職場の近くに従姉夫婦の別荘がある。別荘は15年ほど前に建てられたが、その直後に亭主が転勤となって二人は沖縄を離れた。で、できたばかりの別荘の管理は、その後数年の間、私がやることとなった。
 私は、自分で言うのもなんだが、働き者である。自分の妄想の世界に入り込んでボケーっとしていることがしばしばあるが、寝そべってテレビを観るようなダラダラした時間は正月の数時間を除いてはほとんど無い。作文したり、絵を描いたり、調べものしたり、休日には部屋の掃除、畑仕事、散歩、職場の庭手入れ、などなどと動いている。しかしながら私は、働き者ということと矛盾するようでもあるが、面倒臭がり屋でもある。
 従姉の別荘は庭が広い。駐車スペースや畑、屋上庭園などを含めると40~50坪ほどはある。畑の管理は当時、父がやっていたので、残りの20~30坪ほどが私の分担であった。働き者ではあるが面倒臭がり屋の私は、管理が楽であるような庭作りをする。つまり、空間を多くし、植栽は控えめにした。すっきりとした庭となった。

 数年後、従姉夫婦が戻ってきて、すっきりした庭は徐々に変化していった。2、3年も経つと、草木の量が著しく増え、雑然とした庭となった。どうも団塊の世代は、雑然とか混沌とかが好きみたいである。庭は草木で埋め尽くされた。
 池にも水生植物が出現した。初めはホテイアオイだけだったが、ホテイアオイだけでも繁殖して、その処理に難儀するのだが、2年ほど前からボタンウキクサの姿も現れた。ボタンウキクサも大いに繁殖する。今では3つに分けられた池の一面を覆っている。
 
 ボタンウキクサ(牡丹浮草):水面
 サトイモ科の多年草 熱帯原産の帰化植物 方言名:ウチクサ
 『沖縄植物野外活用図鑑』に名前の由来があった。「上から見た草全体の様子が牡丹の花に似ていることから」とのこと。そう言われれば、私にもそう見える。そう言われなければ、私にはサラダ菜のような葉野菜に見える。むろん、サラダナウキクサよりもボタンウキクサとした方が、文字としても音としてもきれい。池や沼など流れの緩やかなところに生える水面植物。水面に浮くことからウキクサ(浮草)。 
 葉の長さ3~10センチ。根元から枝を出して広がり、水面を覆う。観賞用の他、飼料や肥料としても利用される。 
 花についての記述が文献に無かった。私もボタンウキクサの花は見たことが無い。咲かないのか、咲いたとしても目立たないのか不明。花は無くとも、葉が牡丹なので、それで十分に観賞価値があるということ。

 記:島乃ガジ丸 2007.9.1 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行


ホタルブクロ

2017年08月08日 | 草木:草本

 沖縄の植物を紹介する本に載ってはいるが、私の生活する周辺では、少なくとも私が散歩する範囲内には、その実物を見ることの無い植物がいくつかある。もちろん、あるにはあるが、私の知識が足りなくて見逃してしまったり、あるいは、ぼんやり歩いているせいで気付かなかったりしているということも考えられる。
 今週別項で紹介しているツユクサもその一つで、そして、ここで紹介するホタルブクロもまたそれに含まれる。この2種は、少なくとも私の知識が足りなくて見逃してしまってはいない。ツユクサもホタルブクロも特徴のある植物で、見逃すことは無いはずである。ホタルブクロにいたっては、目の片隅に入っても、すぐにそれと気付くに違いない。
 案の定、松山の一草庵でツユクサを見つけたときは、
 「やあ、あなたがツユクサですね。初めましてですね。」だったし、四万十でホタルブクロを見つけたときも、
 「やあ、ホタルブクロですね。久しぶりですね。」であった。数年前か、あるいは十年以上も前かよく覚えていないが、ホタルブクロは昔、旅先で出会っている。
 
 ホタルブクロ(蛍袋・山小菜):観賞用鉢物
 キキョウ科の多年草 原産分布は北海道~九州、朝鮮、中国 方言名:なし
 『名前といわれ野の草花図鑑』によれば、「この花の中にホタルを入れて遊ぶことからつけられた」と名前の由来が書かれてあった。同書には「火垂る(ちょうちん)袋」という別説も併記されてあったが、それについては広辞苑にも載っており、「茎頂に淡紫色の大きな鐘形花を数個下垂、そのさまが提灯(火垂る)に似る」とのことである。
 高さ40~80センチになるようだが、『沖縄植物野外活用図鑑』によると沖縄では20~40センチ。山地低地の道端、野原に自生する。
 釣鐘型の大きな花。色は白から淡紅色で、濃紫色の斑が入る。開花期、本土では6月から8月とのこと。沖縄では「初夏」と『沖縄植物野外活用図鑑』にあった。
 
 花

 記:島乃ガジ丸 2006.7.31 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行


ホシアザミ

2017年08月08日 | 草木:草本

 中島みゆきのデビュー曲が何であるかを私は知らないが、「アザミ嬢のララバイ」も相当古い曲で、彼女のデビューの頃の作品ではないかと記憶している。
 アザミという植物の実物を、私は、じつは知らない。知らないけれども、アザミの葉がギザギザで棘がいっぱいあるということは、どこからかの知識で知っている。だから、「アザミ嬢のララバイ」は、「棘のある女の、子守唄」であろうと解釈していた。
 棘といっても、男の心をグサグサ突き刺すバラに例えられるような棘では無い。バラが選ばれた美人なら、アザミはその辺にいる烏合の衆の一人。しょっちゅう振られて、心にたくさん傷が付いて、それが棘となって、他人の幸せを妬んだり、世を拗ねたりして、周りから刺々しいと感じられるような女。そんな女の子守唄。あー、辛い。
 アザミという植物の実物を知らない、と書いたが、私が参考にしているほとんどの文献にアザミの記載が無いので、沖縄にアザミは無いのかと、だから見たことが無いのかと、思っていたら、『沖縄園芸百科』にアザミが紹介されてあった。それによると、日本には60種のアザミの仲間が分布するとある。60もあれば、沖縄にもあるに違いない。おそらく、私も見てはいるが、それがアザミであることに気付いてないだけなんだろう。

 11年前、今のアパートに越してきて、近所のあちこちの庭に、今まで見たことの無い白い花が咲いているのを見つけた。調べると、ホシアザミという名前であった。その時は、これがあの有名なアザミの一種であるか!と思ったのであった。ところが、後日(ずいぶん最近になって)、ホシアザミはアザミとは全然違う植物であることが分かった。
 アザミは沖縄に自生しない、ホシアザミはアザミの一種である、などのようにいろいろ間違った解釈をしている私は、おそらくもっと多くの間違った解釈が頭の中にあるに違いない。「アザミ嬢のララバイ」が「棘のある女の子守唄」であろうという解釈もきっと、間違った解釈であろうことは、たぶん間違いなく、間違いない。
 
 ホシアザミ(星薊):添景・花壇
 キキョウ科の多年草 原産分布は南アメリカ 方言名:無し
 ネットで検索するとホシアザミよりイソトマの名前で多く検出される。イソトマが一般的なのであろう。葉の形がアザミに似ていて、花が星型なので通称ホシアザミとなっているのだろうが、アザミはキク科で、こちらはキキョウ科。
 1株に1つの花がぽつんと咲く清楚な星型の花は、私は白色しか見たことが無いが、他に青紫や桃色花があるようだ。ネットには青紫が多くあった。
 沖縄に入ってきたのはそう古くはないと思う。私が今住んでいるアパートの周辺には多くあるが、それまで民家の庭や花壇で見かけることは無かった。あるいは、昔からあるにはあったが、有毒(汁液は皮膚につくと炎症をおこす)なので植えられなかったのか。
 沖縄での開花期の資料は無いが、近所のホシアザミは6月から10月。
 
 花

 ちなみに、
 アザミ
 キク科アザミ属の総称。多年生草本で日本に約60種ある。葉はギザギザで棘が多い。モリアザミ・ハマアザミ、タイアザミなどの種がある。

 記:島乃ガジ丸 2005.7.29 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行