障害があっても、意欲と能力に応じて働き、社会の支え手になる。そのための環境作りを加速させる契機としたい。
企業などに一定割合の障害者雇用を義務付ける法定雇用率が、4月に引き上げられる。民間企業では、今の2・0%から2・2%になる。2020年度末までには2・3%に上がる。
法定雇用率は、働く意思のある身体・知的障害者の人数に基づいて設定されてきた。改正障害者雇用促進法で精神障害者も含めて算定することになり、今回、その分が上乗せされる。
従業員50人以上としている対象企業も、段階的に拡大される。
就労を希望する障害者は増えている。社会参加や自立を促す観点から、活躍の場を広げることが重要である。労働力人口が減る中、働き手を増やす必要性も高まっている。法定雇用率の引き上げは、時宜に適(かな)った措置だといえる。
企業で働く障害者は、17年6月時点で49万6000人となり、過去最多を更新した。14年連続の増加は官民の努力の成果だろう。
一方で、法定雇用率を達成していない企業が5割に上る。障害者を一人も雇っていない企業も3割を占めている。中小企業で受け入れの遅れが目立つ。
中小企業には、障害者に割り振る仕事や適切な配慮についてのノウハウが乏しく、雇い入れに及び腰になるケースも目立つ。
障害者の能力を引き出して、戦力として活用し、業績を伸ばす企業は少なくない。政府は、先進事例の情報発信に努めるべきだ。ハローワークなどによるサポートの強化も不可欠である。
職場体験やトライアル雇用の拡充は、企業側の不安解消だけでなく、本人の適性と職場のミスマッチ防止の上でも有効だろう。
障害者にいかに長く働き続けてもらうかも課題だ。就職1年後の定着率は、比較的安定している身体・知的障害者でも6~7割、精神障害者は5割にとどまる。
労働、福祉、医療、教育などの関係機関が連携し、就労と生活を一体的に支える体制を整備することが大切である。
特に精神障害者については、症状が一定でない場合が多いため、よりきめ細かな対応が必要だ。
障害者の定着やキャリア形成に実績を上げている企業への助成金の拡充も、検討に値しよう。
多様な人材の活用は、政府の成長戦略の柱だ。障害者の雇用拡大はその一翼を成す。企業には、一層の取り組みが求められる。