ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

障害者同士、生活支える 社会的役割担う機会にも

2009年05月17日 00時39分35秒 | 障害者の自立
 「ピアヘルプ」という言葉をご存じだろうか。ピアは「仲間」の意味。ピアヘルプは、障害者がほかの障害者や高齢者の生活を支援することだ。サービスを受ける側は障害を理解してもらえる安心感を得られ、支援する側は就労や社会参画の機会になる。仙台市泉区の「ピアサポートセンターそら」。ここでは、精神に障害がある仲間同士が支え合いながら活動している。

 仙台市のヘルパー辻瞳さん(36)=仮名=は4月中旬、太白区の診療所にいた。精神疾患を持つ男性(71)の受診の付き添いだ。
 「きょうは薬をもらわなくてもいいよね。まだ残っているもの」。辻さんの問い掛けに、「そうだっけな」と答える男性。2人のやり取りからは信頼関係が伝わってくる。

 辻さんは、泉区の障害福祉サービス事業所「ピアサポートセンターそら」のメンバー。自らも統合失調症を患う。

 発症した当初は、幻覚や幻聴に悩まされて入院するほどだったが、今は薬を飲み、落ち着いた生活を送る。週に一度、男性宅を訪れ、診察や買い物に付き添う。

 初めはかたくなだった男性も、共通の薬の話などをすると笑顔を見せるようになった。

 「障害があり、似た経験があるからこそ、通じる部分がある」と辻さん。無理は利かないが、自分にしかできない仕事はあると考えている。
 「そら」は、NPO法人ワーカーズコープ(本部東京)が2007年に開設した。精神障害者を対象にヘルパー講座を開き、資格を取ったメンバーが同じ障害者や高齢者に福祉サービスを提供する。

 開設のきっかけは、コープが市民向けに開いたヘルパー講座で、講師を務めた県内の障害者団体代表の話だった。

 精神科への通院歴がある男が殺傷事件を起こした後、周囲の目が怖くて外出できなかったこと。慢性期の障害者はおとなしいこと。淡々と語る言葉から、参加者は、障害者への偏見と、彼らがそれにどれだけ苦しんでいるのかを感じた。

 高橋比呂志さん(49)もその一人。コープ職員で後に「そら」の所長となる高橋さんは、代表からこう言われた。

 「障害者も受けられるヘルパー講座があったらいいな」
 精神障害者がサービスを提供する側に回る。引きこもる必要はない。自立心を持ち、支え合って仕事ができれば社会的な役割を担える。「うん、いい」。「そら」の構想が生まれた瞬間だった。

 開設から2年近くがたち、メンバー15人、スタッフ5人が活動している。
 2月に加わった滝田隆一朗さん(28)=仮名=は、初めて「そら」を訪れた時、溶け込めないと感じた。

 ある日、パニックを起こした。もう来ないと思ったが、スタッフの男性に「焦るな。好きにやってみろ」と言われた。緊張を解いて自分をさらけ出したら楽になった。変わったのはそれからだ。スタッフとメンバーの壁を感じさせない「そら」の雰囲気も気に入った。みんなが積極的に活動するにはどうしたらいいだろう。「そら」のことをいろいろと考えるようになった。

 滝田さんは今、「そら」が請け負っている特別養護老人ホームの仕事をしている。お年寄りの話し相手になったり、掃除をしたり。資格を取って本格的に福祉の現場で働きたいと思っている。

 4月下旬、事務所での会議で滝田さんは司会を務めた。てきぱきと議事を進めた後、最後に宣言した。

 「障害者陸上競技会に出ます。応援に来てください」
 「おお」「頑張れ」。周囲の励ましの声が響いた。