法律家として、イギリスの裁判所がどのような判断をするのか、
それ以前に、検察側(スウェーデン)、弁護側がどのような法廷活動をするのか
とても関心があります。
できることなら傍聴したいほどですが、イギリスまで飛んでいくことはできません。
ですが、今はインターネットの時代です。
パソコンを通して多くのことがわかります。
もともと、傍聴したって、ほとんどわからないので、じっくりと検討できる、こちらの方が
いいかもしれません。
アサンジの移送要求は、もちろん、同氏がスウェーデン旅行中に起こしたというレイプなどの
性犯罪が容疑ですが、今回の根拠となっている逮捕状は、スウェーデンの発行したものではなく、EU発行のものということです。
9・11事件の後、テロのような事件に迅速に対処できるよう、要件を大幅に緩和してある
ということです。
ところが、テロのような国際的な事件ではなく、通常の刑事事件に利用されるようになり、
あまり人権に熱心でない国の要求で、この逮捕状に基づき引き渡しがしばしばなされ、
引き渡しを受けた国で、重罰が課されるなど、問題視されるようになっていたようです。
アサンジ氏の場合も、スウェーデンでは逮捕状は出されていないということです。
ですから、争点の一つは、起訴手続きをするための引き渡しではなく、
ただ取り調べをするためのだけの引き渡し請求は認められるかというものです。
これに関しては、だから、スウェーデンに行かなくても、イギリス国内で、ビデオリンクとか
電話、イーメールなどの方法で可能であるなどが主張されています。
どうやらスウェーデンでは広く性犯罪が認められるようで、イギリスでは犯罪とならない
もののあるようです。
しかし、移送に詳しい法律家の意見では、通常、こういう主張は認められないということです。当然、アサンジ氏の弁護側も承知しているはずですが、あえてそのような主張をする
のは、EU逮捕状に基づく引き渡しが、拷問や重罰などの人権侵害問題を起こしており、
制度の欠陥に気づきはじめているからで、アサンジ氏の今回の裁判は、改めて、そのことに
スポットライトをあてることになったようです。
したがって、弁護側は、スウェーデンに引き渡された場合には、公正な取り調べや裁判がうけられないということを、主張しています。
その立証をどうするのか、法律家としては、とても関心があります。
特に、スウェーデンに引き渡されると、結局はそこからスパイ法違反でアメリカに引き渡され
死刑になってしまう、つまりには命の危険がるという主張については、
どのように立証するのか、それがどう判断されるのか
とても興味があります。