11曲目、12曲目ではアコースティック・ギターで聴かせる。ジョン・ニコルズとベス・ハートの二人が中心となっての演奏である。ベスは11曲目でアコースティック・ベースを弾き、12曲目ではアコースティック・ギターでコードを弾きながら歌う。
Isolationでアコースティック・ベース(アレクサンドル・デュマ劇場)
11曲目のIsolationは彼女のデビュー・アルバムImmortalの3番目の曲で、タイトルから分かるように彼女が精神病治療の施設に隔離されたときのことを歌った曲である。前振りでI was insaneとか、medicationとか言っているし、次のような出だしの歌詞を見れば一目瞭然である。
So you think I'm crazy
Want to take me away
Inject me with electric shock
彼女の病気はbipolar disorderと言われているから、躁鬱病のたぐいだと思う。実際に彼女はこの病気で治療を受け続けてきた。One Eyed Chickenなどはそんな彼女自身のことを、メタフォリックに歌ったものだが、Isolationの方はあまりに直截的である。
しかし、逆にIsolationという曲は少しも暗くないし、むしろ開き直って歌っているという印象を受ける。この曲もオリジナル・アルバムではフルバンドの演奏であったものを、アコースティックの曲に編曲して歌っている。
この曲とImmortalではこの前の曲Spider in My Bedとの2曲を、彼女はライブではアコースティック・ベースを演奏するが、もともとクラシックのチェロをやっていた彼女にとって、弦楽器は馴染みの深いものなのでびっくりすることはない。
ところがこのベースの弾き方がものすごく力強くて、ベースなのに異常に音が大きい。そして2曲とも悲惨な歌であるのに、悲惨さをまったく感じさせない。彼女が躁鬱病であったのだとしたら、まさに躁状態を思わせる曲調になっている。
この曲そんなに好きなわけではなかったが、Immortalを繰り返し聴いているうちに、どんどん存在感が増してきた。ライブ録音ではSpider in My Bedの方がはるかにいいと思っていたが、今ではどちらも同じレベルにまであがってきた。
Spider in My Bedでアコースティク・ベース(ロイヤル・アルバート・ホール)
ロイヤル・アルバート・ホールではSpider in My Bedの方だけやっている。彼女が現在でもデビュー・アルバムの曲をいくつも取り上げてくるのは、それだけこのアルバムに愛着を持っているからだと思うし、それほどにImmortalは完成度が高くて、名曲がたくさん入ったアルバムなのである。
あの極め付きの名曲Am I the OneやBurn Chile、Summer is Gone、Blame the Moonなどを、どうして最近はやらなくなってしまったのか、そのことが私には残念でならない。
12曲目はこれも私の大好きなToday Came Homeであるが、私はこの曲がどのアルバムに入っているのか分からない。いくら探しても発見できないのだ。YouTubeで探してもライブ録音しか出ていないから、アルバム未収録の曲なのだろう。
したがってこの曲がベスのオリジナルなのかどうかも分からない。しかし、曲調からして彼女のオリジナルであることは間違いないだろう。ではなぜアルバムに含まれていないのか、私にとって大きな謎である。
この曲も彼女の力強いヴォーカルとギターによって特徴づけられるナンバーで、ライブ向きの曲と言える。それにしても途中に入るジョン・ニコルズの間奏が素晴らしい。その瞬間を待ちつつこの曲を聴いていて、裏切られることがない。
それにしても彼女はこの曲が好きなのだな。この曲になると何かテンションが一段上がるように感じるのは私だけか。そして至るところのコンサートでこの曲をやっていて、主役の曲ではないが、脇役として重要な位置を占めている。
Today Came Homeでアコースティック・ギター(リールのセバストポル劇場/11月13日)
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