玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

さまざまな瞽女唄

2008年06月27日 | 日記
 どうしたわけか、短い時間のうちに、さまざまな瞽女唄に触れることになった。まずはタイムス社が主催した木下晋展の合間に聴いた、木下さん出演のETV特集のビデオに登場する小林ハルさんの唄。野太い声で、しかもなまりがあって、土の臭いのする重厚さがあった。普通の歌とは全く違う発声法に、“怖さ”を思わせるものを感じた。
 次は木下展のギャラリートークの前座をつとめてくれた東京で活躍する民謡歌手・月岡祐紀子さんの唄だった。小林ハルさんの直接の指導も受けたという月岡さんだが、声が澄んでいて伸びがあり、民謡を聞いているようだった。
 月岡さん自身「まだ若いので味が出ないけれど、年をとれば味が出てくるのではないか」と話していた。昔の瞽女さんだって、年寄りばかりではないのだから、若々しい瞽女さんの唄声だって響いていたのではないだろうか。
 その次は、ふるさと人物館の「こどもにもよくわかるごぜのはなし」の展示会場で流されていた刈羽瞽女・伊平タケさんの唄だった。こちらの方は、小林ハルさんと違って、明るくて艶っぽいイメージで聞かせるものだった。
 最後は、八日、東本町一の常福寺で開かれた「柏崎瞽女唄公演」での葛の葉会のメンバー四人による瞽女唄だった。それまで聞いてきたものと全く違うのは、それが標準語で唄われていて、よく唄の意味が聞き取れたところだった。
 最後の演目「出雲節謎かけ」は、「松竹梅とかけてなんと解く」「風呂屋の番頭さんと解く」というので、その心は「ぬるい時は“タケ”、熱い時は“ウメ”、お客さんを“マツ”のが風呂屋さん」というのだった。瞽女唄は、テレビもラジオもない時代の“娯楽”そのものだったのだ。

越後タイムス6月13日「週末点描」より)




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