◇4.5キロ区間、国史跡に指定--徳島 四国八十八カ所霊場の遍路道で初めて、徳島県勝浦町の二十番札所・鶴林寺と同県阿南市の二十一番札所・太龍寺周辺の計約4・5キロが10年8月、国の史跡に指定された。世界遺産を目指す中、貴重さが評価されたことは大きな一歩だ。
通称「鶴林寺道」や「太龍寺道」などと呼ばれる4区間。同県内でも指折りとされる難所もあり、古道の景観が保たれている。沿道には、寺までの距離を示す「町(ちょう)(丁)石(いし)」や道案内の道標、遍路の途中で亡くなった人の墓などの石造物が数多く残る。
勝浦町では、地元住民がボランティアサークルを結成し、お遍路さんが道に迷わないよう声を掛けたり、車で送るなど「お接待」に取り組む。古い道だけに、天候によっては危険が伴う場所もあり、つえを用意したり、枝打ちで見通しを良くするなど、安全性を向上させることも大切な活動の一つという。
サークルの代表を務める同町の会社役員、野崎泰宏さん(70)は「願いは安全に歩いてもらうこと。出会いの縁を大切に、取り組みを続けたい」と話す。
勝浦町では、地元住民がボランティアサークルを結成し、お遍路さんが道に迷わないよう声を掛けたり、車で送るなど「お接待」に取り組む。古い道だけに、天候によっては危険が伴う場所もあり、つえを用意したり、枝打ちで見通しを良くするなど、安全性を向上させることも大切な活動の一つという。
サークルの代表を務める同町の会社役員、野崎泰宏さん(70)は「願いは安全に歩いてもらうこと。出会いの縁を大切に、取り組みを続けたい」と話す.
◇人気ストラップ 支え合う人の縁--高知・善楽寺
三十番札所・善楽寺(高知市一宮しなね2)の本堂西隣の納経所では、オリジナルストラップ(450円)が人気。ミニチュアのすげがさやわらじ、鈴などが結び付けられた手作り品だ。
07年に高知市内の障害者支援センター「ハートフル」が自立のきっかけにと、寺と協力して作り始めた。女性のお遍路さんらに「かわいい」「手作りの感じがいい」と口コミで広がり、当初は月数十個だったが、今では月100個以上売れる。
島田希保副住職(26)は「障害者の支援にもつながる。ストラップを通して、人の縁が広がれば」と話している。
◇ナンバーも88 お遍路専用タクシー、好評--香川
香川県琴平町の琴平バス(楠木哲雄社長)は10年11月からお遍路巡り専用で、遍路かさのあんどんをつけた「へんろ笠(かさ)タクシー」の運行を始めた。専用ドライバー、矢野裕和さん(37)は、4巡以上すると「四国八十八ケ所霊場会」(同県善通寺市)から公認される「先達(せんだつ)」の資格を持つ。
矢野さんは08年に知り合いの誘いもあり、「史跡を巡るような気持ち」でお遍路を始めた。休みに車を走らせ、約半年後に結願(けちがん)。その後も「1度回ったぐらいでは遍路道や名所、歴史などは分からない」と続けた。
3巡目の途中で、へんろ笠タクシーを計画中だった楠木社長から専用ドライバーに任命され、先達になるようにとも言われた。年に1度の申し込み締め切りに間に合うよう、直前に5日間のお盆休みをもらい、高知や愛媛の30カ所を集中的に回った。へんろ笠タクシーの運行が延期になる恐れがあり「必死だった」という。
これまでの利用者に善通寺近辺を回り「弘法大師出生の地」などと紹介。初心者には参拝の作法も教える。解説は「勉強になる」と好評だ。
◇1日1万歩、1年で“結願” ウェブでバーチャル遍路--愛媛
協会けんぽ愛媛支部(松山市)はウェブサイト「てくてく四国へんろ道」(http://tokuho.jp)を10年11月開設。歩いた歩数を入力するとサイト内の遍路道を進み霊場巡りを疑似体験。全行程225万335歩を歩き通せば“バーチャル結願”。
ニックネームと身長・体重などを登録しスタート。1歩を65センチで計算し、札所まで達するとその紹介画面に。道後温泉など周辺の名所紹介や元競歩選手の忠政啓文さんへの質問、自分を示す画面上のキャラクターが「太め」「理想」と変化するなど、続けられる工夫が凝らされている。同支部の藤江昇さん(38)は「1日1万歩歩けば、1年以内に結願できますよ」。
★お遍路グルメ
◇スタミナばっちり--愛媛・とんかつパフェ
五十一番札所・石手寺(松山市石手2)から西に歩くと道後温泉地区。そこに不思議なパフェがある。アイスにイチゴ、リンゴ。そして、ソースたっぷりのとんかつ6枚! 「清まる」(089・924・1492)名物「とんかつパフェ」(800円)だ。かつを手に持ち、アイスやリンゴを乗せて口に入れるのが作法。食べると意外にさっぱり。過酷な「歩き遍路」でも、スタミナが付くことは請け合いだ。
◇何かいいことあるかも--高知・夫婦どら
二十五番札所・津照寺(高知県室戸市室津)前の遍路の駅「夫婦善哉(めおとぜんざい)」(0887・22・0580)で、縁起物として「夫婦どら」が話題だ。ベリー(妻)、ハッピー(夫)と名付けた鯨のマスコットが皮に焼き付けられたどら焼き。おぐら、ゆず(各135円)、もち、くり、マーガリン(各150円)。経営する「室戸スーパーマーケット」の谷口直子さん(56)は「発売後、メゾソプラノ歌手の娘が賞を取った」。食べるといいことが起こるかも。午前9時~午後5時半。元日のみ休み。
◇さぬきが誇る郷土料理--香川・しっぽくうどん
八十八番札所・大窪寺(香川県さぬき市多和兼割)までは長い上り坂。お遍路さんを癒やすのが「八十八(やそば)庵」(0879・56・2160)の「しっぽくうどん」(500円)。さぬきの郷土料理。地元産のダイコン、ニンジンや、あげ、とうふをのせる。コンブ、カツオ、シイタケのだしは薄味。麺は香川県産うどん用小麦を使い、毎朝、当日分を手打ちする。同店2代目、井川義雄さん(59)は「さぬきうどんの味も思い出に」と話す。午前8時~午後5時。元日は午前7時から。
◇優しさいっぱい--徳島・たつえ餅
十九番札所・立江寺(徳島県小松島市立江町)
門前にある老舗和菓子屋「酒井軒本舗」(0885・37・1031)の名物「たつえ餅」は、手のひらサイズが歩き遍路にぴったり。売り切れることもしばしばだ。ビタミンなどの栄養素が豊富な古代米「黒米」を混ぜ込んだ薄紫色のもちは、ふわっと優しい食感。中のあんは、炊く前に小豆の皮をむいた「むき餡(あん)」で、渋みのない上品な甘みが口に広がる。午前10時から販売、売り切れ次第終了。多数買う場合は事前に連絡を。第2・4月曜は休み。
毎日新聞 2011年1月1日 地方版
通称「鶴林寺道」や「太龍寺道」などと呼ばれる4区間。同県内でも指折りとされる難所もあり、古道の景観が保たれている。沿道には、寺までの距離を示す「町(ちょう)(丁)石(いし)」や道案内の道標、遍路の途中で亡くなった人の墓などの石造物が数多く残る。
勝浦町では、地元住民がボランティアサークルを結成し、お遍路さんが道に迷わないよう声を掛けたり、車で送るなど「お接待」に取り組む。古い道だけに、天候によっては危険が伴う場所もあり、つえを用意したり、枝打ちで見通しを良くするなど、安全性を向上させることも大切な活動の一つという。
サークルの代表を務める同町の会社役員、野崎泰宏さん(70)は「願いは安全に歩いてもらうこと。出会いの縁を大切に、取り組みを続けたい」と話す。
勝浦町では、地元住民がボランティアサークルを結成し、お遍路さんが道に迷わないよう声を掛けたり、車で送るなど「お接待」に取り組む。古い道だけに、天候によっては危険が伴う場所もあり、つえを用意したり、枝打ちで見通しを良くするなど、安全性を向上させることも大切な活動の一つという。
サークルの代表を務める同町の会社役員、野崎泰宏さん(70)は「願いは安全に歩いてもらうこと。出会いの縁を大切に、取り組みを続けたい」と話す.
◇人気ストラップ 支え合う人の縁--高知・善楽寺
三十番札所・善楽寺(高知市一宮しなね2)の本堂西隣の納経所では、オリジナルストラップ(450円)が人気。ミニチュアのすげがさやわらじ、鈴などが結び付けられた手作り品だ。
07年に高知市内の障害者支援センター「ハートフル」が自立のきっかけにと、寺と協力して作り始めた。女性のお遍路さんらに「かわいい」「手作りの感じがいい」と口コミで広がり、当初は月数十個だったが、今では月100個以上売れる。
島田希保副住職(26)は「障害者の支援にもつながる。ストラップを通して、人の縁が広がれば」と話している。
◇ナンバーも88 お遍路専用タクシー、好評--香川
香川県琴平町の琴平バス(楠木哲雄社長)は10年11月からお遍路巡り専用で、遍路かさのあんどんをつけた「へんろ笠(かさ)タクシー」の運行を始めた。専用ドライバー、矢野裕和さん(37)は、4巡以上すると「四国八十八ケ所霊場会」(同県善通寺市)から公認される「先達(せんだつ)」の資格を持つ。
矢野さんは08年に知り合いの誘いもあり、「史跡を巡るような気持ち」でお遍路を始めた。休みに車を走らせ、約半年後に結願(けちがん)。その後も「1度回ったぐらいでは遍路道や名所、歴史などは分からない」と続けた。
3巡目の途中で、へんろ笠タクシーを計画中だった楠木社長から専用ドライバーに任命され、先達になるようにとも言われた。年に1度の申し込み締め切りに間に合うよう、直前に5日間のお盆休みをもらい、高知や愛媛の30カ所を集中的に回った。へんろ笠タクシーの運行が延期になる恐れがあり「必死だった」という。
これまでの利用者に善通寺近辺を回り「弘法大師出生の地」などと紹介。初心者には参拝の作法も教える。解説は「勉強になる」と好評だ。
◇1日1万歩、1年で“結願” ウェブでバーチャル遍路--愛媛
協会けんぽ愛媛支部(松山市)はウェブサイト「てくてく四国へんろ道」(http://tokuho.jp)を10年11月開設。歩いた歩数を入力するとサイト内の遍路道を進み霊場巡りを疑似体験。全行程225万335歩を歩き通せば“バーチャル結願”。
ニックネームと身長・体重などを登録しスタート。1歩を65センチで計算し、札所まで達するとその紹介画面に。道後温泉など周辺の名所紹介や元競歩選手の忠政啓文さんへの質問、自分を示す画面上のキャラクターが「太め」「理想」と変化するなど、続けられる工夫が凝らされている。同支部の藤江昇さん(38)は「1日1万歩歩けば、1年以内に結願できますよ」。
★お遍路グルメ
◇スタミナばっちり--愛媛・とんかつパフェ
五十一番札所・石手寺(松山市石手2)から西に歩くと道後温泉地区。そこに不思議なパフェがある。アイスにイチゴ、リンゴ。そして、ソースたっぷりのとんかつ6枚! 「清まる」(089・924・1492)名物「とんかつパフェ」(800円)だ。かつを手に持ち、アイスやリンゴを乗せて口に入れるのが作法。食べると意外にさっぱり。過酷な「歩き遍路」でも、スタミナが付くことは請け合いだ。
◇何かいいことあるかも--高知・夫婦どら
二十五番札所・津照寺(高知県室戸市室津)前の遍路の駅「夫婦善哉(めおとぜんざい)」(0887・22・0580)で、縁起物として「夫婦どら」が話題だ。ベリー(妻)、ハッピー(夫)と名付けた鯨のマスコットが皮に焼き付けられたどら焼き。おぐら、ゆず(各135円)、もち、くり、マーガリン(各150円)。経営する「室戸スーパーマーケット」の谷口直子さん(56)は「発売後、メゾソプラノ歌手の娘が賞を取った」。食べるといいことが起こるかも。午前9時~午後5時半。元日のみ休み。
◇さぬきが誇る郷土料理--香川・しっぽくうどん
八十八番札所・大窪寺(香川県さぬき市多和兼割)までは長い上り坂。お遍路さんを癒やすのが「八十八(やそば)庵」(0879・56・2160)の「しっぽくうどん」(500円)。さぬきの郷土料理。地元産のダイコン、ニンジンや、あげ、とうふをのせる。コンブ、カツオ、シイタケのだしは薄味。麺は香川県産うどん用小麦を使い、毎朝、当日分を手打ちする。同店2代目、井川義雄さん(59)は「さぬきうどんの味も思い出に」と話す。午前8時~午後5時。元日は午前7時から。
◇優しさいっぱい--徳島・たつえ餅
十九番札所・立江寺(徳島県小松島市立江町)
門前にある老舗和菓子屋「酒井軒本舗」(0885・37・1031)の名物「たつえ餅」は、手のひらサイズが歩き遍路にぴったり。売り切れることもしばしばだ。ビタミンなどの栄養素が豊富な古代米「黒米」を混ぜ込んだ薄紫色のもちは、ふわっと優しい食感。中のあんは、炊く前に小豆の皮をむいた「むき餡(あん)」で、渋みのない上品な甘みが口に広がる。午前10時から販売、売り切れ次第終了。多数買う場合は事前に連絡を。第2・4月曜は休み。
毎日新聞 2011年1月1日 地方版